- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022511379
感想・レビュー・書評
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【感想兼備忘録】
大手メーカーに勤めるエンジニアの身として、これからの電機業界(というか職種)を考えたときに、このままでいいのかと焦燥に駆られる中で手に取った1冊。
内容としては、著者の東芝、MBA、大学教授の経験をもとに如何に業界の変化に対応するか、そうすることが大事かの考え方が書かれている。
特に、日本の大手企業に多いボトムアップは事業範囲が多岐に渡る場合、俯瞰して事業全体を見渡せる経営者の視点が欠けていることがままあり、各部門をある程度は束ねて会社全体を最適化出来るリーダーシップが必要だ、という点に納得した。
私も自分の専門だけに閉じこもるのではなく、この技術が何に使われるのか、どうマーケティングに落とし込んでいくのかという広い視野を持ち、また、目の前の製品に頭でっかちにならず、応用の効く(または応用の発想ができるような)普遍的な技術を持ったエンジニアになりたいと感じさせてくれる一冊だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
フラッシュメモリ開発に携わった元エンジニアが、理系も文系力を身に着けなければいけないと警笛を鳴らす。同様の話を聞くのは初めてではないものの、自身の経験からくる話は、エンジニアとしてのキャリアについて、いっそうの危機感をもつのに十分な生々しさを持っていた。この一点だけでも読む価値はある。
専門性が高いエンジニアという職業は、応用が利かないため転職が難しい。まさに、自分も感じているところであり、終身雇用神話が崩れてきている昨今において、無視できない事実である。読んでいてはっとしたのは、会社側は専門性を高めることを期待しているということである。いいように使われるのではなく、自分のキャリアを見据えて仕事をする必要性を感じた。 -
将来、エンジニアとしてどうしていこうか考えるかきっかけになった。異分野に積極的に関わる、マーケティングの視点も持つなど共感できることが多かった。筆者も言っていたが、本書に書いてあることが正解ではなく、逆の選択も正解になり得る、ようは自分で考え出した結論(どうしていくか)が正解なんだと思った。悔いなく生きていくためにどうしていくか考えたいと思った。
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2016/07/01:読了
良い本です。
1回目に書き始めたが、うまくかけず、東芝問題が起きて、2回目を書き始めてこの本ができたという裏話が、一番面白かった。
他の家電・コンピューター企業と違い、リストラをしない優しい経営が、逆に東芝に不正経営を招いてしまったという分析は、正しいのだと思った。
それもあるが、東芝の元トップがあまりに政権に近すぎていたのも、脇があまくなった原因のように思う。 -
東芝でフラッシュメモリの開発に携わり、その後大学に転じた竹内健さんの著作。元の所属である東芝の現在の状況を見ると、『10年後、生き残る理系の条件』というタイトルは重くなる。竹内さん自身辞めるときに東芝の凋落を予想していたわけではない。激しい変化を予想できないということを前提にして、リスクを分散しなくてはならないと説く。つまりは、「生き残る」ためには、所属する組織ではなく、個人で生き残るだけの力と決断力を身に付けるべきだということだ。またそれに加えて、変化することを恐れるべきではないと。変化をチャンスと捉える心構えこそが大事なのではないだろうか。
著者とほぼ同年代の理系なので、冒頭に紹介される「電子立国日本の自叙伝」がNHKで放送され、半導体が「産業のコメ」と呼ばれていた著者が大学院を出て就職する時の状況はよくわかる。そのころ日本の独壇場であったDRAMはその後ほどなくしてほぼ撤退となる。世の中の変わる速度と方向は予想できないとするべきなのだろうなというのが腑に落ちる。
最後に人事コンサルタントの城繁幸との対談が掲載されているが、読む前から二人は話が合うであろうことが想像できる組み合わせである。自分の市場価値を意識すること、エンジニアも自ら変わること、が重要だという。その通りだな。10年前に読んでいたら、何かが変わっていただろうか。