貴婦人Aの蘇生

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022577009

感想・レビュー・書評

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  • 未亡人のロシア人であるユーリ伯母さんと、姪である私の、亡くなった伯父さんが残した剥製たちに囲まれて暮らす生活。

    残された貴重な剥製に、一つずつAという刺繍を施していく伯母さん。

    Aの持つ本当の意味、ロシア帝国を長く支配した末に崩壊した、ロマノフ家の生き残り、
    剥製に導かれてやってきたブローカーのオハラ、恋人のニコの深いやさしさ、伯母さんの、決して衰えることのない澄んだブルーの瞳。

    すべてがやさしさに包まれているわけではなく、にじみ出る欲求と苦労、困惑に、誰も知ることのない真実が入り乱れて
    切なく、いつまでもそれは大切な記憶として、伯母さんと関わったすべての人に残る。

    やっぱり小川洋子いいよね。
    文も内容もいい。何にも流されることもなく世界観が完璧に作られている!
    伯母さんの運命はなんとなくわかっていたけど、やっぱり引き込まれて最後の余韻までもが心地いい)^o^(

  • 北極グマの剥製に顔をつっこんで絶命した伯父。法律書の生き埋めになって冷たくなっていた父。そして、死んだ動物たちに夜ごと刺繍をほどこす伯母。そして主人公と恋人のニコ……

    奇妙な人間と、その関係と、淡々とした中の深い感情。

  • 2008.10.17.

    2006.09.27. 心が静かになる、小川さん特有の世界観はすごく素敵。夫の残した大量の(世間的には貴重な)剥製と共に暮らし、それらにAの文字を刺繍していくおばあさん。その孫と恋人(これまた魅力的な人物)を軸に、剥製のことで大騒ぎが起こったりするんだけれど、動じない貴婦人。もしかして、もしかすると…?という心地よい謎を残して物語は幕を下ろす。

  • とてつもなくロマンティックな作品。
    このひとの小説がそばにあるだけで幸せな気持ちになります。
    出てくる人物が皆、とても品が良く慎み深い。

  • ありとあらゆるものに刺繍を施す老女。生きている世界は現実なのか夢なのか。確かなのは、自分にとってそれが真実だと言うこと。

著者プロフィール

1962年、岡山市生まれ。88年、「揚羽蝶が壊れる時」により海燕新人文学賞、91年、「妊娠カレンダー」により芥川賞を受賞。『博士の愛した数式』で読売文学賞及び本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。その他の小説作品に『猫を抱いて象と泳ぐ』『琥珀のまたたき』『約束された移動』などがある。

「2023年 『川端康成の話をしようじゃないか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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