- Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784006021818
作品紹介・あらすじ
女流画家マリー・ローランサンは若き日の堀口を、「日本の鴬」と呼んで愛した。そんな青春の秘話をはじめ、生涯を通じての佐藤春夫との交友、恩師・与謝野寛・晶子夫妻や永井荷風、コクトー、アポリネールらとの出会い。最晩年の大詩人が、エスプリあふれる言葉で、恋と文学と人生の来し方を語った日本エッセイストクラブ賞受賞作。
感想・レビュー・書評
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先日読んだグウェン・ラヴェラ『ダーウィン家の人々』の後ろの既刊案内に掲載されていたので、気になって手に取った本。
堀口大學の名は、高校生の頃に詩集『月光とピエロ』で知り、その浪漫チックで硬質で優雅な世界に引きつけられたことがあった。訳詩集『月下の一群』を読んだのはずっと後。そういう世界を作る詩人の、人間としての姿など知らなくてもいいとは思うものの、どういう爺さま(聞き書き当時)がああいった詩を作ったかにもやはりちょっと興味があって、のぞけるのならのぞいてみようとページを開いた。
堀口大學は、最初からああいう西洋的なイメージで創作していたわけではなく、もとは与謝野晶子・鉄幹の弟子で、佐藤春夫が同門という、短歌の徒だったというのに驚いた。そこから出発し、大学では官僚の道に乗り損ねて文学に遊び、外交官の父に伴われてフランス語を学びつつ、欧米諸国を漫遊したという。ジャン・コクトーやアポリネール、マリー・ローランサンと親交を結び、「貧乏詩人」と自らをおっしゃるものの、前半生は華麗な放蕩人生(といってもいいと思う)である。豊かな和語と漢語とカタカナ名詞の絶妙なブレンドと、ナマのエロスを描いていても下品じゃない色気を発する、堀口大學の詩の素がとめどなく聞き出されている。
ゆるやかな色気とダンディズムと教養のかたまりのような、堀口大學の人生のあれこれを聞き出すというのは、よほど腕に覚えのある人間しか太刀打ちできないと思うけど、聞き手である関さんの、この海千山千(小ずるいという意味ではなくて)の爺さま相手に、丁々発止とはいかないまでも、幅広いエピソードを聞き出す手腕がお見事。それをまとめる手腕がまた一級品。ついでにいえば、関さんについた赤ペン先生も超一級のようです(笑)が、最後はやはり、関さんのご努力に尽きると思う。
とりとめのない年寄りの昔話(とびきりゴージャスだけど)に終わらせず、メリハリの効いた編集がされており、堀口大學の作品集としても、バイオグラフィーとしても楽しめる。あとがきから解説までも、とばし読みさせずにきっちり楽しめる本に仕上がっていて、この☆の数かと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
こんな本が国語の教科書だったら、もう少し真剣に勉強したと思う。日本という国もそんなに悪くないと思うのは、こういった先達がいるからだ。それにしても容子ちゃんの書き方は、素晴らしい。日々の勉強がそこかしこに伺われ、相手に対する愛をつくづく感じられる。
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おもしろく読んだ。解説で丸山才一氏が書かれていることがそのまま、自分の感想となる。著者と大學氏とのツーショットが何もかもを意味しているようですし、関容子にしか果たし得なかった聞き書きであったことも、丸山氏が言われているとおりです。
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講談社文庫版がウチのどこかにあるのだけど見つかりません。
前に読んだのははるか昔で内容を覚えてないので数年前再読してみようと思ったのだけど見つからなかったから読んでません。
今度新たに出版されたようなので買ってもいいかな、と。