まむし三代記

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  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (456ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022516640

感想・レビュー・書評

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  • 某大河ドラマで異様な存在感を放つ斎藤道三、その父・長井新左衛門と、その息子・斎藤義龍の三代に渡る物語を、新左衛門とともに戦った源太なる男の視点で描く。

    最近の研究で道三は一代で成り上がったのではなく、父と二代掛けて守護代へと上り詰めたのではないかという説が有力となっているが、道三の父にスポットを当てた作品は全く知らないので興味深く読んだ。

    どちらかと言えば、青年道三よりも父・新左衛門の方が蝮っぽいように思える。
    青い青年道三をどう蝮に变化させていくのか、そしてやがて来る道三の息子との壮絶な争いにどう繋げていくのか、そこには作家さんの苦心の跡が感じられた。

    もう一つ、最大のテーマは新左衛門が野心を燃やしていた『国滅ぼし』なるもの。使い方次第で国の薬にもなるが、国を滅ぼすことにもなるという、恐ろしいもの。大物商人たちや細川京兆家も恐れたそれは一体何なのか、最後まで興味をそそられる。

    読み進めると所々に道三の祖父の物語も挟まれる。少年時代の松波高丸は細川家の命で何かを集めている。それがこの物語、つまり『国滅ぼし』にどう繋がっていくのか。こちらにも注目。

    あとがきによると、この作品は雑誌掲載作品だが後に大幅改稿され、結局描き下ろし作品として出版されたらしい。それだけ作家さんの思い入れも深いし、様々な伏線や構成など、相当な工夫や苦心を凝らしたとのこと、確かにそれがあちこちに見られる。
    そもそもタイトルである『まむし三代記』も何を以て『三代』とするのかも一つの仕掛けと言えるかも知れない。
    『国滅ぼし』というアイデアが浮かんだとき、作家さんは心の中で喝采を上げ、そこから様々なさらなるアイデアが浮かんだ様子も想像出来る。

    この作品がどこまで真相に近づいているかは置いておいて、道三親子が並の武将でなかったことは確か。
    『国を医(いや)す』『国手』になるためには、相当の覚悟がないと出来ない。その覚悟の果が壮絶な戦いだったとすれば、蝮の蝮たる所以にも納得がいく。

  • 国を毒するとも、医す薬になるとも言われる〈国滅ぼし〉。
    その秘密を手に入れた、斎藤道三親子三代を描く、時代小説。

    第26回中山義秀文学賞受賞作。

    おもしろかった。

    最初に活躍するのは、道三の父・法蓮房と、その仲間たち。
    悪事がきっかけで知り合っただけあって、個性が強く、一筋縄ではいかない関係性など、キャラクターが魅力的。

    道三、その息子・豊太丸と、世代が変わっていくが、ただ引き継ぐのではなく、それぞれの考え方をもって行動していきく。

    〈国滅ぼし〉とは何か。
    彼らは、それをどう使い、何を成し遂げるのか。

    〈国滅ぼし〉の正体は、目星が付くものの、最後まで引き込まれる。

    時折挟まれる、道三の祖父・松波高丸のエピソードが、最後に繋がっていくのも、うまかった。

  • 新説国取り物語、かな。フィクションと割り切って、ひとつの小説として読み終えた。大筋は既存の話しだけど、次々と驚きの展開があって「本当に斎藤道三親子の話?」と疑問符が付いてしまうが面白かった。時間差で語られる話がラストで繋がって、あーなるほど!のスッキリ感。戦闘シーンも臨場感があったし、ミステリーの要素もありで楽しめました。

  • 木下昌輝さん最新作は、現在放送中のNHK大河ドラマ「麒麟がくる」でも存在感を放つ、斎藤道三が主役の歴史小説。本書は斎藤道三の父と子の3代に渡る壮大な内容の中に、道三が切り札として隠し持っていた最終兵器「国滅ぼし」の謎というミステリー要素も加えた内容、「国滅ぼし」の謎は最後まで引っ張るのでラストまで楽しめる。帰蝶や織田信秀や明智光秀も出て来るので「麒麟が来る」を観ていると倍楽しめると思う。木下さんの作品は骨太ながらユーモアも散りばめられていて歴史小説をエンタメとして読めるので歴史小説が苦手な方にもオススメ。

  • NHK大河ドラマ「麒麟がくる」で斎藤道三に本木雅弘さんがキャスティングされた時、イメージと違う感じがしたのだけど、この作品を読んで、まむしのように容赦ない以前に怜悧で豪快なところは、やはり本木雅弘さんが適役だと思い直した。
    むしろ道三の父、長井新左衛門の方が本木雅弘さんっぽいかも?とも。
    久しぶりに時代物を読んで、策謀を巡らし躍動感っぷりに戦う様はとても興奮した。
    面白かった!

  • これは歴史小説なのかと疑いたくなるほどエンタメ性が強い美濃国盗り物語。冒険物としては面白いが、読むのに時間がかかったのはやはり創作性の強さに少しアレルギーを感じたからなのかもしれない。

    ただ、貨幣経済の利用を大きなテーマとしている点は面白い。現在目線からすれば通貨を乱発させれば国を簡単に崩壊させることは常識ではあるが、当時はアダムウィリアムスが生まれる2世紀も前の話。ただ、古代中国でも既に同様の事象が起きていることを踏まえれば、もっと早く気づく人がいてもよかったのではないかと思いもするし、答えは過去の功績からしか得られないことがつくづく分かる。それを作品のを通底するテーマにしようとした作者の着眼点にも感嘆。

    ただ、最後の方で途中であまり触れられてこなかった道三や義龍の部下たちの戦死シーンを細かく描いた意図がイマイチ理解できなかった。途中までは戦闘シーンは全てあっさりだったのに…

  • 斎藤道三の祖父,父,息子義龍4代にわたる下克上の歴史を源太という少年の目を通して語る.そこに祖父高丸が細川勝元から受け継いだ企みが,謎として周囲の人間を巻き込みながら続いていく.道三と義龍の関係には少し驚いたが,まあこういうのもアリかもと面白かった.

  • 三代紀じゃなくて、四代紀な気もするけど、正直ネタ振りが壮大な割に大したことないパターンぽいぞと思いつつ読み進める。ストーリーとしては史実に忠実ではなく(無視はしていない)、突拍子もないんだけど、あくまで骨太で、史実を違った視点で見ると面白いかもと教えてくれてるよう。ネタ振りも意外とと言ったら失礼だけど、なるほどとしっくりきて、振り負けすることもなかった。さくさく読めるので、リモート勤務の合間に読むのもいいのでは。

  • 斎藤道三の詳しい事を知らなかったので、楽しみながら読めた。国ほろぼしの謎が最後まで伏せられていたし、歴史ミステリーとしても読ませてくれた。

  • 斎藤道三。まむしといわれた美濃の戦国大名。彼と、父親と息子の三代にわたる野望を描いた斎藤一族の大いなる夢の物語。
    その核をなすのは「国崩し」という言葉。これをもってすれば、一国どころか日の本全てを制することができ得るという、それはなんなのか。

    「国崩し」?それって、大砲の異名ではなかったかな?でも、そんなわけないよな。それでは物語の核とするには弱い、といったところから読まされてしまいました。

    野望の成就はならなかったけど、代を重ねるうちに当初の目的をは変わりながら道三の一族が目論んだものは、世の中にひろがってゆく。その「国崩し」の可能性をはらんだまま。

    毒を身のうちに抱えて、足下でしずかに潜んでいる。その印象がまむしと結びついてぞわぞわしましたね。梟雄である斎藤道三とは違った一面を描いているとは思うのですが、引っ張られたのはかつての印象。父親の方が梟雄というのがふさわしいのか。

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著者プロフィール

1974年奈良県生まれ。2015年デビュー作『宇喜多の捨て嫁』で高校生直木賞、歴史時代作家クラブ賞新人賞、舟橋聖一文学賞、19年『天下一の軽口男』で大阪ほんま本大賞、『絵金、闇を塗る』で野村胡堂文学賞、20年『まむし三代記』で日本歴史時代作家協会賞作品賞、中山義秀文学賞、’22年『孤剣の涯て』で本屋が選ぶ時代小説大賞を受賞。近著に『応仁悪童伝』がある。

「2023年 『風雲 戦国アンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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