- Amazon.co.jp ・本 (355ページ)
- / ISBN・EAN: 9784006030292
感想・レビュー・書評
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「~、ファインマンさん」のシリーズ。女好きでいたずら好きでウィットに富んでいてかつ気取っていない、人間味溢れる数々のエピソードには誰もが思わず微笑んでしまうだろう。チャレンジャー事故のロジャース委員会での立ち振舞いは自然科学に魅せられた者の鑑であり、権威を排することに徹底していたこともまた、科学とそれに携わる者の存在価値を再認識させる。こういう男が現実にいて、汚い言葉遣いで正しいことを主張しまくったり、ノーベル賞を取ったり、日本の旅館で畳や布団に感動したり、離婚したり再婚したり、子供ももうけたり、ボンゴを叩いてカーニバルに出たりしていたんだなぁという、個人的には極めて好ましい想像はしかし、広島と我が故郷である長崎を人の尊厳ごと焼き尽くしたという、極めて受け入れがたく許しがたい事実とのコントラストになる。マンハッタン計画に加担した悪魔達の一味にして、自然科学の理解の仕方を革新した量子力学の申し子。病弱の妻を看取りながら、人類史上最悪の兵器を開発するという矛盾。科学技術は、有益で残酷で面白くて悪用もできる、あらゆる意味で皆に平等であることを彼の人生は突き付けてくる。喜ばしくも腹立たしく、悲しくも明るくも読める。矛盾を包含して理解することこそ、今と未来を生きる現代人に必要なことなのかもしれない。
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チャレンジャー事件の事故調査委員会の話しが面白い。これを読むと、巨大組織での官僚的弊害は逃れることのできない欠点なのだなぁと改めて思う。
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ファインマンのエピソード集。
「ご冗談でしょう、ファインマンさん」の方が面白い。 -
ファインマンさんは天才だ。
そして、ファインマンさんは心が豊かだ。
科学を愛し、心豊かな天才になりえたのは、
たくさんの人に出会い、たくさんの努力をしたからだと思う。
それだけじゃない。
その根底にはおやじの教育があったから、そんな気がした。
(以下抜粋)
○「ああ、アーリーンの好きそうな服だな」
と思った。その瞬間だった。どっと悲しみが堰を切って溢れたのは。(P.67)
○「いや、私はリチャードにパターンというものを見せてやりたいんだ。
パターンってものは要するに数学の初歩なんだから、
それがどんなに面白いものか教えてやりたいのさ」(P.71)
○おやじは、本に書いてあることを片っ端から実際にはどういうことなのか、
事実にあてはめてできるだけの解釈をつけてくれたわけだ。(P.71) -
人に勧められて読んだが、ビジネス書としては期待したほどではなかった。
いや、そもそも、ビジネス書と思って読んだ自分が悪いのか… -
ノーベル物理学賞を受賞した、リチャード・ファインマン氏の活動を本人の目線で綴った一冊です。
ファインマン博士の幼いころからの、独特で深い洞察力を感じさせるエピソードが多々あり、また科学者としての実績がわかる話題が気取らない文体で書かれており、面白く読めます。
しかし少し気になったのは、この本を読むと博士は本当に変人だったように思える点。少なからず常人とは異なる点はあったのでしょうが、ただの「ぶっ飛んだ天才物理学者」と感じさせる翻訳になっているのが残念です。
死生観やチャレンジャー号の事故分析に対する熱意からは、いわゆる変人ではない姿が見え隠れしますが、わかりにくいというか。何を思ってこの本を書いたのか、が見えなくなっている気がしました。
邦訳段階で削除されたエピソードが、気になるところです。 -
恐らくこの本を勝手に出版されて一番困ったのがファインマンなんだろうなと思う。ただファインマンのファインマンらしさの一端は伺えるが消化不良。立花隆があとがきで言っているように肝心な部分(知人などにあてた手紙・茶レンザー爆破事故調査委員会に対する個人的見解)が抜けている。これも編集者の責任だろう。
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ノーベル物理学賞受賞のリチャードファインマン氏のエッセイ集。
幼い時の話やチャレンジャー号の事後原因対策委員会の話等,興味深い内容が多い。
天才には変わり者が多いねぇ。 -
ご冗談でしょう?の上下巻とは方向性が変わって面白いよりも真面目なエピソードが多い。
特に、後半のチャレンジャー号事故調査委員会の話は面白いだけではなく示唆に富む。
形式的で出来レース的な調査に対して、ファインマンは自由に自分の考えた通りに行動し、重要な報告をした、と思われる。
報告書は公開されているが、英語だということもあり、読んでいないため断定は出来ない。
その過程では、上司からの評価や叱責を離れたところで自由に現場のエンジニアに語らせており、ファインマン自身も積極的に技術的な知識を学びながら原因に迫る。
このような失敗の原因調査は少なくとも他に例を知らない。
組織的な失敗の原因究明に迫る方法の教科書としても秀逸の一冊。