私が誰かわかりますか

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022515605

感想・レビュー・書評

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  • 評価は5.

    内容(BOOKデーターベース)
    文藝賞受賞の実力派作家の体験にもとづく介護・看取り小説。「世間体」と「本音」の間で揺れながら、介護を通して女たちは「老いと死の現実」を教えられる。

    ただただ怖い話であった。介護は当然長男の嫁の仕事・・・男尊女卑の最たる話であった。しかし、実親もいつか認知症で介護が必要になるかも知れない。と考えるだけで全く他人事ではない。震えながら読了。

  • いやはや長男の嫁
    は~
    私もです
    は~
    介護終了しました ケド
    リアルなので読んでいてしんどくなった
    は~
    長男の嫁である友人にあげようと思う

    ≪ 行く先が 見えぬままです 介護とは ≫

  •  田舎に住んだことのある人には「そうそう!」と頷けることばかり。田舎の「世間」はめちゃめちゃ狭い。(物理的な広さは、広い。「隣の家」が見えないこともある。)
     読み始めは、守と涼世夫婦とその子供の隆行と桃子夫婦の、介護にまつわる物語かと思ったら、読み進むにつれ本家の嫁とか、桃子の美大時代の友達とか、隆行の部下とか、登場人物が増えていき(まあ、皆介護をしているという共通点はあるのだが)、語り手も変わるのでどうなることかと思った。
     読み終わると、もう少し守一家に重心を置いても良かったのではないかと感じたが、元校長先生のボケっぷりが面白くて愛が感じられたので、まあいいか。
     田舎の辛抱して生きてきた老人のケチエピソードなど、ホントにリアル。電池がもったいないから補聴器をずっとははめないとか、何かに使えるとガラクタを拾ってくるとか。

    「何かを作るための材料はいつも山から取ってくるか、どこかから廃材を拾ってくるかしていて、金をかけることなど思いもつかないのが守流だった。なのに、その何かを作るという部分がストンと抜け落ち、木切れだのブリキだのを拾ってくるという習慣だけが残っているのは不気味で貧乏くさいだけだった。」(P21)

     桃子さんは「嫁」となって5年しかたってないし、地元の人間でもないのによくやったな、と思う。物語自体が老いを肯定的にとらえていることには好感を持ったが、小さな世間が社会の良心を支えている、というのはどうかな、と思った。もちろんそういう側面もあるだろうが、長男だから、長男の嫁だからと介護を押し付けられたり、しなきゃしないで長男のくせに嫁のくせにと言われるような、それがストレスで老親を殺してしまうなんてこともあるわけで、いいことばかりじゃない。もちろん、桃子さんも疲弊して「付添いさん」を頼み、それによって救われたことも書いてあるのだが、付添いさんの時給は安いし、あくまで個人的な依頼の形なので全額家族持ち。(だから、時給も安くなるわけだが。)しかし、これに税金を充てれば、国はますます財政難。少子化で、どうすればいいのか、と読んでいる方が頭を抱える。
    この本の中の老人のように家族が看取ってくれる人ばかりじゃないが、老いや死は人を選ばない。
     本自体は面白く読んだし、介護をする家族のリアルな姿が描かれていたとは思うが、桃子さんのように「辛かったが、良かった。舅は愛しかった」で終われない人もいっぱいいるからなあ。

  • 長男の嫁なので義理親の介護をしなければならない立場になった女性たちのストーリーがリアルに語られています♪ 福岡近郊の田舎町を舞台に方言を駆使して彼女達の踏ん張る姿が面白おかしく進みながら認知症の親とのやりとりが展開して、読者も深刻にならずに介護に関わる知識や情報が解る仕掛けになっていました。実体験のある作者ならではの内容なので経験ある人も未知の人も読む価値のある好適な作品です!地味ながらもオススメ です。

  • 両親に「私が誰かわかりますか」と聞く日がくるのだろうか?
    それは誰にもわからない。そんなことになっても否定せず受け入れることができるのだろうかね?
    ましてや義理の両親となると……。自分の親をみるということで取り決めておかないと、とっても負担が大きくなりそう。

  • 老いと、介護される者と介護する者の話。
    内容は重いものでしたが、字体は読みやすくて、読後感も悪くない本でした。

    衰えていく義父、義母が絡められている「世間」、自分を縛る良心、表題になっている質問に最後に返された「桃子じゃろ」と答えた義父の声。

    誰しも最後は死んでいく、必ず終わりがくる。それまで懸命に生きていくしかない。義父の死が桃子に知らしめた事実。

    超高齢社会、どこでもありうる問題で、物語として読むことと現実は違うと思いますが、想像することはできるので読んでよかったです。

  • 長男の嫁で介護に直面していると、共感しすぎて読み進めないかもしれません。
    特にここに描かれている「村社会」がまだある所だとこの本のように、介護以外に疲れる要素満載なのでしょう。
    まだ介護に直面していない人にこそ読んでほしい本ですね。
    などと言っていられるのも、まだ直面していないからなのかもしれません。でもこの本でヒントはいっぱいもらえました。

  • 認知症になった高齢者と家族、特に長男の嫁、という立場の女性を描いた物語。田舎に特有の世間という名前の縛りに翻弄されて疲弊していく姿や、それを求めるかつての長男の嫁であった姑。そして介護を通じての気づき、など、共感のできる物語でした。

  • テーマは介護と看取り
    キーワードとなるのは「長男の嫁」

    再婚を機に東京から地方都市に移住した桃子を待っていたのは義理の父の介護
    「長男の嫁」と言うだけで当然のごとく介護を押し付けられてしまいます。

    義父を在宅介護する友人の恭子、育児と仕事と介護の三つ巴につぶされそうになる瞳、死んだ夫の両親に家政婦のように扱われている静子
    この3人も「長男の嫁」

    昔に比べれば少しは変化したのかも知れないけれど、本作に登場する村社会では介護=長男の嫁の義務と言う思想が根強く残っています。

    私の周りには自分の親の介護でさえ一杯一杯になり苦しんでいる人もいるのに痴ほう症を患う義理の親の介護を嫁がするのが当然の事だと思われたら救いがありません。
    そして感謝されるどころか、「当然」だと思う家族達。

    義理の父の下の世話をする妻、心も身体もボロボロになるまで頑張っているのに、全く手助けしない夫やその兄弟姉妹達。
    呆れて物も言えません。

    世間の目を気にし、奮闘する桃子に感情移入しながら読み進めました。

    良心や情をいくら持ってしても、介護は綺麗事だけでは済まされない。

    日本が高齢化社会になっている今だからこそ、家族全員の協力、病院、介護施設、ヘルパー等、様々な面での丁寧で細やかな充実を1日も早く実現出来る様になって欲しいと切に願いました。

  • みんな苦しいんだなと理解はできるけど、さすがに旦那はクズがすぎる。しっかりリアリティもあって、結婚したくないなと思った。

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著者プロフィール

1960年、神戸市生まれ。2012年『おしかくさま』で第49回文藝賞を受賞。他の著書に、小説『断貧サロン』『四月は少しつめたくて』、エッセイ『競馬の国のアリス』『お洋服はうれしい』などがある。

「2016年 『世界一ありふれた答え』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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