精神の生活 上 第一部 思考

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (364ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784007302497

作品紹介・あらすじ

人間の精神の営みは何のためにあるのか。ナチスの蛮行のような巨悪は、人間が「考えない」ことにかかわって生まれるのではないのか。生涯をかけて人間の自由と全体主義的独裁の問題を追究したハンナ・アーレントの遺著。ヨーロッパ哲学の正統的な流れに含まれる危険な要素をえぐり出し、現代社会の「思考の欠如」の行く末を厳しく警告する。

感想・レビュー・書評

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  • ◆書評◆
    図書館。SNSで「凡庸な悪」という言葉を知り、アーレントの思想に興味を持った。その後映画ハンナ・アーレントを観て、著作を読みたいと思った。本当は『エルサレムのアイヒマン』『全体主義の起源』を読みたかったが、図書館の蔵書に無かったので、蔵書にあったこちらを借り。
    正直、ムズカシイ・・・!
    途中からはざっと読みになってしまった。

    ブクログは2015年発行の情報になってるけど、私が借りたのは表紙も異なる1994/4/20初版発行1996/11/5第5刷ISBN4-00-002982-7のもの。

    p316の解説をメモ欄へ。
    2023/8/6

  • 精神の生活〈上 第一部 思考〉
    (和書)2012年02月06日 20:46
    1994 岩波書店 ハンナ アーレント, Hannah Arendt, 佐藤 和夫


    自分自身では現せないけど、疑問に思っていることが明確に書かれていて非常に感動した。自分自身に矛盾するということ又はそれを避けると言うこと、そして複数性として同意を考えることなど、有益な指摘が無数にありその関係性を考えていくとこの哲学批判というか政治思想は貴重な広がりを見せていく。兎に角感動する内容だった。下巻も楽しみ。完結しなかったのは残念である。

  • アーレントの最後の著作「精神の生活」の第1部「思考」。

    晦渋で有名なアーレントの中でも、「最も難解」と言われる「精神の生活」にチャレンジ。

    かなり、気合を入れて読み始めたけど、そこまで難しいわけでもないかな。(わかりやすい訳ではないけど)

    アーレントを政治思想家、全体主義研究家として捉えた人には、多分、わかりにくいだろうな。だって、ギリシャ哲学を起点に西洋哲学の全体を批判的に総括し、乗り越えようという試みだからね。

    でも、ベースとなっているのは、大学での講義なので、ある程度の前提知識は必要ではあるが、一つ一つ丁寧に論を進めている感じは伝わる。アーレントの著作の難解さは、一つのストーリーをしっかり伝えることを避けて、複数の解釈に開かれるのを意図していることからきていると思う。

    その点、この著作は、アーレントの全思考の総決算みたいな感じ。アーレントを他の著作を色々読んだ後では、バラバラに論じられていたことが関連づいていく感覚があって、うれしい。

    この本が書かれた動機の一つとして、アイヒマン問題があって、「凡庸な普通の人間が巨大な悪をなしうるのは思考しないためである」という考えをより深めるためということがある。

    というわけで、「後期」アーレントともいうべき思想の展開があるのだが、それ以上に驚くべきは、内容が最初の著作である「アウグスティヌスの愛の概念」から、「活動的生」を通じて、一貫性を持って繋がっていること。

    具体的な内容についてコメントするほど、まだ頭は整理されていないけど、西洋哲学の形而上学的な傾向を批判的にレビューしていく中で、たどり着くのは、ソクラテスの自分との自己一致して生きるという西洋哲学の源流となる思想。

    自己一致という言葉があるのは、一致しないことがあるから、自己一致が大切になるんだよね。つまり、自分の中に複数の自己があって、自分の中での複数の自己の対話が「思考」のベースなのだと論を展開していくところが実に素晴らしい。

    アーレントは、もともとは「実存主義」的な傾向が強くて、自分の一回の人生というところに相当のこだわりがあるのだけど、その一回性の生が、自分一人で成立するわけでなく、他者との関わりの中で成立する実存であるというところに力点がおかれているのが特徴。

    自分の中の複数の自分の中で議論して、そこからより良い生き方を見出していこうという姿勢は、複数の価値観をもつ他者と一緒に良い未来を生み出していこう、という思想と一貫しているわけですね。

    ここのところが、多分、アーレントの「ポジティブ・コア」で、ここがわからないとアーレントは、ただただ難解で、皮肉っぽい悲観論者にしか見えなくなる。

    (しばしば、彼女の本や論文が、スキャンダラスな論争を呼び起こしてしまうのは、思想というより、彼女の書き方の皮肉なトーンなんだと思う。では、なぜ、そういうシニカルなスタイルなのかというと、それはきっと彼女がシャイだから、なのではないかと思う。)

    という私のアーレント理解の証拠を見つけた感じ。

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著者プロフィール

1906-1975。ドイツのハノーファー近郊リンデンでユダヤ系の家庭に生まれる。マールブルク大学でハイデガーとブルトマンに、ハイデルベルク大学でヤスパースに、フライブルク大学でフッサールに学ぶ。1928年、ヤスパースのもとで「アウグスティヌスの愛の概念」によって学位取得。ナチ政権成立後(1933)パリに亡命し、亡命ユダヤ人救出活動に従事する。1941年、アメリカに亡命。1951年、市民権取得、その後、バークレー、シカゴ、プリンストン、コロンビア各大学の教授・客員教授などを歴任、1967年、ニュースクール・フォー・ソーシャル・リサーチの哲学教授に任命される。著書に『アウグスティヌスの愛の概念』(1929、みすず書房2002)『全体主義の起原』全3巻(1951、みすず書房1972、1974、2017)『人間の条件』(1958、筑摩書房1994、ドイツ語版『活動的生』1960、みすず書房2015)『エルサレムのアイヒマン』(1963、みすず書房1969、2017)『革命について』(1963、筑摩書房1995、ドイツ語版『革命論』1965、みすず書房2022)など。

「2022年 『革命論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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