- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784006032050
作品紹介・あらすじ
このままだと日本は必ず没落する…。一九九〇年代末に著された本書は、二〇五〇年を見据えて書かれているが、驚くほど現在の日本がおかれた状況を予見している。なぜそうなるのか。日本人の精神性と日本の金融、産業、教育の構造的欠陥を舌鋒鋭く指摘し、唯一の救済策「東北アジア共同体」構想を示す。
感想・レビュー・書評
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最初の印象は、生臭い「徒然草」のようだったのだが、読み進むうちに、かなり熱を孕んだ遺言のようなものに見えてきた。
50年後の社会は、現在の小学生が官僚トップに、中学生が財界トップに、大学生が政界のドンになることを想像すれば、どの程度の社会になるのか見える・・・これは結構キビシイ見方であり、「いつの世も若者は頼りない」ということに過ぎないのかもしれないが、精神も金融も産業も教育も、このままでは荒廃していくという森嶋先生の警告は、感覚として頷いてしまう人が多いだろう。
解決の方策として、欧州共同体ならぬ東洋共同体を提言する。アメリカはいざとなると日本ではなく中国を取るであろうという洞察は、イギリス仕込みの素直な解釈であろう。そうなる前に日本としての打ち手は?というのが難問だ。安倍さんに聞かせたい話ではないか。うなずける点もあるが、。中国や韓国との間に日本が問題意識を共有できることができるかは疑問。
あと、英語をよく使う人の文章によくあるように、明快で大ぶりな文章。 -
2021年7月読了。
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1999年に2050年を見通す。
日本人が没落するのは、1940年体制に甘やかされて、自主自立を忘れたから。終身雇用、年功序列。企業別労働組合。仲良しクラブ。在野の精神欠如。歴史問題を直視しない幼稚なナショナリズム。国際感覚のなさ。 -
この問いをもったすべての人にとって、没落中の日本人として何ができるのか、自ずと答える必要を感じさせてくれる好著。
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あの森嶋先生が90年代末に書いた2050年を見すえた書。
正直、読後感は悪い。
森嶋先生自身、「経済学、社会学、教育学、歴史学など取り混ぜた社会科学領域での一種の学際的研究-私がかつて交響学的社会科学と呼んだもの-」を歯に衣着せぬ語り口で、日本の没落を論証している。
人口の分裂、精神・産業・金融・教育の荒廃、、、
教育の荒廃についての具体的提案ついて、大学進学率を12-15%に押さえるとか、大学と専門部を分けるということは過激に見えて実はそのくらいしないと没落は防げない状況なのかもしれない。
また、「唯一の救済策」として提案されている「東北アジア共同体」構想を提案するには今のタイミングは最悪と言える。
森嶋先生が「没落論」で無視しているという天災地変として東日本大震災が起こった。このことが日本を日本人を変える「外生的要因」になるのかどうか。 -
1999年に2050年を予測してなぜそのときにこのままだと日本が没落し、また没落しないための希望について書かれているが、2050年をまたず、現在の状況はこの本で予想されている状況に大変似通っている。
現在の日本の停滞ぶり、あるいは没落への坂を下り始めた状況の原因が何であるかを知りたい人はこうして文庫としても出たので手に取ってみるべきだろう。 -
1980年高齢者が最低クラスだった、2010年にはトップクラスになっている。
しかも老人が伝統的な日本文化を身につけていて、生まれてくる若者が欧米文化を身につけている文化交代は集団の質を激変させる。
官僚出身でない政治家はぱっとしない。
日本のような儒教国では一は教育のあるものとないものに分けられる。
政治家に最も近い類型は宗教かである。日本で全体のことを考える人たちは宗教に走るであろう。
日本が今、必要としているのは記憶力に優れた知識量の多い人ではなく、自分で問題を作り解決できる人。 -
非常に示唆に富んだ批評だった