和子の部屋 小説家のための人生相談

著者 : 阿部和重

• 朝日新聞出版 (2011年7月7日発売)

感想・レビュー・書評

[メイプルマフィンさんの感想 · 2014年2月11日]

阿部和重が「和子」と女性名を名乗り、錚々たるメンバー（角田光代、川上弘美、江國香織、金原ひとみ、桐野夏生…）の女性作家達を相手に人生相談、という好企画。対談内容は恋愛ネタから創作技法論まで多岐に渡っており、理路整然としていながらも時にユーモラスな阿部氏の語りが冴えわたっている。金原さんの言葉を借りれば「司会、進行、捌き、どれも圧巻の一言」。その場にいたわけではないけれど、対談シーンの臨場感は伝わります。阿部氏が自身の瞬発力を鍛えるため、対談直前に相談内容を読むって試みは…ガチだな、すごい！けっこうドキドキしたけど読む側も面白かったです。
創作論、小説論は、興味深い話題もあったもののちょっと難しい部分もあり。どちらかというと下世話な話題の方に食いついてしまいました(笑)なので一番面白く読めたのは、加藤千恵さん＆島本理生さんとのトリプル対談でのコイバナ。赤裸々な語りにハラハラしちゃったけど、作家達のプライベートが垣間見えて嬉しかったな。皆さん仲が良くて楽しそうだなと思いました。

これまた下世話ではありますが。対談時には阿部氏も含め何人かのゲスト作家達はバツイチだったようなのですよね。今ではその何人かは再婚。そして、ゲスト作家の一員でもあった川上未映子さんと阿部氏は現在夫婦。この対談時はまだ夫婦ではなかったんだよね～。今では母になられた川上さんを思うと…子を持つことに対しあれこれ心配していた当時の彼女が初々しく感じられましたわ。

[しおねさんの感想 · 2015年1月9日]

作家の阿部和重さんが、女性作家達（錚々たるメンバー！）の人生相談に答えるという対談集です。

さて、内容ですが、アベちゃんってすごい。
すごく頭がいいし、何でも分かりやすく論理的に説明できる能力が素晴らしいです。
そしてとても真摯に答える姿勢も素晴らしい！

ものすごく観念的な小説の話から、普通の恋バナまで色々な相談があるのですが、どれも大変真摯に答えられています。

作家というのは、とにかく日常の全てが仕事と繋がっているのだなと思いました。そして言葉選びの的確さにはウットリします。すごく抽象的な話題でも、すごく分かりやすく話されていて、とっても興味深く読みました。
こんな風に考えて、作品を作っているのだなぁとか、恋愛中もそんな事考えちゃうんだ？とか。

どの方の相談も面白いのですが、特に印象に残ったのは江國香織さんでした。

[akimihoさんの感想 · 2013年4月12日]

このところ立て続けに読んだ金原ひとみさんの
名前をこの本の中に見て読んでみた。
金原さんってどんなひとなのか、と。
(作家であること、作品を書くことにとても真摯な方のようだった。)
9名の女性作家ばかりのラインナップのうち、角田、川上、綿矢、
加藤＆島本の面々は「女子」一般のよくある恋愛相談で、タイトルの「小説家のための…」ではなかった。しょうもなかった。
一方、江國、金原、川上のお三方からは作家としての毅然とした姿が
窺えて、立派だなぁと感服した。特に川上さんの「谷崎や漱石のような先人に対する敬意」という言葉。崇高で謙虚だと思う。
和子と称する阿部和重さんの言葉が所々でたいへん面白かった！

[Chiehimaさんの感想 · 2012年10月18日]

いたって真面目な対談集。
作家の多くが、”言葉”と物体（本質）との乖離、または距離に頭を悩ませているらしい。
言葉を扱う職業だからこそ、考えずにはいられないのだろう。

[芦田太郎さんの感想 · 2012年3月16日]

好きな小説家である阿部和重が様々な女流作家と対談。
好きな小説家である川上未映子と彼は結婚したが、ここで対談している。
そういうことなの？

[katie99さんの感想 · 2012年2月14日]

阿部さんは人生相談に向いてる、と始まった企画とのこと。
対談した女性作家から称賛されまくり！映像で見聞きしたい。
わたしも、人生相談向いてるって言われたいな。阿部和重ってすごい人なのかもしれない、結婚してむしろよかったのは川上未映子のほうなのかも、と思いました。

[pritchard12さんの感想 · 2012年2月7日]

2012年2月7日（火）、読了。

[権三郎丸さんの感想 · 2011年12月26日]

阿部和重・川上未映子さんご結婚！の報を聞き、かねてから
ひっかかっていたこの本を読んだ。
とりあえず、先ず、対川上未映子トークから読み始める。
おっ、ここ意味深！などというテンションで読み始めたものの、
途中からこの対談の凄さ面白さにのめりこむ。
朝吹真理子、江國香織、金原ひとみ、川上弘美、角田光代・・
などなど・・・この豊かなことば使いたち。
彼女らを受けとめ、それぞれのチャンネルで返す阿部さんの
鋭敏さと深さ、その表現の的確さ。
作家って、思考や感情をことばにするプロフェショナルなんだ
とあらためて思う。
この本に集うのは、またそのプロフェショナルの中のマスター
クラスレベル。素晴らしい。

[sparrowhawkさんの感想 · 2011年12月7日]

企画そのものが面白いし、相談相手の作家さんのほとんどが作品を好きな方々だったので相談内容にも個性が出ていて興味深い。
特に江國香織さんは作品に感じていることそのままだと思った。
綿矢りささんは未読の方で見た目と相談内容のギャップがあったのが、
読後すぐに『かわいそうだね？』を読んだらストンと納得。
桐野夏生さんも未読だが対談でのやりとりが素敵で、読んでみようと思った。

[gudonさんの感想 · 2011年12月1日]

阿部和重・川上未映子　結婚！のニュースを見て、以前買ったまんまの本を出してきてみた。

いや、面白い。
子どもを産むことと、親の老いや死と向き合うことは、案外同じなのではないかという考察は、的を射ているように感じた。

僭越ながら２人の結婚を祝福したくなった。しかし、川上はやっぱり、本の中にもある通りシングルマザー願望なのかな？今後の展開にも注目。

著者プロフィール

1968年生まれ。1994年「アメリカの夜」で群像新人賞を受賞しデビュー。1997年の『インディビジュアル・プロジェクション』で注目を集める。2004年、大作『シンセミア』で第15回伊藤整文学賞、第58回毎日出版文化賞、2005年『グランド・フィナーレ』で第132回芥川賞受賞。『シンセミア』を始めとした「神町」を舞台とする諸作品には設定上の繋がりや仕掛けがあり、「神町サーガ」を形成する構想となっている。その他の著書に『ニッポニアニッポン』『プラスティック・ソウル』『ミステリアスセッティング』『ABC　阿部和重初期作品集』など。

「2011年 『小説家の饒舌 12のトーク・セッション』 で使われていた紹介文から引用しています。」