惜櫟荘だより (岩波現代文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006022754

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  • 写真家の上田義彦さんが監督を務めた『椿の庭』という
    映画の話から、ご紹介頂いた本。

    時代小説家の佐伯泰英さんが管理人をする
    惜櫟荘という熱海にある昭和に建てられた建築物について、
    そしてその建て替えを担った人達のお話。

    元々岩波家が管理していたという惜櫟荘が、
    人の手を離れてしまうという話を聞いた著者が、
    歴史的にも重要な建築物とも言える
    日本家屋を買い取るところからお話が始まっています。

    古い建築物ゆえに、綻びや、修繕が必要なところが多く、
    今の様相を保つために、あえて一旦全てを解体し、
    使える資材はそのままに、使えないものは新しく手配して、
    ほとんどを以前の通りに立て直すという一大プロジェクト。

    読み始めは、建築用語なんて
    ほとんどわからないわけだから、
    読み進めるのもなかなか進まずに、
    建て替えの話の間に挟まれる著者の
    スペイン暮らしの思い出を振り返るエピソードばかりが
    頭に入ってくる。。。

    私には合わないかなぁと思いいながらも読み進めると、
    少しずつ建築用語よりも、著者の目に映る
    建て替えを担う人達の惜櫟荘への愛情深さが
    気になってくるようになる。

    読み終えた後には、私も惜櫟荘にいつか行きたい、
    守り継がれる日本家屋を見てみたい、という
    気持ちになりました。

    『椿の庭』もまた、監督が京都から移築したという、
    海を望む日本家屋が舞台で、
    そこに女主人は、家をとても大切に扱っている。

    守るべき日本文化の一つとして、
    資金を投じて日本家屋を守っていく姿勢は
    いつか引き継ぎたいと思いつつ、
    私は今の自分の生活に精一杯だ、と
    思い直す気持ちにもなってしまった。

    とはいえ、自分の生活が成り立った時の、
    一つの目標にしたいものだとも思った。

  • 時代小説文庫書下ろし作家が、熱海の岩波茂雄亭「惜櫟荘」を修繕する模様の話。
    所々、スペインやパリでの生活が回顧されている。ストーリーは上手。

著者プロフィール

佐伯 泰英(さえき やすひで)
1942年福岡県北九州市八幡西区生まれの小説家、写真家。日本大学藝術学部映画学科卒。当初は冒険小説や国際謀略小説を中心としたミステリー小説を執筆していたがヒットに恵まれず、編集者からの勧告に従って時代小説家に転身。初の書き下ろし時代小説『瑠璃の寺』がヒットし、以後作家活動は軌道に乗っていった。
代表作として、『陽炎の辻〜居眠り磐音 江戸双紙〜』のタイトルでドラマ化された『居眠り磐音 江戸双紙』シリーズ、『吉原裏同心』シリーズなど。

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