街道をゆく 36 (朝日文芸文庫 し 1-38)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (383ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022640819

感想・レビュー・書評

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  • 神田の大学を出て、神保町の会社に就職したが、知らないことがたくさんあって勉強になった。聖橋の名前の由来、神田に大学が多い理由、神田に縁のある幕末や明治の人たち。読むと、神田や本所あたりを散歩したくなるような本である。

  • 「世界に江戸ほど火事の多い都市はなかった」で始まり、深川木場につながる巧妙さ。『江戸っ子の成り損ないが金を貯め』腕さえあれば貯えは要らない職人気質、むしろ無い方が親方は勤勉が期待できる。落語からその生活ぶりがわかる。 大阪生まれの司馬には江戸っ子への憧れがあるようだ。 旗本八万を誇っていたがペリーが来た時、江戸湾に侵入され無抵抗の醜態への失望が倒幕につながった。男は勿論、一身の利得よりも恥の無い行動を旨とする。勝海舟は異色の人材だが典型的江戸っ子。結果、世界史に例の無い開国開放政策へのすみやかな転換成功例

  • 半年かかってようやくお借りした分読破、こういう読み方をするモノではないですな、このシリーズは。
    さておきこの巻はある意味この作家の特徴がよく表れていると言えるかもしれない。つまり、色々蘊蓄はあるんだけれども、詰まるところ好きな人への思い切りの良い惚れ込みよう。そこに愛を感じるんじゃないかな、この作家が好きな人達は、底深くで。

  • 東京に住んでいて、東京の町を行き来するのが嬉しくなる一冊。

    「街道をゆく36 本所深川散歩・神田界隈 / 司馬遼太郎」

    1995年頃の執筆のようです。

    #

    いちばん忘れられない一文。

    「町としての風格、品格みたいなものっていうのは、老舗と呼ばれる店や商売屋が、どのくらいあるかによって決まるわけだけど…」

    というような一節。(まんまではなく、うろ覚えです)

    当たり前のように書かれていて。
    ナルホドなあ、と。
    老舗など、ほぼないような新興住宅地に住んでいる身には、一寸哀しくもなりますが(笑)。
    でも、それだけが絶対ではないだろうけれど、その指摘には、ぐぅの音も出ないなあ。
    まあ、出来ることならば、そういう町の在り様みたいなものは、生活者として応援したいし、次に渡して行きたいものですね。

    (でも大概は。老舗っていうのは値段が高かったりして、応援しようにも、あまり当方には応援を求めてらっしゃらないことが多いのですが…)

    良心?としては、「できれば、将来には老舗にもなりうるような店、個人商店を応援したいなァ」と思いながら。
    親譲りの資産もなければ、際立った収入も無い、忙しない賃金労働者としては「あー、チェーン店、やっぱり便利やわあ」というのが実際なんだよなあ。

    ヨーカドーからの帰り道を歩きながら考えてしまいました。とかく、この世はむつかしい。

    #

    まあでも、司馬さん自身、お金には不自由していなかっただろうけれど、住んでいた街自体は、大阪の中でも老舗がどうこう言うような地域ぢゃなかったんですけれどね。東大阪だったか。
    だからまあ、「老舗が多い街に住んでるもんね。そこに住んでることが、文化的なんだもんね」という如き低レベルの主張では、もちろんのこと、無い訳ですが(笑)

    #

    以下、ざっくり備忘録。
    もう読了してかなり経ってしまい。

    #############

    本所深川散歩編は、隅田川沿いの話になります。

    江戸という町が、徳川家康の入府によって、極めて人工的に作られた町である、ということ。
    そのために、いろいろな工夫がある。
    火事も多い。材木が大量に必要だ。職人も大量に必要だ。
    輸送には川が便利だ。火事のためには市街地を広げなければならない。空地を作らなくてはならない。
    隅田川の東側も開発しよう...みたいな、流れですね。

    そういう暮らしの発達に伴って、寺社が出来たり、火事と闘う逸話だったり、町火消ってなんだっけだったり、「町内のカシラ」と呼ばれる人の実態だったり...

    興味の尽きないおはなし。

    司馬遼太郎さんは関西人。
    この1篇はなんていうか、「ロンドンっ子のイギリス人が、イギリス人たちがアメリカを頑張って開拓した話を描く」みたいな感じですね。
    司馬さんの取り上げ方が、つまり「江戸という町の創世記」に関わっているので、単純な関西との優劣の比較ぢゃなくて、わくわくする開拓物語を愉しめる感じでした。

    #

    神田散歩。

    これまた面白い。なンだけど、「本所深川散歩」の場合は、「隅田川とその周辺、寺社とか」という、「執筆当時にも残っていた風景」があるわけです。
    ところが、神田の場合は、ほとんどもう、そういうよすがは残っていないんですね。
    それは司馬さんも言及しています。
    だから、司馬さんが神田を歩いて「何にも残ってねえやんか」とぼやきながら、「神田っていえば、こういうお話があった土地だよね」と語る感じです。

    神田はとにかく、学問の町だったし、学習塾の町だった。
    そこから本屋の町になった。
    本屋、出版の町としての神田への司馬さんの愛情がたまに顔を覗かせて、愉しい限り。
    高山本店、という老舗の古本屋の話をこの本で楽しんでから、実際に高山本店に行って本を買える。
    東京に住んでるのも悪くないな、と。

  • 読みながらこのあたりをめぐるとよりよい。

  • 2015年2月

  • 14/8/10読了

  • 神田界隈編だけ読んだ。就職活動で東京の出版社を受験しに行く中で、神田や神保町という場所が好きになったからだ。その歴史や文化についてもっと深く知りたいと思いこの本を手に取った。

    たぶん、私が神田の町を好きなのには二つ理由がある。
    一つはやはり学問・文化が自然と集まる場所であること。大学や書店、出版社、古本屋、少し北に行けば上野公園など。学研都市のように後から計画して学問の集まる場所として設計された町とは違う魅力がある。何か、昔々から教養や文化を引き寄せる引力のようなものが働いているようで面白い。

    もう一つは神田明神だろう。神保町界隈に神田祭の告知ポスターがあちこちに貼ってあるのを見て「人と人とのつながりや地域のまとまりがある場所なんだな」と感じた。神田祭という日本三大祭りの一つでもある祭りや神田明神という宗教的な場所があることで不思議な一体感が神田一帯にあるように感じた。

    内容の話。
    「神田界隈は、世界でも有数な(あるいは世界一の)物学びのまちといっていい。江戸時代からそうだった。」と本文中にもあるが、やはり物学びがあつまるようになった経緯が面白いと思った。多くの武士が江戸に住んでいた。そして武士の子弟に学問と武芸を教える私塾も自然とこの町に集まったということらしい。
    日本史の授業で学んだ昌平坂学問所や湯島聖堂もこの町にあったのだと知って驚いた。夏目漱石など神田界隈で学び世に出て行ったたくさんの偉人達の人生が交わる場所に神田があったのだと思うと感慨深い。

    有名人が実は神田で活躍していたと知って驚いたといえば、正岡子規と『日本』もそうだった。ジャーナリズムもこの町に引き寄せられて育っていったのだろうか。

    読みやすさの話。
    司馬遼太郎の他の小説に比べるとまとまりのなさを感じる。思考があっちこっちに飛んでいくのだ。なので「話がそれてしまったが」「話を元に戻そう」とやたらと出てくる。しかしむしろこれがこの作品の面白い点だろう。司馬の語りを聞きながら一緒に街歩きしているような感覚になる。それよりも、文脈に従って歴史上の人物の逸話が次から次へとでてくる司馬の博識さがやっぱりすごいなーと思った。

  • 京都奈良に比して歴史の浅い江戸東京。しかしこの400年余り日本の中心であったことで濃密な歴史が降り積もった。話題は多肢に亘り本所深川は材木商・赤穂浪士・橋など。神田は文学・学校・古本屋。古典落語に原風景を求めつつの散歩。

  • 時空を旅する司馬さんの真骨頂ではなかろうか。

    お江戸が誕生し、明治に移行するあたりがとっても深く描かれている。

    神田界隈の法律学校の勃興が明治、大正、昭和における人材供給の「場」となった。

    平成の世の中、IT時代となった日本で、今後、どのような舵取りがされるのか、いまだに不透明である(涙)。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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