街道をゆく 35 オランダ紀行 (朝日文庫 し 1-91)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 106
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022644893

作品紹介・あらすじ

ときあたかも1980年代末の土地バブルに踊る日本をあとに、「国民が国土を創造した」オランダを訪ねる。鎖国時代の日本にとって、暗箱にあいた針穴から射しこむほどのかすかな外光がオランダだったと著者はいい、プロテスタント精神の発露たる商業活動が育てた自律的、合理的な国民性をゆく先々で実感する。さらに、レンブラントやゴッホの絵画への著者の深い理解が共感を呼ぶ。

感想・レビュー・書評

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  • この本を持ってオランダへ。楽しかった。

  • あまり読まない司馬遼太郎だが、台湾に続く2冊目の海外編を読む。
    紀行部分と美術史部分に折り重なっているが、私は紀行部分が面白かった。
    台湾の方が印象鮮やかだが、こちらもおすすめの「街道をゆく」だ。

  • 先に読んで現地に行くべきか、後から読んで噛み締めるか、微妙なところではあるが、結局もう1回行けば良いという陳腐な結論に至った次第。
    日本との関係を念頭にオランダを旅するという発想は全然なかったし、その意味で本エッセイは新鮮でもあります。そして奥様の「ゴッホさんは疲れるねぇ」なる感想、問答無用で同意します。

  • 「街道をゆく・オランダ紀行」。恐らく1989年くらいの発表のものです。司馬遼太郎さんの、独特な、「旅行から始まる思考エッセイ」とでもいうべきか。

    最近は、「街道をゆく」の海外旅行版を読むのが好きです。
    なにせ、司馬遼太郎さんは長編小説についてはほとんど読んでいます。
    司馬さんの長編小説は、(例外はありますが)日本、日本史を舞台としています。
    ソレは、もうかなりよんぢゃっていますので。
    むしろ、司馬さんが語る「西洋」「西洋史」が新鮮で面白いのです。

    という訳でオランダ編。
    実は、読了してかなり日が経っていまして、記憶が薄くなってしまっているのですが...

    オランダの歴史、という窓口から、イッキに欧州史の本質まで垣間見せてくれる、いつもながら恐ろしいスリリングかつ興味深いエッセイ。

    なんですが、この本で面白かったのは、「ああ、司馬さんが、オランダ好きなんだなあ」というかわいらしさ。
    というのは、もっと明確に言うと。

    「司馬さんはレンブラントが好き」
    「司馬さんはゴッホが好き」
    「司馬さんはジョルジュ・シムノンが好き」

    だったんですね。ジョルジュ・シムノンさんは、実はオランダではなくて、隣国ベルギー出身で、フランス語で小説を書いて大成功した20世紀の人物です。
    なんといっても「メグレ警視シリーズ」の作者、というと手っ取り早い人です。
    このシムノンさん、というか「メグレ・シリーズ」は、僕ももう25年来の大ファンなんです。
    それで今回「司馬さんも、メグレ警視シリーズの大ファンだったのか!」ということを知って、実はそれが何よりも嬉しくなってしまいました...

    #

    「蘭学事始」。杉田玄白と前野良沢の「解体新書」を話のまくらにして。

    オランダの絵画、それに見える合理主義。
    ローマ帝国とキリスト教(カトリック)の文化。
    だがそのカトリックとオランダの商業主義の相性の悪さ。そして中世後期のプロテスタントへの指向。
    もともとが低湿地というハンデから、重商主義へと移行する国民性。
    そして、それが故のカトリック的文化からの距離感。ユダヤ差別の少なさ。
    話は「アンネの日記」から、イギリス発祥の清教徒(ピューリタン)へと自由自在。

    一方で、金が全て体質、の悪しき部分にも言及しながら、また歴史へ。
    ニシンの保存食化が呼んだ、貿易の近代化。なぜだろう?保存食、香辛料の魅力から、東インド会社へ。
    そして、三浦按針=ウィリアム・アダムズ。

    そして、隣国ベルギーに、司馬さんの旅が入ります。
    ここでは、素朴に「シムノン好きなんですよ」という思いが可愛い。

  • オランダに行くので読んでみた初司馬遼太郎。老後の楽しみにと司馬遼太郎には手を付けていなかったのだけれど、導入で咸臨丸がオランダ製であることをもってきたりとか、当たり前だけれど上手だ。脱線多めでありながら、うんちく話が面白くて楽しく読めた。黄金時代中心の記述なので、とっかかりとして。

  • [15][130620]<m市 旅行に向けて泥縄の予習その2 オランダについて、やわらかくとっつきやすくコンパクトでおもしろい。

  • 日本が鎖国して時代にも通商が認められた元祖商人資本主義の国オランダ、英仏西独と次々に戦争を仕掛けられても、レイシズムに陥らなかった、そんな偉大なる小国主義を著者が旅行し、その魅力を生き生きと描いています。オランダを旅行する前に必読書でしょう。それに、あんな小さな国なのにどうしてサッカーが強いのかというのも頷けるような気がします。

  • 最近、『街道をゆく』、シリーズを集中的に読んでいますが、この回が一番おもしろかった。国内物と海外物は、なんだか趣が違うと思う。オランダの風土、国の成立ち、オランダ人気質、がよくわかった。以前から、オランダって変わった国だな、と思ってましたが、その理由がわかった。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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