日中関係の過去と将来: 誤解を超えて (岩波現代文庫 社会 144)

著者 :
  • 岩波書店
2.80
  • (0)
  • (0)
  • (4)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 14
感想 : 2
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006031442

作品紹介・あらすじ

中国の外交政策の基本的な流れを説明した後、歴史問題の淵源を考え、日中国交正常化以降の両国の認識ギャップの問題を取り上げる。さらに一九九八年の江沢民の訪日と愛国主義教育、中国の対日新思考、二〇〇四‐〇五年の中国の反日デモ、胡錦涛指導部の対日関係改善への転換、米国の対中戦略の要点である「ステイクホールダー論」の意味を解説し、日中関係の将来を展望する。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 日中関係の前線で議論をする中で、率直な意見交換をしてきた筆者だからこそ書けた本であると思う。

    「前事を忘れず、後事の師とする」といった言葉の理解に対する日本と中国の食い違い(歴史認識は忘れないが将来に向けた建設的な関係性を築く意図と理解した日本側と、過去を忘れないことは将来にも役に立つといった一般論程度の意味合いしかこめていない中国側)や、靖国神社に参拝することに対する感覚の違い(戦没者の供養と考えるか再起・復讐の誓いと考えるか)といった点で、意図せざる誤解を重ねなている状況が、いかに日中の関係性を必要以上に複雑化しているかといったことも、中国側の直接のリアクションを見なければ分からないことだろう。

    一方で、政治的な背景で意図的に誤解や論争が生み出されている状況もあることを、冷静に見ていかなければいけないということも述べられている。

    毛沢東時代から江沢民・胡錦濤時代(本書が書かれた時点)まで、指導者のカリスマ性は徐々に低下し、指導思想だけで大衆をコントロールすることはできない時代になってきている。そのため、何らかのスケープゴートとしての存在を作り上げるため、日中関係が利用されている側面はある。

    しかし、大衆の力を政府が完全に制御できる状況ではないことから、中国政府のそのような日中関係を利用した求心力の回復は、時に政府自身が望んでいないレベルにまで反日感情を高めてしまうこともある。特に、何らかの形で日本側から中国側に誤解を生じさせるようなアクションがあった場合には、その相乗効果によって中国政府自身が制御できない流れが生まれてしまうことがある。

    日本側としては対処が難しい問題だが、そのような中国の特性を知り、冷静に、不要なメッセージを与えないように動くということも、国益を損なわないために必要なことではあると感じた。

    筆者のように、中国と常にコミュニケーションをとることで相手国の状況や認識を把握し、国内にフィードバックできる人の存在は重要であると感じた。

  • セミナー

全2件中 1 - 2件を表示

岡部達味の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×