公共空間としてのコンビニ 進化するシステム24時間365日 (朝日選書 847)
- 朝日新聞出版 (2008年10月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022599476
作品紹介・あらすじ
1日3400万人が利用、総売上は国家予算の1割という巨大産業、コンビニ。徹追した商品管理システムを発達させ、わずか30年あまりで商習慣、食文化、ライフスタイルなど日本の文化を大きく変えた。防災から納税、公共サービスの提供まで、激減する役場、交番、金融機関の代わりに、いまやコンビニは「公共」機能も担いつつある。これらサービスを受けるいっぽう、「なんとなく」「夜も明るいから」「癒されるような気がする」と買い物以外で訪れる利用客が増えている。高齢化が進む社会でコンビニはどう変わっていくのか。進化し続ける精緻なシステムを膨大なデータから描き出し、明日のコンビニ、日本社会のゆくえを見つめる。
感想・レビュー・書評
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コンビニについて詳細に調べ上げられた名著。コンビニでは、1日に食品撤去9回、宅急便集荷5回、おにぎり搬入3回、おでん洗浄2回など、思った以上に多い。共同配送、温度帯配送、小口配送がコンビニを発展させた。結論として、「コンビニは便利で重宝だが、無駄を生み、人間を怠惰にし、わがままにし、夜型生活を助長し、健康を害しかねず、文化、ことに食文化を崩壊させる一面を否定できない。」としている。
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2015年7月17日読了。ビジネス的側面ではなく、「公共空間としてのコンビニ」、人々がコンビニに何を求めていてコンビニは人々に何を与えているのか、日本にとってコンビニとは何なのかという点を掘り下げた本。著者の周囲の人のコンビニ観から飛躍して「日本人とは○○である」と結論づけがちなところは気に入らないが、コンビニの24時間を観察した記録など、面白い記事も多い。「コンビニに『癒し』を求める」「用もないのにコンビニに行く」という行動が若年層だけでなく高齢者にも見られるというのは興味深い。自分も平日なら一日1回以上はコンビニに行っているし、確かにコンビニに行くと「落ち着く」し、百貨店やスーパーなどの店は落ち着かない感覚がある、のは指摘されてはじめて気づいた。コンビニが不寛容・余裕のない日本を作ってきた側面もあるし、そのような日本がコンビニを求めている側面もあるのだろう。
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久しぶりに返却ポスト処理をしていて出会った本。
少し古いがコンビニの1日や日本で発展していった様子が分かって面白い。 -
やや学術的ですが、コンビニが今までに重ねてきたノウハウや時代背景を解説。
・単独世帯と夫婦のみ世帯の増加
・POSシステムの構築
・気象情報を発注作業に活かす
・立地条件と施設条件の組み合わせ
・電子マネーの導入
・買いたくなる店内レイアウト
・夜更かし生活の増大
・中食文化の隆盛
などなど。 -
コンビニに関するリサーチと
ルポタージュ。
とはいえ、漠然とまとめているわけではなくて、
ひとつ軸がある。それは
表題のとおりの
「公共空間」
というものである。
著者はあとがきに記すように
「私の関心の中心は『流通』にはなく、むしろ
『現代日本社会』や『日本人の意識と行動』にある。」
という文化・社会・経済への探究心に
基づいて本書を記しており、それが
おもしろさに繋がっているように思う。
1章のコンビニ24時というのは
時系列で、ある1店舗でどういう動きが
起きているかを記録したものだが、
いやいや、興味深い。
もちろん、どういう場所のどの店舗かで
だいぶ違うとは思うけれど、
実に「なるほどなぁ」というところに満ちている。
小売業は変化対応業である、
とはセブン&アイの鈴木敏文氏の名言であるが、
まさにコンビニは現在それを最先端でもっとも大きな規模で
おこなっているのだなぁと実感させられる。
本書は2008年だが、そこから現在4年経って、
さらにいろいろな変化が社会に生じ、
コンビニはそれをすくいあげているように思う。
たとえば、地方の買物難民の人に向けての
セブンイレブンの移動販売車とか。
さて、コンビニはアジア各国で各チェーンの
進出が目立つようだが、
これはやはり文化、安全といった事由が
大きいのだろうな。
アメリカやヨーロッパではあんまり親和性が
良いとは思えない。
21世紀はアジアの世紀と言われるが、
それはすなわちアジアの人々が消費者として
大きなパワーを発揮するということであり、
であるならば小売・サービス業の充実は
究極の現場、ということになる。
そうなると、今日の日本型コンビニ業というのは
おおいなる可能性を持っているように思う。
人件費などの問題でコンシューマー向け製造業は
すっかり斜陽の日本であり、
まだそこにこだわろうとする経済人も多いけれど、
このコンビニのすごさを見るにつけ、このあたりで
成功モデルを築いて各国に展開するような思想に
乗り換えていくことをもっと進めたほうが
うまくいくんじゃないの、って気はした。
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目次
第1章 コンビニ24時(コンビニエンスストアとは何か
あるコンビニの24時 ほか)
第2章 なぜコンビニは日本社会に流行るのか(日本社会の変化に対応
情報と心理を読む創意と工夫)
第3章 コンビニが日本社会を変える(日本人の暮らしを変える
日本の産業を変える)
第4章 曲がり角を迎えたコンビニ(「拡大」路線と「深化」路線
中高年客と女性客への拡大 ほか)
第5章 明日のコンビニ、または「暮らしのネットワーク」の拠点(「どこでも同じ」から「どことも違う」へ
食品廃棄と二酸化炭素排出 ほか)
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Webレビューなど
http://kuramae-japan.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/24365-cf4a.html
http://100satsu.cocolog-nifty.com/blog/2009/07/24365-cf4a.html -
コンビニの進化に関する論点はほとんど網羅してる好著かと。
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立地条件と販売動向の相関関係をしゃぶりつくすコンビニのオペレーションが詳しく調べられている。
ただ、あまりにも進歩の速い業界だけに、既にデータが古い観もあり。 -
コンビニにお世話になるのは東京などに出張したときぐらいで、日常の生活ではときおりお菓子を買いにいくぐらいだ。ところが、コンビニは現在、個食化社会の需要にマッチするともに、金融機関のかわり、防災の拠点ともなろうとしてきている。その裏には、利用者に対するたくまぬ調査と徹底した商品管理システムを発達させた努力がある。おにぎりやおでんを売ろうとしたとき、大きな反対があったというが、こうした常識をやぶって新たなものを生み出す発想は大いに学ぶ必要がある。しかし、コンビニは一方で人々にあまりに大きな便利さを与えた。本書はコンビニのもつ積極面を紹介するとともに、その問題点も指摘している。
著者の鷲巣力氏によれば、コンビニは宅配便と自動販売機のほぼ同時期に広まったものだという。ちなみに、氏にはすでに、イトーヨーカドーグループの活動をとりあげた『コロンブスの卵たち』をはじめ、『宅配便130年戦争』『自動販売機の文化史』がある。もちろん、これらは今後も進化していくであろうが、本書によって三つのテーマが完成したことになる。