身のある話と、歯に詰まるワタシ

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022516879

作品紹介・あらすじ

作家・ミュージシャン・タレントとして活躍する尾崎世界観(クリープハイプ)による初の対談集。ゲストは、加藤シゲアキ、若林正恭、神田伯山、最果タヒ、金原ひとみ、那須川天心、尾野真千子、椎木知仁(My Hair is Bad)。

感想・レビュー・書評

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  • クリープハイプが好きなことはあまり人には言わないけど、これを読んで、なんで私が昔からクリープハイプを聴いているのか分かった。ひとみ姉さんが、こんな下層の人間にも届いているんだからちゃんと下層の人間に届いていますよと言っていて納得した。

    加藤シゲアキ
    ピンクとグレーを半分ほど書いた頃、東日本大震災が起きた。アイドルの自分がこんな時にこんな暗い話を書いたら、誰かをきずつけてしまうんじゃないか。それでも加藤が頑張って作品を書いたということに励まされる人がいてくれたら、そう自分に言い聞かせて書き続けた。

    神田伯山
    昔師匠の落語を聴いたとき何言ってるか全然分かんなかった。でも3年後に同じCDを聴いたらめちゃくちゃ面白かった。僕をきっかけに講談のファンになってくれた人たちをそこまで引っ張りあげたい。

    最果タヒ
    ネットに好き放題書いていたら、言葉が自分の考えを飛び越えてその先に行ってしまった。だから自分の考えの方が鬼、思考が言葉を追いかけている。そして言葉をつかまえてしまったらダメなのだど思う。

    金原ひとみ
    小説は、自分の内蔵まで見せているようなもの。私は母に対して反発心しかなかったと思っているし、いまだに反発し続けている。人生は消去的選択の繰り返し。私は別に子どもを産みたくて産んだわけでもないし結婚したくてしたわけでもない。ただ荒波に呑まれるようにして今に至っているだけ。
     尾崎
     金原さんの作品には、破綻しきれずに生きてしまえる悲しさを感じる。たとえば『ストロングゼロ』。ああいうふうに書ききれるのは金原さんが息を止めて我慢しているからなんじゃないか。
    「イノチミジカシコイセヨオトメ」は生きてても希望なんてないなと思った時にできた曲。やりきれない気持ちが急に溢れて歌詞もメロディも同時にできた。あんな風に一度にできたことはあの曲以来ない。
    (あと金原先生と同じときに同じフェスでクリープハイプを観ていたことが発覚!)

    那須川天心
    格闘技のために三部制の高校に4年間通った。午前部に通ったので12時に授業が終わり、電車でジムへ移動して、3時間程度練習して、少し休んでから今度はボクシングへ行ったりフィジカルトレーニングをしたり。格闘技をやめたいと思ったことは一度もない。
    (そんな那須川さんがクリープハイプが好きだとは。しかも「陽」を特に聴かれるとのこと)

    尾野真千子
    自分にとって本当に気が合う友達じゃないと一緒にいてもストレスでしかないから。そんな人たちと仲良くしても何の得にもならないし、年を重ねていくにあたって、自分が本当に楽しくいられる人としかいたくないと思うようになった。
     尾崎
     いろんなものと離れられる音楽。一つになるのではなくひとりになる音楽。僕らのファンにはそういった方が多いと感じています。

    椎木知仁
    男の人が女性目線で歌うスタイルはクリープハイプが発明したものだと思うんです。少なくとも僕らの世代にとっては、そういうものの走りがクリープハイプでした。
     尾崎
     フェスでマイヘアのステージを見た時、お客さんが満員なのに誰も手をあげていなかったんだよね。あれはまるで自分たちを見ているみたいだった。「ああ、この人たちは言葉を聴いているんだな」と思った。

  • 世界観が会いたかった人たちとの対談集。
    当たり前のことだけど相手のことをよくリサーチして対談に臨んでるから、会話が弾んで話を引き出してるし話を引き出してもらってる。フェスの話を引き出してもらってるのは嬉しかったな。

    金原ひとみさんとの対談の最後、長谷川カオナシさんのエピソードは初めて聞いた、いい話だなぁ。世界観嬉しかっただろうなぁ。
    神田松之丞さんの、"世の中って誤解にあふれている。良い誤解と悪い誤解しかない"、ってほんとその通りだな。

    今はフェスが人気のバロメーターになってるんだな。
    フェスのセトリは媚びたものになるのは仕方ない気もするな。クリープハイプはそんな媚びた感じしないけど。
    「HE IS MINE」最初にやったとき、盛り上がるのになんで、って思ってたけど‥ファンじゃない人は早く他に行っていいってことだったんだな。

    周りの人の意見に流されないこと。特に影響の大きな人の意見も一つの意見として捉えることができるか、って大事なことだよな。

  • 金原ひとみがあるインタビュアーから
    「デビューした時に自分が思い描いていた未来像と今の自分を比べてみて、どうですか?」と聞かれた事に対して金原さんと尾崎さんお二人が暴力的な質問で、酷すぎる質問だって批判していたのが印象的だった。

    何かしら意志を持ってここまで生きてきたわけじゃなくてどうしようもなさを抱えながら荒波に呑まれながら今に至っている。
    意志を前提に生きる人々が築き上げたものが幻想にすぎないと知らしめる為に金原ひとみ姉さんは小説家を書き続けるらしいよ、カッコイ〜

  • 個人的には金原ひとみさんが大好きなので、
    大好き×大好きで至福の対談だった。

    苦汁100%はスカトロ、っていう表現が金原さんらしいし、言われてみれば納得出来る。

    あと当初カオナシさんは3年でバンドを辞める約束だったのに、デビューしてしまって、尾崎さんもデビューはできたけど次はどうしたらいいのか分からなくて…って壁にぶつかってる時にポロッと「今辞められたらやばいな」ってこぼしたら、「そんなことまだ覚えてたんですか?ここでやめるわけないじゃないですか。僕はベーシストとしてクリープハイプでやっていきますよ」って言ったカオナシ氏。素敵すぎる。

    あと好きだった対談はマイヘアの椎木くん。
    わたしはマイヘア聞いたことないんだけど、尾崎さんリスペクトって感じですごく可愛い後輩なんだなって思った。

    いつもひねくれ役の尾崎さんが、椎木くんの打ち上げに駆けつけたり、ライブ前日に電話かけてきたら「そんなことしてる場合じゃないだろ!」って叱るエピソードは尾崎さんの優しさが溢れていて大好きですね。

    そしてそんな尾崎さんにドキドキして、酔っ払わないと電話できなかったり、飲み会で直視できない椎木くん可愛過ぎる…。恋か…!?

    デビュー前の自分のことを尾崎さんが「底辺にいたから。底辺の生活をしてると、近くにあるものが変なものばかりになる。それを作品にしてみたら面白がられた」って言ってたのは、ちょっと心にじんと来た。

    男の人が女目線で歌うスタイルに衝撃を受けたという椎木くんに、「その時の自分は本当に頭がおかしかったのかもしれない。売れない状態でバンドを続けていると精神状態がおかしくなるから。世間に弾かれてそっちに行くしかなかった」という尾崎さんの言葉にはちょっとハッとするものがあった。

    言われてみるとわかるような気もする。当時のわたしもクリープハイプのそういう狂ったところに惹かれたのかもしれない。

    尾崎さんの言葉を読めて幸せだ。

  • 違いを確認し合う様な最果タヒとの対談がよかった

  • 本館

  • 対談相手と誉め合いながら、尾崎さんの活動(バンドと執筆)と対談相手の活動(アイドル、作家、講談師、役者など)との共通点なんかを見つけたりする対談集。

    尾野真知子さんと河瀬直美監督の関係が興味深かった。

    尾崎さんも対談相手も真面目だから、相手のことを褒めるし、伝わりにくそうなことは全然言わない。「また褒め合ってるなあ」と何度も思ってしまった。まあ、対談で相手のことを貶すのはおかしいし、謙遜しすぎて卑屈になるのもまたおかしいだろうから、褒め合うのは正しい対談スタイルなんだろう。でも、もうすこし深い内容の話が聞きたかったな。

  • 尾崎さんが好きで読みましたが、対談相手の皆さんも好きになってしまうような素敵な本でした。
    でも、やはりこの本を読み終わった時に一番強く思ったことは尾崎さんの思考や言葉、表現が本当に魅力的だということ。
    図書館で借りたものを読んでいたら付箋ばかりになってしまったので購入しようと思います。
    それだけ心に響いた箇所が沢山ありました。

    自分用に各対談の感想も軽く残します。
    ■加藤シゲアキさん
    まず、扉(というのだろうか)で加藤さんとの対談についてまとめた尾崎さんの言葉が素敵すぎて、一番最初のページなのに心酔してしまいました。
    別のジャンルながら音楽活動をしていること、劣等感を抱いていたこと、小説に挑戦したことについて、お二人が共鳴している部分がとても興味深かったです。

    ■神田伯山さん
    伯山さんの扉の言葉もとっても素敵で惹かれました。
    一番強く思ったのは、最後に尾崎さんも言っている通り伯山さんがとても気遣いの方ということ。インタビューされる側として構えていても問題はないのに、終始自分の話だけではなく尾崎さんにも自然に話を振って広げられていて、素敵な方だなと感じました。
    伯山さんの話で印象的だったのは、「講談の案内役」として活動する中でお客さんからのリアクションを三段階に分けて考えていた部分です。とても現実的な方なんだろうと感じました。
    今度、ラジオを聴いてみます。

    ■最果タヒさん
    何もかも真逆で面白かったです。
    まさに「わからないけれど、いい」と思った対談でした。

    ■金原ひとみさん
    一クリープハイプファンとして、金原さんのクリープハイプへの熱量が読んでいて気持ち良かったです。
    売れたミュージシャンが宇宙のことを歌う話、貧乏に憧れてお金を捨てようとした話が印象的でした。

    ■那須川天心さん
    尾崎さんが、音楽には正解がないからこそ明確な勝ち負けがある世界に憧れると話していたのが印象的でした。
    また、「絶対にやめないくせに、「やめる」と言って音楽の気を引こうとしているんですね。」という尾崎さんの表現につい天を仰ぎました。。
    それから、那須川さんが一生のお願いや陽を好きと話していてとても共感しました。

    ■尾野真知子さん
    尾崎さんがクリープハイプのファンは「一つになるのではなく、ひとりになる音楽。」と言っていましたが、とても頷けました。
    尾野さんが経験でしか勉強できないと話していた部分がとても印象的です。

    ■椎木知仁さん
    唯一同じ職種の人との対談で、音楽についてより詳しく対談していて面白かったです。
    ずっと昔からクリープハイプのことが好きで、尊敬している椎木さんの気持ちがとても伝わってきました。
    「才能って何をとるかだから、「できない才能」というものがあってもいいと思う。」という言葉が響きました。



  • 尾崎世界観の言葉選びが好きだから、尾崎世界観のこともきっと大好きなんだと本を読んで気付いた

  • 価値観を吸収

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著者プロフィール

1984年、東京都生まれ。ロックバンド「クリープハイプ」のヴォーカル、ギターを担当。作家としても活動し、これまでに小説『祐介』、日記エッセイ『苦汁100%』『苦汁200%』(いずれも文藝春秋)、『犬も食わない』千早茜との共著(新潮社)を上梓。

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