粋な旋盤工 (岩波現代文庫 社会 16)

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  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006030162

作品紹介・あらすじ

粋な旋盤、小粋な仕上げ、馬鹿でもできるターレット。かつて町工場には、劣悪な労働条件のもとで、ものづくりの技術をもった誇りたかい職人がたくさん生きていた。不況に喘ぎつつ、無気力・無感動・無抵抗の現在に、働くことの意味を問い、沈滞社会の桎梏をつきくずす粋な闘いをよびかける旋盤工作家小関さんの処女作を再び世に問う。

感想・レビュー・書評

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  • この本を知ってから20年以上になると思うけど、ようやく読めた。何も知らずに小説かと思いきや、大半が1970年代前半に書かれた随筆で、小説はそれ以前に同人誌に掲載された数編だった。
    随筆と小説で書かれた年代に差があり、それはそのまま小関さんの旋盤工、町工場労働者としての経験の有無にもつながると思うけれど、随筆のほうが圧倒的に迫力がある、というか悲哀がある。私は小関さんって、どこか酔狂で旋盤工をやりながら小説を書いているんだと思っていたんだけど、そうではなくて旋盤工としての人生がかなり濃かった。例えば、生活が立ちゆかなくなり生活保護の申請にいくようなことまで随筆になっており、そういうギリギリの生活のなかで時折筆を振るっていたんだなあ……。「二十数年の労働生活から得たものといえば大げさだが、求められて原稿用紙にむかう時には、私はいつも、借りものでない思いを、借りものでない表現で書き綴りたいと、自分に言いきかせていた。」(p.224)、「いまでは、書くことは、生きて働いていることのあかしのようなものかもしれない。借りものでないと保証できるのは、自分の体しかないと自覚するほどに、自分の才能はとぼしい。だから体で書いた。」(p.225)というあとがきなどがそのことを示していると思う。

  • 「粋」という言葉がふさわしい.
    鉄を削る旋盤工の一昔前の仕事・時代を伝える書籍であるが,著者の視点や文章から伝わる情緒や感性があふれている.

    また,半世紀以上前の工場の「やり方」は興味深い,加工プロセスの時代の流れを知ることができるという点においても貴重な情報である.

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著者プロフィール

1933年、東京生まれ。
都立大学附属工業高校卒業後、旋盤工として町工場に勤務する。
そのかたわら、執筆活動をつづけ、作品を発表する。
◎おもな著書
『大森界隈職人往来』(朝日新聞社、81年)--第8回日本ノンフィクション賞
『粋な旋盤工』(風媒社)、『春は鉄までが匂った』(晩聲社)、『羽田浦地図』(文芸春秋)ほか

「1985年 『鉄を削る 町工場の技術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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