俳優になろうか (朝日文庫 り 2-1)

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.50
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022607034

感想・レビュー・書評

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  • 私が、笠智衆が出演していた作品で初めて観たのは、ベタだけれど「東京物語」だったか。
    目立たないのにすごく印象的だと感じたのは、他の俳優にないあの寛容な微笑みと、何も発しない「間」が絶妙だったからか。
    それにしても、東山千栄子と実は一回りも歳が離れていたのはびっくりだ。さすがの老け役の成せる技だからか、小津マジックだからなのか。

    私が小さい頃は、まだ明治生まれの人が周りにいた。
    年齢のせいもあっただろうが、どこか荘厳で、いろんな経験を積んだことからの自信を感じさせ、でもその中に寛容さと優しさがあった。笠智衆もそういう明治の男を感じさせる、それが安心感なのかもしれない。
    彼の書く文章にもそれが滲み出ている。本書の最後に、演じる上で、自然であることが大事であると気づいた、という記述がある。少なくとも私が観た小津映画の出演時から、本書に滲み出る人柄にぶれるところを感じないので、ずっと自然体で演じてこられたのだろう。

    少し残念であったのは、原節子のエピソードが書かれていなかったことだ。撮影時のみ一緒だったので、それ以外は関わることがなかったように書いておられたが、あれだけ共演していたのだから何か思い出があってもよさそうだ。敢えて書かなかったのかもしれない。

    また笠智衆の出演作品を見直したい。
    良い読書だった。

    • Straussさん
      初めて私が、笠智衆が出演している映画を観たのはベタだけど「東京物語」だったか。
      東山千栄子が、笠智衆よりも一回り上だったとは気づかなかった。...
      初めて私が、笠智衆が出演している映画を観たのはベタだけど「東京物語」だったか。
      東山千栄子が、笠智衆よりも一回り上だったとは気づかなかった。これが老け役の成せる技か、小津マジックなのか。
      笠智衆の文章は、これまで観てきた小津映画に出てくる笠智衆が演じる穏やかな、無駄口のないキャラクターそのままである。
      最後に本書で、演技というのは、自然さが大事であることを悟った、とご本人が書いているが、きっと自然体でおられたのではないかと思った。たまに評価されたことなど書き添えられていても、全く嫌みもない。穏やかだ。

      私が小さい頃、明治生まれのひとたちが存命だった。どこかどっしりとした、荘厳さと、何が色々経験したから故の自信と、寛容さがあった。笠智衆も、映画の中でそれを感じるところがあったが、本書の中では自己を俯瞰し、非常に謙遜が多い。

      少し残念であったのは、たくさん共演していた原節子とのエピソードが皆無であったことか。撮影時のみ一緒で、それ以外の場ではあまり関わらなかったという記述のみだ。そうはいっても何があるだろうと思うので、もしかすると敢えて書かなかったのかもしれない。

      良い読書だった。
      笠智衆の出演作品をまた見直したい。
      2023/02/08
  •  
    ── 笠 智衆《俳優になろうか ~ 私の履歴書
    198705‥ 日本経済新聞社 19920301 朝日文庫》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4022607033
     
     新しい環境に身をおいたとき、初対面の人に自分から話しかけますか、
    話しかけられるのを待ちますか。
     
    https://q.hatena.ne.jp/1625471642#comment(20210706 02:01:42)
     
     招かれざる人々の作法 ~ 長幼の序・先輩同輩後輩・先着順 ~
     
     紳助や、さんま、人志、アッコらが「挨拶が一番」と云うのは、苦い
    経験がもとになっている。一つは、うまく最初に挨拶できなかったから。
     二つは、売れてからも、挨拶できない新人が、次々に消えていくから。
     
     パーティなどで新顔が登場したときは、主催者か司会者が紹介して、
    みんなが拍手で迎える。誰にも紹介されなければ、新顔の方から一礼し、
    自己紹介する。
     
     それでも相手にされなければ、いちばん親切そうな人に話しかける。
     たとえば、銭湯に行って、先客がいれば「こんばんわ」と声をかける。
     先客の方から「いらっしゃい」とは言わないからだ。
     
    …… 毎日、大部屋で待っていたが、一向に仕事がない。俳優仲間の誰
    かが「監督に愛想よくしなければ」というので、ある朝「お早うござい
    ます。今日は良い天気ですね」と挨拶したら「いま忙しい」と叱られた。
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4532094429
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    ── 笠 智衆《俳優になろうか ~ 私の履歴書
    198705‥ 日本経済新聞社 19920301 朝日文庫》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4022607033
     
    ── 《Guess Who's Coming to Dinner 19671212 America 19680406 Japan》
     
    ── 笹沢 左保《招かれざる客 196003‥ 講談社 20080909 角川文庫》19‥0330
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/433474477X
     
    (20210706)
     

  • ★3.5
    1950年代~1960年代の日本映画が好きで、その時代の俳優の中でも好きな俳優のひとり。朴訥とした優しげな佇まいが大好きで、たまたま観た映画に笠智衆が出演していると、思わずニコニコしてしまう。そして、笠智衆=小津安二郎監督作品なイメージがあるけれど、本人も語っている通り、木下惠介監督作品での出演もなかなか多い。笠智衆出演作品では、小津監督作品「東京物語」「秋日和」、木下監督作品「カルメン故郷に帰る」「陸軍」がお気に入り。それにしても、佐田啓二が事故死した前日に一緒にゴルフをしていたなんて…。

  • 久しぶりに読み直してみました。

    俳優笠智衆の回顧録で、小津、木下、成瀬、清水、稲垣等の日本映画黄金時代の名監督達の逸話が興味深い。

    原節子のことも少し書かれていて、「あんな立派な女優は滅多にいない」「演技も上手くて小津先生も感心しておられた」との評価。

    ただ、「…東宝の作品では、それほどにも思えなかったが…」と書かれていたのが面白い。これは、名指しこそ避けているが、黒澤明の「わが青春に悔いなし」あたりを言っているのだろう。

    あの作品の原節子は、鬼気迫る表情になっていて、あまり良くなかったね。これは黒澤演出が女性の情感を出すのに向いてないことによるもので、原さんのせきにんではないけどね。

  • 残念ながら私はこの方を
    詳しくは知りません。
    ですが、「寅さんシリーズ」は
    知っています。
    冒頭の夢オチが好きでしたが(笑)

    俳優さんとしては珍しいタイプでしょうか。
    なかなか芽が出ず、
    一度は俳優の道をあきらめています。
    でも、戻ってきていますが(笑)

    そして珍しいことに飲めないタイプだそうです。
    人と関わる仕事でそれはつらいですよね。
    決して秀でたものがなくても、
    彼にはきっと、監督を惹きつける
    魅力があったのでしょうね。

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