海の底のピアノ

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.10
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本棚登録 : 116
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022511423

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学小説】ピアノの英才教育を受けてきた和憲と、幼いころに誘拐された美雪はピアノを通じて和憲と出会い、互いに惹かれていくが……。 綾野剛、川上弘美、宇野常寛の各氏が絶賛する驚異の新人登場!

感想・レビュー・書評

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  • とても解釈が難しい本だとおもうけど、いくつかの感想を読んで考察
    これは、こどもの 生まれる前のこどもの 胎児の時の
    夢ではないだろうか
    腹のなかで丸まって眠っている胎児の夢
    もしかしたら水雪と和憲は、双子だったのかもしれない
    どちらか一方が時に、吸い取ってしまう双子
    形になれえなかったのは、水雪のほうなのか 和憲か
    音に溶けて溶けて海の中にいる ずっと、お互いの中にいる

  • うーーん。
    不幸な境遇のもと、特殊な力を身につけた水雪。
    ピアノだけのために育てられる和憲。
    変わった話だし、気持ちのよい話ではない。

  •  感想が書きにくい。水雪と和憲二人とも特異な生い立ちをしているのに、作中の人物が特異な人ばかりなので、二人に強烈な(精神的)個性を見いだせなかった。
     否定的な感想なのに、でも、と思うのは、なんでろう。逆に二人の内情が赤裸々に書き出されると、タイトルが崩壊するなと思った。
     もっと読解力を付けて、ゆっくり読めたらよかったなと思った。

  •  海と対峙してはいけない、海を見つめるときっと人間は狂ってしまう、海と付き合う唯一の方法は海に潜ることに違いない、潜ってしまえば海は人間を見つけることが出来なくなる。
    (P.181)

    「芸術というものはね、祝福であると同時に呪いでもあるのよ。芸術家はそのふたつの世界を行ったり来たりしなければならない。そしてより強い呪いを受けた者にはより輝かしい祝福が与えられる。今のあなたなら私の言葉が分かるでしょう? あなたは今深い呪いの中にいる。誕生の前に闇を通らなければならないのと同じようにね」
    (P.199)

  • 表現の仕方が美しい本だと思った。最近の新刊についている帯の文句って煽りすぎではないかと思うことがあり。いまいち信用できないけれど、この本は帯のうたい文句どおりの内容だった。水雪と和憲それぞれの壮絶な生い立ちから2人の交流も、美しく書かれたエピソードがいくつもあった。しかし後半の、様々な事柄が繋がっていく過程がかなり唐突に、ただの符牒合わせのように感じられたのと、何よりこの結末は個人的に残念だった。少し急ぎすぎたような気がする。

  • ラジオで「村上龍っぽい」とおすすめされていたので買ってみた。…たしかに。冒頭からおぞましく濃厚でソリッド。あらゆるものは音を発するというアイデアがおもしろい。いったいどこに向かうのだろうとドキドキしながら。でも一気には読めず、いっても40pほど。ちょっとずつ味わうように。…次回作も楽しみ。

  • 最初から最後まで壮絶な展開の作品だった。出会うべくして出会ったんだろうが境遇の違う2人。この作品は非常に感想を書きにくい。言葉で表すというのがなぜか、難しい気がする。最後のシーンでタイトルの意味がわかり、納得した。

  • 文章があまり好きじゃなかった

  • この小説はヒーローものです。そしてヒーローは水雪です。

    ヒーローの条件とは何か。それは、不屈と孤独です。

    水雪は不幸ですが、決してそれに屈せず、むしろ一人で立派に生きてやると決意します。白馬の王子様なんて待ちません。多数の男とセックスして監禁時の性的虐待を無意味なものにしようとしたり、嫌いなピアノに自ら関わりを持とうとしたり、様々に試みます。自分が変化することへの恐れを一切感じません。しかしそんな彼女を理解する者は一人もいなかったし、彼女の本質的な部分は何も変わりませんでした。和憲に出会うまでは。


    和憲はヒロインです。

    彼は母親に呪われています。彼の行動原理は母・鈴子に支配されており、鈴子が望んでいるという理由だけでピアノを弾きます。呪縛の効果は絶大で、彼自身にやりたいことなど思いつかず、自らの意思で選択したものといえば、ピアノの挫折による自殺未遂ぐらいなもの。一度死ぬことで(殺すことで)多少の積極性を彼は手に入れますが、それでもピアノの音は変わりません。水雪に会うまでは。

    この二人は出会い、それは様々な化学反応を生みました(異常聴覚の喪失と味覚の獲得、恋愛感情など)。

    物語終盤、水雪はついに誰にも言ったことのない秘密を和憲に打ち明けます。自分はこんなにも進もうとしているのに、なぜあなたは逃げてばかりなのか、と。

    最終的に二人は“自分の音”を手に入れます。水雪はゴムマスクの男たちを殺し、和憲のピアノを通して。和憲は、、、


    和憲は?


    そう、ここだった。僕はこの小説で分からないところが2つあります。その1つがここです。

    和憲は水雪に会っても母性の呪縛から逃れられなかった(義指を吐き出す)し、キドニーパイを食べてもらってないし、自力でノラを捕まえられなかったし、彼女を殺す力も失った(異常聴覚と味覚のやつ)。なのに、どうやって自分の音を手に入れたのだろうか? それとも、彼は彼女に救われたおかげで自分の音を得て、そのせいで彼女を救えなくなった、という話なのか? 自分の音とは、普遍性のようなものなのか。和憲は凡人になった話なのか(だから水雪に音を与えられた、とも言えるが)。


    もう1つは、鈴子が水雪を誘拐していたという点。つまり黒幕は鈴子で、この物語全編は彼女の歪んだ母性が支配していたと言えます。

    最初このシーンを読んだときの違和感は半端無かったです。誘拐した事実自体はいい。僕は物語の展開を100%受け入れるタイプだからです。分からないのは、それが暗示するものです。

    なぜ鈴子が水雪を誘拐した張本人でなければならなかったのか?(おそらく)ただ読者をびっくりさせる仕掛けではない気がします。何かしらの必然があったのだろうという直感があります。だけどそれが分からない。母性のディストピアで起こった悲劇? とかそういう話? 違うよなぁ、、、


    この中途半端な状況で感想をまとめると、ヒーローがヒロインを救うけど、ヒロインにはヒーローほどの器がなかったんだな、というところに落ち着いてしまいます。

    読解力が欲しいです、、、泣

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