老子の現代語訳で知られるタオイスト加島祥造の本。
講演録と新聞社によるインタビューを再構成したものである。
そのため、平易でやわらかい言葉で、タオの考えが語られている。
(同氏の文はいずれも基本的にやさしく語りかける文体ではあるが)
タオイズムのお話とあわせて、伊那谷での静かで満ち足りた生活が語られる。
夜明け、三千メートル級の山々の頂きが輝き始め、次第に広大な器のような谷間の空間に光が満たされていく、朝。
伊那谷の夏の夕方の涼しさ。夕方にしか咲かない夕菅の花の香り。
そういった伊那谷の自然のリズム。その静けさと大いなること・豊かさと共にある生活の喜びが感じられる。
加島氏は、東洋思想や哲学の概念を、英語に置き換えることを常としている。実際、それによって、言葉の実質や概念の輪郭がはっきりし、より理解し易い。
マインドとハート。テンダ―ネス、lonely とalone … 。
そして、今回以下のことを説いた一節がこころに触れた。
(概要)
人は長生きをするものだ、なぜなら、自分のなかでいちばん深く思っていたことが実現される方向に行くのだから。浅い意識のところで意図的に考えるよりも、心の奥深くの無意識にあることに気付いてゆくほうがいい。自分のライフをゆっくりと長く生きていくほうがいい。
なるほど。
そして、私も、そのように本質的なることを感じることができる余裕を持って生きたいと思う。