- Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022572981
感想・レビュー・書評
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高橋源一郎はすごく頭が良くて、正直で、誠実で、だからこの人の書くものには安心して身を委ねてしまっていいな、と思った。高橋源一郎はそんな読み方をされることは望んでいないかもしれないけれど。でも高橋源一郎って、文学を心から愛する人だと思う。だから、わたしの読書歴なんてたいしたことはないのだけど、それでも本を読む人間としてやっぱり愛おしくなっちゃうんです。
この本から受け取ったものはあまりにたくさんある。ひとつひとつ丁寧に咀嚼していきたいと思う一方で、今のわたしには到底抱えきれないような問題意識をたくさん提供されてしまった感じ。
オウムのマハー・ケイマさんの文章。「自分が思ったことはきちんと言葉で表現できる」と信じること。究極の真理まであっというまに到達してしまう、その整理整頓された論理の道筋。意味が一つずつしか存在していない言葉で構築された世界。
AV女優のスカウトにおける価値観の解体作業。
「可愛い」と言いながら殴る親によって精神分裂症になっちゃう子供は、一対一対応の世界に入ることを禁じられた人間に対する罰を受けてる。
国籍とは、国民文学とは、母国語とは?
あの「声明文」の名文、文章力。
「人間の限界とは言語の限界であり、それは文学の限界そのものなのだ」ミラン・クンデラ
世界を成立させるためには文学が必要である。では、文学とは何か。文学と政治とは。言葉の政治性。日本語の枠組みの中でしかものを考えることのできないわたしたち。
もう、考えるべきことが溢れていて、ものすごく体力を使ったし、頭が痛くて痛くて、読みたくてしょうがないのに読めなくなったりしたし、涙が出そうになるのを必死にこらえたりした。わたしは世界がどういう風に成り立っていて、自分はどう生きるのかをずっと知りたくて、それに対する答えを、読書の中で探してる。あたまいたくなっちゃった。考えることは生きること。生きろ生きろと痛いくらいに訴えかけてくる本。くるしくて、つかれきってしまうけれども、ほんとうに刺激的な読書体験。詳細をみるコメント0件をすべて表示