- Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022517135
作品紹介・あらすじ
友愛でも共感でもなく、この刹那に集う女たち。作家志望のライター美玖、共働きで女性誌の編集をつづける弓子、インテリアデザイナーのユリ。都内きってのナンパ街となった銀座のコリドーで、三人は互いのプライベートに踏み込まない距離感を保ちながら、この場かぎりの「ともだち」として付き合いをつづけている。気ままな飲みともだちに見えるが、彼女たちが抱える虚無は、仕事でもプライベートでも、それぞれに深い。結婚したばかりの男に思いを寄せ、不倫によって日常が一変する美玖。サレ妻となった弓子は、夫の監視に疲弊しながら仕事と家庭と自尊心を守ることに必死だ。ユリの生活はリア充に映るが、まったく不透明で真実を見通すことができない。愚かしく、狂おしく、密やかに――彼女たちの日常にひそむ罠と闇と微かな光。女性の生き辛さと新たな連帯をを鮮やかに切りとる著者の到達点。
感想・レビュー・書評
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初金原さん。
圧倒的な小説でした。
さすが、芥川賞作家。
結婚したばかりの男と不倫するフリーライターの美玖。不倫する夫の監視しつつ、家庭を維持することで自尊心を守っている編集者の弓子。何者だかよくわらないが、正統な理屈をいちいちこねくりまわすインテリアコーディネーターのユリ。
3人は銀座のコリドー街に集まる飲み友だち。3人の視点が順番に語られることでストーリーは展開する。
三者三様の人生が描かれているが、それぞれの視線がそれぞれに対し鋭く尖っているので、怖いっす。
で、結構、事件が起こる。特に後半が怒涛。右往左往というか七転八倒というか…
特にユリが最後まで不気味で…好き。
三人は共通して男のしょうもない性に引っ掻き回されている。でも、強かに生きる。
こういう女性の強かさがあったからこそ、今こんな社会あって、人類は繁栄しているんだな…と、実感。
感謝です。
ドロドロした小説なのに、なぜか読後感が清々しい。 -
銀座コリドー街に集う三者三様の女性たち。
フリーライターの美玖は海外赴任していった新婚の彼と不倫中。
出版社で働くバリキャリの弓子は若い女と不倫した夫に家を出て行かれた。
インテリアデザイナーのユリは夫に娘の胡桃ちゃんを預けて浮気三昧。
立場も境遇もそれぞれ違う3人が、酒を飲みながら繰り広げるマシンガントークに爽快感。まぁ話している内容はドロドロだけれども。
私が金原ひとみの小説を好きな理由の一つとして、全員に少しずつ共感できるというのがある。登場人物の誰か一人にのみ肩入れするのではなくて、「あぁわかる」「でもこっちもわかる」「それもわかる!」「わかる!!」というのが最後までずっと繰り返される。
一字でも読み落としたら振り落とされてしまいそうなスピード感に必死でしがみついていると、ストーリーは次第にまるごと自分自身に置き換えられていって、結果としてパンドラの箱が開く。
もやもやした感情や抱えていた虚無がどこまでも論理的に言語化されてしまうので、箱が開いたら最後、全てを理解してしまった私はもう以前の自分には戻れなくなっている。臭いものに蓋をしていた頃の自分には。
ーー
私は夫に愛されたかったし、抱かれたかった。でもユリの言う通り、私は愛される才能、抱かれる才能がなかったから愛されなかったし抱かれなかった。愛する才能も、抱く才能もだ。つまり恋愛的側面に於いて私は欠陥品で、夫はきちんとそういうシステムが起動している女に鞍替えしたということだ。夫は少しずつ、欠陥品である私を憎むようになっていったに違いない。でなければ、あんな態度で、二人で経てきた十数年、結婚式、婚姻届、出産、二度目の出産、子育て、旅行の数々、子供の小学校入学、何度も共に参加してきた学校行事、そういうものを走馬灯のように思い出していた私の視線を背中に浴びながら女と店を出て行くことなどできなかったはずだ。最後の最後まで、本当に愛されているのは私のはずという驕った望みを捨て切れなかった自分が情けなかった。愛されているどころか、私は恨まれてさえいたのだ。
ーー
最初は、この人と一度でもセックスできたら、私はその後の人生を幸せに生きていけるとすら思った。そんな風にして始まった恋愛が、彼と私の関係とは程遠いところで、完全に別のものに変容してしまった。それが不倫なのかもしれない。不倫は一対一の関係を築けない。いつも彼の陰には奥さんがいて、目を光らせ、彼めがけて飛んでくる害虫をエアガンで撃ち落とし続けているのだ。私は彼と付き合っていたというよりも、彼と彼プラスαと付き合っていたのだ。結婚している男というのは、どうやってもそれ単体で存在しようがないのだ。
ーー
結婚生活ってなんなんだろう本当に。不倫して請求される慰謝料ってなんなんだろう本当に。
不倫された弓子と、不倫した美玖は真逆の存在なのに、この両者の違いが見失われていく。むしろそこには何か似通ってすらいるものがあるように思えてならない。 -
世界観に引き込まれて、一気に読みきりました。
「友達」とは何なのか?
人との関係をつないでいるものは何なのか?
ユリが言い放った言葉に答えが見えた気がします。
その関係に友達という名前を与えた瞬間、友達を所有してしまうから。所有の概念こそが、他人を排除する意識を自身の中に生じさせてしまう。
時間ができた時に、また読みたいと思います。 -
*
美玖、弓子、ユリ
職業も年齢も違う、それぞれが全く違う
個性的な3人。
恋愛、家庭、仕事、生活の中で
3人はぶつかり合っていく。
わかっているようでいて理解できない自分自信との
葛藤や諦めに投げやりになりもがく。
人生、何が起こるか分からない。 -
まるで嵐の中にいるかのような、全ての台詞に迫力がある小説で、読み終わった後は圧倒されて放心状態になった。どうしたらこんな会話を書けるのだろう?金原ひとみは現代の女性を書くのが本当に巧い。弓子、ユリ、美玖の3人ともが生きづらそうで、でもそれを直接吐露して慰め合うとか励ましあうとかそういう優しい空間はなく、常に殺伐としている。でも意外に爽やかさがある結末が良かった。この作品は初期の頃を思い出させるような衝動というかヒリヒリした感じが前面に出ていた。中学生の頃から金原ひとみの小説が好きで10年以上読んでいるけれど、相変わらず好きでこれからも読み続けたい。
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弓子苦手ー!
ユリのがまだいいかなメンドクサイけど。
ミクはバカだけど無難に付き合いやすそう。
面白いんだけど、女ってそんなに男で幸せ決まっちゃうんかな?
男居ないと、そんなに生きてる感じしないんかね?
っていうのが疑問に残ったけど、読み物としては面白かった! -
金原ひとみにハマったかも。
どうしても、純文学と言われる芥川賞系の作品が苦手で、ほとんど読んでこなかった。以前に新聞小説で彼女の作品を読んで、少しハードルが下がってはいた。
最初は女3人のトークに辟易してしまっていたが結局、苦手と思っていたユリが一番気になる存在に。
自分は本音を隠す弓子タイプだな、と思いながら読んでいたので、ユリの辛辣な言葉にビクビクしていた。ユリみたいに本音を出して、言いたいことを言語化出来たらいいなと思う反面、あんな友達は嫌だと思っている自分もいる。
ユリというか金原ひとみなんだろうが、とにかく言葉が圧倒的。 -
同世代だなぁ…と嬉しくもあり切なくもなった。デビューからずっと読んでますが、本当になんでこんなにいろんな意味で痛いんだろう。言語化、そう、金原さんって叫びとか言葉にしづらい感情をしっかりと言語化できるひと。
アラサーにはこれ、すごく響くと思う。3人の女性どれも痛くて。でもわたしはきっと美玖が一番近い気がする。や、ユリな部分もあるかも。なんかもう最後が怖かった。それでもみんな一緒にいる感じ、真実か嘘かなんてもはやどうでも良い感じ。本音でぶつかってるのかそうでないのか曖昧な感じ。怖い。けど、好き。 -
色んな立場の3人の女性が出てきたけど
ユリの暮らしを偽ってる感じは
自分と重なる部分があって1番共感できた。
あと女の敵は女っていうけど
そんなことはないよなあ。
どうも同じタイミングでコメントいれさせていただいたようです(笑)
この本と...
どうも同じタイミングでコメントいれさせていただいたようです(笑)
この本とても、面白いです。そしてしっかり痛いです。naonaonao16gさんには是非読んでほしい!
びっくりしたことでしょう笑
読了した今、改めて拝見させていただき、時の流れの速さに...
びっくりしたことでしょう笑
読了した今、改めて拝見させていただき、時の流れの速さに愕然としたり、その時間に思いを馳せたりなどしていました笑
この本読んだのがもう2年なんですね。
金原さんとは2年の付き合いか…ほんと時の流れは速い。
そうですね。初め...
この本読んだのがもう2年なんですね。
金原さんとは2年の付き合いか…ほんと時の流れは速い。
そうですね。初めて金原さんを読んだときは圧倒されましたね。
2年間でだいぶ慣れましたけど、癖になってしまいましたね。
金原さんなしの読書生活は今じゃ考えられないです。