贋作坊っちゃん殺人事件

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.22
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感想 : 33
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022576705

感想・レビュー・書評

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  • ジョーカーゲーム繋がりで柳広司の朝日新人文学賞受賞作を手に(^^)
    夏目漱石の坊ちゃんをベースに描かれていますが、ターナー島の首つりや幻覚を生み出す白百合(きちがいなすび)など、夏目漱石の他の作品からもイメージを持ち込んでいて、夏目漱石作品を読んだことのある人はちょっと違った楽しみも(笑)

  • 確かこの作者は随分前に「ダブル・ジョーカー」を読んでいて、割と面白かった覚えがある。
    今回も、「坊っちゃん」の主人公が東京に帰った後で赤シャツが殺され、山嵐と事件解決に挑む、という設定は興味をそそるし、文体も極力漱石に寄せていて凝っているなと思うのだけど、話自体はやり過ぎ感が否めない…。
    まあ、贋作、と堂々と名乗っているくらいなのだから、無理矢理でも派手な方がいいのかも知れない。

  • 私の中では安パイの作家、柳広司。
    漱石先生の坊ちゃんを読んだことないけど、話にはついていけた。
    作品の特性上しょうがないけど主人公の性格がな。もうちょっとスマートに生きられないものか。

  • 赤シャツが自殺した。そして時を同じくして坊っちゃんは山嵐と偶然に出会う。なんでも二人が教鞭をとっていた学校がある松山に行くという。その目的は赤シャツの死の真相を突きとめるため。「赤シャツが自殺なんかするわけがない」。山嵐と共に四国に渡った坊っちゃんは地道な聞き込みで事件の真相に迫っていく。そしてその先にあった事実は果たして日本国の存続を揺るがす陰謀だった――

    夏目漱石作『坊っちゃん』の文体を再現してそのアフターストーリーを描いた意欲作。オリジナルの『坊っちゃん』はまだ未読のわたしですが、巧みに当時の時代背景を利用しながら、考え抜かれたミステリーに仕上がっています。一気に飛躍するラストはなかなか楽しめました。

    言わずもがな、オリジナルを先に読んだほうが楽しめます。

  • 舞台は夏目漱石の「坊ちゃん」の3年後。再会した山嵐から、あの赤シャツ教頭が死んだと聞いて、真相を求めて四国で探偵をするお話。

    人の、しかも誰もが知る大名作のキャラと、当時の時代背景を巧みに使って全く趣向の異なるミステリーを創り上げるという大冒険をした意欲作です。

    …最後の最後で、坊ちゃんの存在それ自体が事件の根底にあった、という趣向も見事。
    原作の清さんの短い一言と存在を徹底的に活用してますね。
    ただし、偉大な人物というか、人を惹きつけた結果として、組織の象徴になったり、悪い方面にいくと独裁者になって煽動したりする「稀代の人物」って、持って生まれた性質が大分影響しており、当人は実はいたって無邪気な人なのかも…と思うと怖くもありますね。

  • 夏目漱石の坊ちゃんが無鉄砲なのはそのままに、探偵に。

    坊ちゃんに書かれていたあの日々にこんな裏事情が隠されていたとは。。

    本当に原作でイメージしていた通りの坊ちゃんの言動なので、サイドストーリーみたいで面白かったです。

    そもそも夏目漱石さん自体がそうなのですが、疾走感はなく、なんだか物足りない。

  • おそらく、日露戦争が終わって、第二次世界大戦がはじまる前のお話だと思います。主人公の堀田は教師をやってましたが、同僚たちの行動に我慢できず、1ヶ月で辞めてしまいます。教師を辞めてからは、鉄道の技師になったのですが、ある日、ふと当時、同僚だった山嵐と出会い、その山嵐の誘いで一度辞めて、二度と来ないだろう、と思っていた四国に舞い戻ります。

    四国に戻ってきた主人公は、当時教師だった時には気がつかなかった、物語の裏側に気付き、驚きます。この作品には、政治的な話やいわいる『あか』と呼ばれるものが出てきます。学生運動とか、そういったものです。私も昭和生まれなので、まだ小さい頃『あか』というものを見たことがありますが、ただ一度っきりでしたが、その何台も続くトラックの不気味さは、小さかっただけに、未だに脳裏に焼き付いております。

    その『あか』=社会主義というのは、なんとなく、知っていたのですが、社会主義=お金を否定する団体、というのは初耳で驚きました。むしろ、社会主義というのは、もっと、お金に執着するものだと思っていました。どうしてそう思っていたのか、と言われても困りますが、たぶん、イメージだったんでしょうね。主人公がある出来事を、表側からだけ見て、反対側のイメージを持ったのと同じことなのかもしれません。お金に執着しない事を意識するあまり、とてもお金に執着してるように見える、そんな事って、けっこうあるのかな?と思いました。

  • 面白かったー!
    とはいえ原作坊っちゃんはうろ覚えなのですが…

    こんな解釈もできるのね!
    これは絶対原作読んだあとのほうが楽しめると思う!


    位置付けは原作を元におもしろく解釈して本に仕上げました、ってとこでよいのよね…?


    当時の情勢と原作をよく踏まえたいい作品です。
    文庫には解説出てるだろうし読みたかったなぁ。

    漱石先生読んだあとなんだけど、漱石先生とはまた違った作品。
    あちらはユーモアたっぷり、こちらはユーモア+α入ってるよね。

    また漱石先生読みたくなったな。

    @図書館本

  • そんなところが彼は坊ちゃんで、でもそれこそが彼の良いところ。

  • 20111110 読了(図書館)

    恥ずかしながら、名作・坊ちゃんを読んだことがなかったのですが・・・・・・この本を読み終えてから図書館でぱらぱら見てみたらなるほど。かなり忠実なオマージュだったのですね!

    それにしても、主人公の一人称で進んでいくので、途中からの展開には読者の自分も困惑させられましたよ。そこに、いままでに味わったことのないスリルを感じました。
    魅力がある人って、自分の意思に関係なく人を寄せ付けるんですよねえ。

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著者プロフィール

一九六七年生まれ。二〇〇一年『贋作『坊っちゃん』殺人事件』で第十二回朝日新人文学賞受賞。〇八年に刊行した『ジョーカー・ゲーム』で吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞をダブル受賞。他の著書に『象は忘れない』『風神雷神』『二度読んだ本を三度読む』『太平洋食堂』『アンブレイカブル』などがある。

「2022年 『はじまりの島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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