補完代替医療入門 (岩波アクティブ新書 64)

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  • Amazon.co.jp ・本 (170ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784007000645

感想・レビュー・書評

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  • どこまで信じたらいいものか、というのは難しいところですね。ただ筆者の言うように、西洋医学の「壊れた箇所を修復する」という感覚が絶対的な正義ではないのも確かですね。

  • 本書の意図は、膨大なCAM(補完代替医療)の領域のなかから、おもなCAMに共通す る身体観・治癒観や、すべてのCAM利用の前提となる「セルフ・ヘルプ」「セルフ ケア」という条件などを紹介することだという。著者はCAMを、技法である前に生命観であり生きかたであるととらえ、その共通の地盤を描きだそうとする。 CAMは、治療法であると同時に「健康や医療のあたらしい思考法でもある」。だから、 現代医療に絶望し、CAMに真向かう過程で、「機械論的な身体観からエネルギー的な 身体観へ、二元的な人間観からホリスティックな人間観へ」と大きな変化が生じ、 健康観・疾病観・治療観などに一種のパラダイムシフトが起こる可能性は高い。

    病気とは、生命が自らを維持するために必要な一種の安全弁であり、「症状」とは 心身が心身自身を癒そうとするプロセスである。病気を適切に経過し、まっとうす ることによってこそ、健康は維持されるのだ。 こうした病気観は、すでに紹介した福田-安保理論でもさかんに強調され、安保徹の 『免疫革命』でも繰り返し語られる。『免疫革命』(講談社イン ターナショナル)では、それが白血球の働きの具体的なメカニズムを明らかしつつ 詳細に説得力をもって語られ、そういう意味でも福田-安保理論は、CAMの病気・治療観の具体的な裏づけになるだろう。併せ読むことをおすすめしたい。

    たしかに補完代替医療(CAM)の領域で、ゆっくりとしかし確実な流れができつつある。とくに欧米で、本書で語られるような大きな潮流になりつつあるとは驚きだ。 現在、欧米における中国伝統医療の研究と教育、および社会への普及は日本人の想像をはるかに超える。たとえば米国の鍼灸学校は、漢方薬の処方もみとめられた鍼灸師を1万人以上排出している。また、たとえば日本では「放任行為」に過ぎないカイロプラクティックだが、米国にはその専門大学がいくつもあり、その施術が社会的に認知され、医療保健の対象にもなっている。 さらに米国の医師が考案したオステオパシー(手技を通じて頭蓋骨をふくむ全身の 微小関節を調節することによって生体エネルギーの流れに介入し症状の緩和をもた らす骨調整療法)は、その専門教育を行う6年生の医科大学がいくつもあり、そこを卒業して取得した資格は、社会的にM・D(現代医学の医師)と同等とみなされている。
                          
    こうした事例を数多く読むと、日本の遅れに今更ながらに驚く。医療制度とその背景にある近代科学主義の弊害が、日本の医療を蝕んでいる。代替医療が法的にも正統に認知され、社会的な評価も高まれば、それに伴って補完代替医療の背後にある世界観そのものが普及していくだろう。それは、病気とその治療を通して、私たち の生きかたそのものを変えて行くことにもつながるのだ。 「修理工ではなく庭師になろう」は、機械としての人体の故障を修理するのではな く、庭の草木を健康に美しく育てるアーティストたろうとする医師の側の自己変革 のメッセージだが、同時にそれは庭師の補助のもと、「庭である自己、自己である 庭」を管理する私たち一人ひとりの生きかたの変革にもつながる。 本書は、CAMの可能性を大きな視点から捉えつつ、CAMの現状を具体的に紹介して、 学ぶところが大きい。

  • 分類=補完・代替・統合医療。03年2月。

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著者プロフィール

1941年兵庫県宝塚市生まれ。幼児期を旧満州(中国東北部)で過ごす。早稲田大学文学部卒、東京医療専門学校卒。翻訳家。癒しと憩いのライブラリー館長。日本ホリスティック医学協会副会長。訳書に『癒す心、治る力』『ワイル博士のナチュラル・メディスン』『人生は廻る輪のように』『森の旅人』『いのちの輝き」など。著書に『ナチュラル・ハイ』『ヒーリング・ボディ』『補完代替医療入門』『代替医療』『わたしが治る12の力』『スローメディスン』など。

「2014年 『講座スピリチュアル学 第2巻 スピリチュアリティと医療・健康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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