メメント・モリ (岩波現代文庫)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006023249

作品紹介・あらすじ

長年にわたる鬱病がもたらした煩悶、終わりのみえないスランプ、不倫相手との訴訟沙汰、家庭崩壊、自殺未遂、そして違法薬物使用による逮捕……。一瞬の暗転——死の淵より舞い戻り、火宅の人たる自身の半生を小説的真実として描き切った渾身の作。懊悩の果てに光り輝く魂の遍歴。

感想・レビュー・書評

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  • 高校生のころ、原田宗典がすごく好きだった。高校生の僕は活字をほとんど読まなかったけれど、ほとんど唯一読んだのが原田宗典のエッセイだった。そこから、原田宗典の小説も読んでいた。

    でも、大学生になって、少しずつ読まなくなっていった。ちょうど原田宗典が出版を減らしていくのと、重なっていた。その後、原田宗典の鬱病が深刻化したり、逮捕されたりして、その後復活していくつかの作品を書き始めたことも知っていたけど、改めて手に取ろうという気にはならなかった。なんとなく、好きだったころの原田宗典が落ちぶれていくのを見たくなかったのかもしれない。

    最近、『メメント・モリ』が、彼のボロボロになった半生も含めた自伝的小説だと知って、興味を誘った。そして読んだ。とにかく一気に読んだ。壮絶だった。

    さまざまな経験と挫折と失敗を経て、それでも生きているということを確認して、その弱々しくもしぶとい生命力を確認して、それで満足した。

    もしかしたら、十数年間読まないでいるあいだに、若いときに僕が作り上げていた「愛読していた原田宗典」のイメージは風化してしまったのかもしれない。でも、一気に読めたのは、絶望的な『メメント・モリ』のなかに、ほんのわずか、若いときの原田宗典の「おかしみ」が入り込んでいるような気がしたこともあるかもしれない。

  • 10代後半の頃に原田宗典の小説をたくさん読んだ。エッセイも面白くてたくさん読んだ。けどいつからか全然小説を書かなくなって、原田宗典の事は忘れかけてた。覚醒剤所持と使用で逮捕されたってニュースを目にしたりもした。たまに10代の頃読んだ小説を引っ張り出して読んだりもした。また久しぶりに彼の事を思い出したらなんと新刊が出ていた。折々の心情やエピソードを散りばめた私小説でとても面白かった。あらゆる出来事を経て今の原田宗典がいるんだな、やっぱり好きだなって思った。10代の頃彼の小説を読んだ時の気持ちを少し思い出した。今の原田宗典にしか書けない小説をもっと書き上げて欲しい。

  • 久しぶりに読んだ原田宗典氏の著作。学生時代にはよく読んでいたものだが、最近は、妹マハ氏ばかり目にするなあと、よく調べもせずに思っていたのだが、なかなか大変な時期をお過ごしでした。

    裏表紙の紹介文には「小説的真実」とあるが、単なるエッセイのような話もあれば、小説とも読める話もあり。Wikipediaでは「エッセイ」ではなく「小説」のところにありますね。

    とりあえず「どこまでが真実なの?」と思わせるバランスが絶妙で、これぞ小説家でありエッセイストでもある氏の面目躍如か。

  • 最初は、裏切られたと思った。
    かつて、私は原田宗典さんのエッセイが大好きだった。
    小説「スメル男」もすごく面白かった。
    私が読書から遠ざかっていた時期があり、その間、原田宗典さんは躁うつ病で苦しんでいたことは知っていた。
    しかし、この「メメント・モリ」で最初の方に書かれていたのは、病気の苦しみよりも、悪い人たちとのドラッグだった。
    原田宗典さんのファンだった私としては、病気で書けないことは仕方が無いとしても、どっぷりとドラッグに浸かっていた原田宗典さんの様子を読んで、裏切られたという気持ちがふつふつと湧いてしまった。
    そんな最悪の状況が書かれている文章でも、その筆遣いが原田宗典さんそのものだったことも、やるせない気持ちになった。
    それでも、途中で読むことを止めずに、読み続けた。
    途中で読むことを止めてしまうことは、どん底の原田宗典さんのままであることと同義であり、怖くてできなかった。
    ドラッグの所持で現行犯逮捕された話、自殺未遂の話・・・。
    それでも最後は、希望の光が差し込んできていた。
    本作は、賛否両論あるのだと思うが、読書好きの人なら読んでみる価値はあると思う。
    だが、人に勧められるかというと、あまりお勧めはしない。
    とりあえず、原田宗典さんの本を読んでみたいという人には、最近新装版が出た「スメル男」をお勧めしておく。

  • 色んなことがあったしブランクもスランプもあったが、さすがの文才。ぐいぐい引き込まれる文章はもちろん、決して笑える内容でないにもかかわらず思わず笑ってしまうような原田節も健在。何が現実の話で何が作り話なのか。小説なのか自伝なのか線引きがわからないのがまたこの作品の魅力。メメント・モリ、「死を想え」。才能溢れる方なのでまだまだ頑張って欲しい。

  • 死に想えという題、彼の体験が題材にされていた。
    新しい命で終わったのは、よかった

    株式会社新潮社 162-8711
    新宿区矢来町71

  • えっ、大麻!えっ、留置所!えっ、◯◯!?と驚きの連続。人生色んなことがあるものです。人の数だけドラマがあるんだなあと改めて思う一冊。

  • これは自伝???予備知識ゼロで読んでクスリのくだりとかほんとならよくぞ生きてるなと(社会的に)

  • 「生き方」シリーズ。あの「メメント・モリ」かと思ったら全く異なる小説だったが、これはこれで楽しめた。一見普通のサラリーマンが歩む、予測不可能な人生。麻薬、離婚、鬱、交通事故、天災。いつの間にか現実のストーリーではなく、夢の中や妄想の話だったり、過去に戻ったり。どれが「まとも」でどれが「戯言」かもわからなくなる。最後はなんとなくハッピーエンドなのだが、これは本当に現実の話なんだろうかと思わされる全く不思議な小説。

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著者プロフィール

作家

「2022年 『ベスト・エッセイ2022』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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