一門 “冴えん師匠"がなぜ強い棋士を育てられたのか?

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  • 朝日新聞出版
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022516824

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  • 森一門の書である。しかし、描かれているのは師匠の森信雄。村山聖の師匠だった人である。『聖の青春』が強烈な印象を残したのに対してこの『一門』はどちらかというと、淡々としている。しかし、弟子から見た師匠という視点で、15人もの弟子が多面的重層的に語ることで、森信雄が立体的に浮かび上がっている。そこに見える森信雄は、どこまでも村山聖の師匠であった森信雄であった。将棋は強くはなくとも、将棋に対する思いは強い。そしてその思いを全人格的に弟子に伝えていく師匠。だからこそアドバイスは将棋とはかけ離れたものばかりであるが、結局は人間が練れることで将棋も強くなっていく。見事である。

  • 「聖の青春」は私のオールタイムベスト3の一冊。
    森さんは、村山聖さんの人生の伴走者だった。
    「聖の青春」でも、森さんはプロとしては強い方ではないと言及されていたが、村山さんの後も何人もの弟子がいて、糸谷さん始め、高名な棋士も多い。
    それが門外漢からすると不思議だったが、いろいろ謎が解けた。
    著者の神田さんは、あとがきで将棋をがっつり取材するのは初めてだったと書いているが、素人にもわかりやすく、取材相手に敬意を持って取材されているのが伝わってくる。
    おもしろかった。
    石本さんが森さん宅にうかがったとき「先生、めっちゃ喋ってるな、と思ってたら、全部ヨウムの金太郎が喋ってたんですよ」が良かった。
    棋士って人々は、本当にマレビトだ。
    そこに惹かれる。

  • 時には遠くから見守り
    時には激しく怒り
    個人の個性を尊重し行きすぎると然り
    本当に熱くて優しい師匠だと思いました
    一門のチームワークの良さも伝わり
    将棋界の師弟関係も様々だと思いました

  • 村山聖の師匠としても知られる森信雄は、棋士として華やかな実績を残した人物ではない。棋戦優勝は新人王戦の1回のみ。順位戦での昇級は一度もなく、竜王戦も最高は5組。しかし、プロになった弟子の多さでは群を抜いている。

    弟子の証言を通して「なぜ」を問うのがこの一冊。多くのプロ棋士がまず競技者であることを重視し、見込みのある者しか弟子に取らないのに対して、森は本人が希望すれば基本的に弟子に取るというのは要素として大きいだろう。

    そこの「なぜ」に対して、森の「勝負根性」の不足は見出せる。何がなんでも相手を負かせてやろうという勝負師ではなく、他人を真剣に思うことができる。内弟子も経験し、ひどく怒られた経験もある山崎隆之は「それだけ人に怒れるということは、他人に対して熱を込められるということです」と指摘する。

    単に「弟子を多く取る」だけでなく、人を思えるからこそ多くの弟子が育つのだろうと感じた。

  • 一門の人数も多く、それぞれのエピソードをゆっくりよんでいたら読了までに時間がかかってしまった。師匠はもちろんそれぞれの棋士の生きてきた道筋が個性的で面白い。よく知ってる棋士でも過去の逸話やら挫折した話とか今の彼らしか知らない私には新鮮だった。写真でしか知らない棋士のことも今後応援したくなるような描き方をされている。
    森師匠の温かい人間性と弟子との絆が読んでいて心地よい。これだけ個性的なメンバーに慕われるのも納得できるなと。将棋の師弟関係はそこまでベッタリではないのだろうけど、歴史と思いが引き継がれていくんだろうと思った。

  • 才能がある子、才能があるか分からない子、人を育てるには愛情が必要なことが分かった。

  • 個人的にはとっくにあきらめていた山崎八段がA級昇級を決めた。そのとき、昇級を伝える各メディアで、この本のインタビューが引用されていたので興味を持って読んでみた。

    森信雄と言えば、詰将棋作家としての方が有名な気がするが、指将棋の方では村山聖、糸谷哲郎、山崎隆之といった名棋士をはじめ12名の棋士、3名の女流棋士を育てた師匠として名が高い。森信雄自身の半生や結婚のときのエピソードにはじまり、一門のインタビューを通してこの名伯楽の魅力に迫る。まあ、面白く読めた。

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