- Amazon.co.jp ・本 (305ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022611093
作品紹介・あらすじ
敗戦後三十年間戦い続け、1974年3月、フィリピン・ルバング島から帰国をはたした元陸軍少尉・小野田寛郎。度重なる捜索隊の呼びかけにも応じず、「残置諜者」として上官の命令を遂行し続けた日々、戦友の死、帰還、そして家族との再会…。祖国生還の恩人・鈴木紀夫の死を機に綴った感動の手記。
感想・レビュー・書評
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著者小野田氏、哀悼読書。
第二次対戦が終わっても、終戦を信じずフィリピン・ルバング島で30年近く戦闘活動をしていた実話。
終戦は敵の謀略だと思っていて、戦争が終わり、日本全土が占領されていても、日本軍は中国大陸に本部を移し、戦っていると思い込み、家族が呼び掛けに来ても「アメリカに言わされているのだ」「軍人として家を出た以上、家族よりも上司からの命令を優先する」と姿を表さない。「作戦中止」のビラも少しの誤字、不自然さを見つけては信じない。
小野田氏の思い込み力もあると思うが、色々な人の説得にも耳をかさず、哀れだとは思うが、感覚の違いに笑ってしまう。
とうとう「死亡報告」が出される。
しかしながら小野田氏は、生存を仲間に知らせるために、作物に火を着けたり、テリトリーに入った住人を脅したり。
「日本が失ったものを、小野田さんが持っているのではないか」と興味を持った一人の旅行者が、彼に会いに行き、話し合う。その後、彼が上官を連れてきて、終戦の命令を受け入れる昭和49年3月9日、終戦から28年7ヶ月の事。
日本に帰ってきた小野田氏は、「強風に吹き抜かれまいと一生懸命に耐えていた雨戸が、強風が止むと、自分の耐えていた力でかえって戸外に転がり出す事があるが、その感じを受けた、自分に愛想がつきた。」と綴っている。
帰国後、敗戦後30年たっても、軍人精神を持っている事から英雄視されたり、逆に忌まわしい戦争の亡霊が表れたと疎ましく思った方々もいて、メディアに追い回されてしまう。 -
ううむ。切ない。
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最後に小野田さんは記している。
この島で、私はいったい、だれのために、何のために、三十年も闘ったのか。
この言葉は重い。。
帰国後の彼の人生は流石だった。