孫は祖父より1億円損をする 世代会計が示す格差・日本 (朝日新書 171)
- 朝日新聞出版 (2009年4月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022732712
作品紹介・あらすじ
いま3.3人で1人の高齢者を支えているが、2030年ごろには1.8人で1人を支えることになる。世界一の借金をかかえ、このシステムでやっていけないことは明白だ。選挙年齢を引き下げて、政治の決定権を若者に移し、高齢者は低い給付でガマンする、-それが子孫への思いやりではないか。
感想・レビュー・書評
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この本の著者である島澤・山下氏は、私の親の世代と私の子供の世代を比較する(世代会計)と、2世代の違いで1億円の差が生じていると結論づけています。
今も昔も同じ通貨である円で保険料を払って、年金を受け取っていたので、その差額をインフレを考慮せずに議論して良いものかと思っています。
この著者によれば、そのインフレ率も考慮して1億円の差があると本の中で解説しています(p35)が、その根拠が数字で示されておらず大変残念に思いました。その内容を具体的に示した本があれば、是非読んでみたいとこの本を通読して思った感想です。
以下は気になったポイントです。
・2005年現在では、3.3人の現役世代で一人の高齢者を支えているが、30年頃には1.8人で一人を支えることになる(p29)
・2005年版の経済財政白書によれば、年金・医療など公的部門を通じた受益と負担の関係は、60歳以上世代は6500万円の受取超過だが、20歳未満では5200万円の負担超(p30)
・2005年時点で70歳は、生涯を通じて自身で払った保険料の8.3倍の年金を受け取れるが、40歳~20歳ならば2倍台、これらの数値は物価の影響を除いた実質ベース(p35)
・会計革命は、未来や将来、変化に対して保守的な思想をバックにしていて、将来に価値が変動しそうな資産はなるべく持たないことを良しとする思想(p50)
・1965年の補正予算で戦後初めて認められた赤字国債は、財政法上は認められていない、75年以降では、バブル期の91~93年度の3年間を除いて毎年発行されている(p65)
・我が国を含む多くの先進国では、現役世代から将来世代への負担の先送りがされている、日本の世代間不均衡は169%で、100%を超えるのはイタリア(132%)のみ、アメリカ:51、ドイツ:92%、デンマーク:47%(p113)
・日本では、1994年に65歳以上の高齢者が14%を超えて高齢社会となった、高齢化社会(7%超)から14%になるのに、24年しかかかっていない(p137)
・1947年には男性:50歳、女性:53歳の平均寿命であったが、2007年では、男:79歳、女性:85歳となった(p138)
・ゆとりの多いはずの現代人の労働時間が長く、忙しすぎる理由は、全国各地を日帰り圏にしたことに一因がある(p187)
・ヨーロッパではコンコルドは、超高コストや騒音問題を抱えて採算が合わずに事業消滅、ドイツはリニア高速鉄道の建設中止としている(p190)
・10年国債は、60年償還が基本であり、60年かけて借金を分割払いするので借金が増えていく(p192) -
面白かった。
赤字国債、諸々のことに関して、大変勉強になった。
今後の仕事に役に立つと思う。 -
わかりやすく、楽しかった。
後半は失速ぎみ -
恐怖感にさいなまれた。
国の借金は約850兆円といわれるが、それらを払うのが自分たちであるということ、そしてその借金を費用便益の点からみると支払う私たちはものすごく損をしていること。
これを伝えないメディアも憎いが、今まで知らなかった自分も憎い。 -
少子高齢化が進む世の中で、さらにこの不況の中、高齢者は安い給付で生きていかなければいけないが、はたしてこのままで私たちが高齢者になるときに給付はあるのかと心配になった。職を探すのも一苦労なのに高齢者になっても大変じゃどうにかして止めなくてはいけないと思った。この本はそんな若者世代の人たちの利益をどのように保護していくかということを書いているので、可能性がないわけではないということがわかった。しかし変えるには人の力を借りてばかりではいけないと思った。
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ロジックはまだ読み切れていないが、ワシ、ワシ詐欺というのは言い得て妙。
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(20090619読了)
・参考:「破産する未来−少子高齢化と米国経済」コトリコフ、バーンズ共著。P9
・この先、民インの平均がもっと「高齢化」すれば、年長者の影響力が強まり、年金などの破産寸前の社会制度の改革を「先送り」して何とかしようという政策が幅を利かせることになる。P12
・若者政策で遅れをとっている日本でも、国民投票法の成立によって2010年までに選挙権を持つ基準となる成人年齢を18歳に引き下げる方向になっている。P23
・参考:「人口減少時代の社会保障改革」小塩隆士、「時間軸を航路すると、民主主義は途端に脆弱となる。ある時点において民主主義的な手続きに基づいて合意された政策が、将来時点における人々の幸せにつながると言う保証はどこにもないからである。ところが、彼らは次ぎの時点ではこの世にいないから現時点における自分達の幸せに最も貢献する政策を支持するだろう。そしてそれが社会全体の合意になってしまう。しかし、そうした政策は若年層に角の負担を強いる可能性が高い。」P26
・「経済白書」(05年版)によれば、年金や医療など公的部門を通じた受益と負担の関係は、60歳以上と20歳未満では差し引き1億円の格差がある。P30
・日本における子供の貧困を考えるポイントは、?子供の貧困問題の深刻さに目を向けよ。?子育て家計の負担が大きく、政府の所得再配分機能が全く働かず、再配分後はさらに子供が貧困になる。?貧相な貧困観を今すぐ改めよ。P32
・年金については、40歳以下の世代は納めた分だけ取り戻すことは相当難しい状況。P36
・欧州では世代間会計を意識した国の運営も行われている。英国は将来世代に配慮して国債発行を制限する「ゴールデンルール」で知られる。P39
・参考:「高齢社会白書」(06年、07年版)、65歳以上の世帯平均貯蓄は2500万円、その内3割程度が3000万円以上の不動産を所持。P42
・政府が保有する試算のうち容易に売却できる金融資産を債務残高から差し引いたものを純債務残高といい、06年現在431兆円でGDP比85%程度。P61
・他の先進国に比べて日本の借金残高が大きいのは、税収の低さにひとつの原因がある。P63
・世代会計は20年程度しかない概念だが、日本でも大学研究者、民間シンクタンク、政府等多くの期間によって活用されている。P68
・将来世代の世代勘定は、いま生まれたばかりの世代のそれに比べると実に8倍。P85
・働いている世代から引退した世代への政府による所得再配分は、現行の公的な社会保障制度が、老後のさまざまなリスクに対するための「世代間扶養」機能を重視していることから、高齢者背だしにおいて受益が負担を超過することはある意味当然。P100
・現在の政府の歳出・歳入構造、社会保証制度も含んだ政府財政は今後すでに予定されている政策の実施や制度変更を考慮したとしても実質的に破産している。P111
・不利益を被る人は積極的に反対運動をし成功した暁には反対運動に要したコストを補って余りある利益が得られるのに対し、利益を得る人々はもともと得られる利益が少ないので積極的には支持活動を行ってもコストが利益を上回ってしまうので、そういった行動を起すインセンティブが働かない。P135
・「中位投票者の定理」。数の多い中間的な考えの人を取り込もうとするあまり、本来は政治理念が両極端であった政党もお互いの政策が似通ってしまう。P142
・「年齢別選挙制度」の導入。P153
・世代間格差の問題の対策には、負担の増加、経済成長の鈍化など、さまざまなコストが伴う。そのコストが嫌がって先送りにしていくと、将来世代が直面する環境問題は危機的な状況に陥ってくる可能性が高くなる。P154
・人々が異なる世代に属していても全ての人々は生まれた年に関わらず、政府から同じ取扱を受けなければならないという世代間公平性の観点から政策を評価し、実行するべき。P159
・当てにならない高齢者や政治家の道義心に期待するより、政治家が確実に将来世代の利益に配慮せざるをえない状況を作り出してやるひつようがある。P170
・世代間での公平性を確保する為にやらなければならないのは、現行の社会保障制度における受益と負担の一致。P174
・ある特定の世代に受益を及ぼす政策は当該世代がそのコストを負担するという自世代調達の原則。P176
・道路などの社会資本は、世の中を便利にして、時間を節約する。しかしそうした施設が行き渡ると、新たに膨大なエネルギーを投じて新しいものを作っても時間の短縮効果は得られない限界にぶち当たる。P183
・自分の金でない税金、しかも自分の世代で全額負担せずに済むお金が自由になるから、どんどん無駄なものができる。P193
・消費は自分以外の誰かが時間を使ってつくったサービスやモノを買う事。 -
2009.06.15