むすび橋 結実の産婆みならい帖 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 87
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022649966

作品紹介・あらすじ

舞台は幕末の江戸、八丁堀~日本橋界隈。21歳の山村結実は、産婆見習いとして、師匠である祖母の家で、同じく見習いのすずとともに寝起きしている。今も昔も、出産は人生の縮図だ。歓迎されてこの世に生まれてくる子もいれば、若すぎる妊娠、妻子ある人の子の妊娠など、望まなかった妊娠もある。出産で亡くなる母子がいまよりずっと多かった時代、いろんな事情を抱えながら命がけで産もうとする女性たちに、自分は何ができるのか? 命が生まれる現場で、葛藤しながら成長していく女性の姿を描く感動作。書き下ろし。

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった。
    優しいお話、大好き。
    ブクログのトップページ、あなたへのおすすめに
    出てきて読んだ本…
    どうして私の好みがわかったのか、不思議なくらい笑

    産婆見習いとして働く結実、
    祖母の真砂が産婆のお師匠さん、
    家業は医者だが、実の母ではなく、継母は叔母、
    母の死因は自分に責任を感じ、
    産婆となる道を選んだ。

    出産を通した江戸の人の暮らしが綴られながらも、
    母となる人の思い、父の思い、
    家族の在り方、祖父や祖母、友人…
    その心の有り様は今とどこが、そんなに変わる
    だろうか。
    気丈にも真面目に誠実に生きる人々の姿勢は、
    どんな時代であろうとも、やはり人の心に響く。

    登場する数々のお産と母子の話は、
    どれひとつとして同じ話はなく、
    胸に迫る。1話1話、無事に産まれて〜と
    願わずにはいられない。
    なかでも「卵ふわふわ」が一番安堵した。
    嫁ぎ先での扱いが不幸で、
    産後の回復も悪かったふくと娘のさとが心配だった。

    第一章から登場していて、気がかりだった。
    源太郎のセリフが良かった。
    「考えて答えが見つかるなら良いですが、
    答えが出ないことをずっと思い悩むとその毒が
    自分にまわっちまうことがあるんですよ。
    だから、答えの出ないことはなるべく考えない
    ようにしているんです。」

    結実とすずの関係性も良かった。
    「同じような生き方を求める人とは、いつどこで
    出会っても、打ち解け合い、親しみを分かち合える
    ものなのかもしれない。同様に、幼いころから長い時間を共にした友でも、環境が変わり、興味の方向が異なれば、話が噛み合わなくなることもあるだろう」
    まさにその通り、結婚や出産、育児や介護
    を通して、正直、女なら少なからずみんな
    経験したことがあるのではないだろうか。

    弟の章太郎が医者の後継ながら、絵が好きという
    ところもすごく応援したいポイントだった。
    まだこの時代、お家の家業、長男という制約は
    キツイだろうに、章太郎の絵を描く姿、
    エピソードは実にまっすぐで伸び伸びと感じられる。
    読者をも味方につけるような純真さに打たれる。
    このあと、どうなるか…

    第5章、むすび橋も良かった。
    子どもが欲しいと思っている夫婦からの預かり子…
    という考え方、救われたね。
    稲に実るのは米だから〜よねと名付けられた子が
    幸せでありますように。とまた私も祈った。

    源太郎のセリフで響いたのは
    「書いておけば考えられる」
    医療を施した患者について、源太郎は記録を取っていた。帳面に記録し、大事にしていた。
    結実にもその思いは通じ、倣った。
    それだけ1人1人の患者に真摯に向き合ったという
    証拠だと思う。若い2人がこれからどう成長していくのか。この2人の恋路はどうなるのか…
    楽しみに次編を読みたい。楽しみ!

  • ありゃりゃ

  • 結美の産婆みならい帖
    結び橋後に発刊した2冊読んでおり、ようやく初巻に
    新鮮な感じで読み終えた
    もう一度順番で読んでも良いかな

  • 母の死によって産婆を志した結実。ベテラン産婆の祖母のもとで修業する姿は好ましく成長を見守っていきたいシリーズ。
    だけど出産以外での結実の言動が少し子どもっぽいかも(源太郎に弟と比べるようなことを言って発破をかけるところとか)この先、大人びてくることを期待。
    時代が幕末じゃない方が良かった気もします。幕末は好きですが、この小説に関しては上手く融合しているように思えなかった。お産の話だけに集中していた方がもっと面白かったんじゃないかな。

  • 江戸時代の女性の仕事として確立していた『産婆』と、それを目指す修行中の女の子たちが主役。

    安政の大地震でお腹に妊った母親を亡くした結実。
    祖母は腕利きの産婆、真砂。
    弟子仲間にすずがいる。

    父親は医師、母は実母亡き後育ててくれた叔母(母の妹)絹。父と絹の実姉が弟章太郎。
    父の内弟子は頼りになる源太郎。

    仕事を通じて様々な環境の女性に出会い、考えたり悩んだりその成長ぶりが物語。
    楽しみなシリーズになれば。

  • 産婆をテーマにした時代小説、目新しく感じて読みました。主人公の結実の成長していく姿と、その背景にある当時の時代背景(当時の出産育児など)をあわせて読んでいく中で面白さを感じました。自分が出産経験者だからよりそうだったかも。

  • 幕末を舞台にしたお産婆見習いのお嬢さんが主人公の連作短編集。
    動乱の時代でも市井の人々の日々の暮らしがあり、新しい生命が生まれてくるのだな……と感じつつ、幕末設定がお産婆見習いの物語を散漫にしていたのでこの時代設定必要だったかな?とも思ってしまいました。
    姑とその息子(嫁にとっては夫)が産後の肥立ちが良くないお嫁さんを赤子共々薄暗いジメジメした部屋に放置して、滋養のある食事もさせず、医者に診させることもせず、放置し続けるのて殺人だよね。
    家族という檻の中では、このような酷い仕打ちがまかり通ること、また人間が人間に対して躊躇いなくできてしまうことがリアルで読んでいて辛かったです。

  • どくだみはこの場所が好きだから、これだけ茂っているんですよ。

  • 見習いだからかあまり産婆メインの話でもなく、結実の成長物。
    自分の仕事はしっかり決めてるわりに周りの人や恋に対しての行動が幼くちょっと違和感があります。実在人物も出てきたりするんだけど、そこよりもうちょっと産婆の仕事関係を詳しく描いて欲しかったかな。

  • 地震で身重の母を亡くした結実は産婆になろうと決意し、十二歳から祖母の元で修行に励む。

    全ての子どもが望まれ愛されるわけではない現実と、それでも子どもを愛し産み育てる者もいる現実とを描く点は好ましい。「運を天に任せるしかないがそれでもきっと生きていることは尊い」という作者のメッセージが伝わってくる。

    ただストーリー展開が早く、出産や育児に纏わる苦しみと悲惨、喜びと幸福がバランス良く描かれているとは言えない。激動の時代を舞台にしながら、その必然性もいまいち伝わってこない。ラストも予定調和という印象が否めない。悲惨になりすぎない話が読みたい人にはお薦め。

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著者プロフィール

1956年、山形県生まれ。お茶の水女子大学文教育学部卒業。女性誌を中心にライターとして広く活躍。著書に「結実の産婆みならい帖」「読売屋お吉甘味帖」「女房は式神遣い! あらやま神社妖異録」シリーズ、『妻恋稲荷 煮売屋ごよみ』などがある。

「2023年 『桜色の風 茶屋「蒲公英」の料理帖』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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