超したたか勉強術 (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022736109

作品紹介・あらすじ

【歴史地理/歴史総記】「イスラム国」の脅威など混とんとする世界。そんな中で日本を覆う反知性主義に対抗するには自分のアタマで「したたか」に考え続けるほかない。どんな立場の人とも議論可能な論理に基づいて、歴史を解釈するための知的枠組みを英国中学の歴史教科書から学ぶ。

感想・レビュー・書評

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  • 超したたか勉強術
    会社だけの生活に行き詰まっている人へ
    著:佐藤 優
    朝日新書 510

    勉強術といっても、章ごとに、体系的にまとまってはおらず、19の思考のポイントをキーワードとしているので、なかなか理解できませんでした

    著書の放った、印象ぶかい一文を拾ってきました

    日本を覆う、「反知性主義」に対抗していくためには、自分の頭で「したたか」に考え続けるほかはない
    感情論ではなく、どんな立場の人とも議論ができる最強のインテリジェンス思考法を伝授とあります

    気になったことは以下です

    ・さまざまな物事について自分なりの視座をもつこと
     そのための技術を身につけること

    ・ビジネスを取り巻く状況は、刻一刻と変化している
     その変化を察知し、行方を予想して身の処し方をアップデートしていく必要がある

    ・新たな声を聞くためには、歴史、哲学、思想、宗教、文化、経済、数学など、が必要だ
     それだけでは十分ではない、テーマになっている事柄に関連する基礎教養を運用して、情報を組み直す思考力を備えて初めて、新たな声が聞こえてくる

    ・自分なりに視座をもつために最低限必要な要素を整理してみよう
     ①基礎教養を身につける
     ②情報収集
     ③基礎教養と収集した情報の運用
     ④内在的論理を探る

    ・社会人としての根幹を作る必須の基礎教養のひとつは、近現代史である
     国民国家の輪郭が明確になり、相争い、ときに協調してきたのが近現代の流れなのだ

    ・逆説的だか、人の命を奪うような政治に対しては、どんなに弱い立場に置かれた人間であっても、抵抗し、最終的には弱き者が勝つのだということを教えてくれる

    ・インテリジェンスの要諦のひとつは、公開情報の読み解きである

    ・交渉の場において、譲歩はしても決して迎合しない

    ★思考のポイント1 アナロジーで考える 

    ・トッドは移民に大きく2つの類型を認めている
     ①同化型 異質である限り、社会の成員として認めない
     ②寛容型 移民が出身国、地域の文化や言語を保持することに寛容で、同化を強要しない

    ★思考のポイント2 敷衍して論を発展させる

    ★思考のポイント3 正反対の人物をイメージする

    ★思考のポイント4 共通点と相違点を探す

    ★思考のポイント5 歴史的事実を使って規定する

    ・日本を取り戻す、心の問題(ポエム)を公共圏に持ち出す首相、それを指摘できない与野党議員、詩の朗読がまかり通る現在の政治の姿は、法治主義、民主主義が根底から崩れていることを物語っている

    ★思考のポイント6 情念面からもアプローチする

    ・同時多発的な事象間に何らかのつながりがあるか否かを見極める習慣を身につけておくことは大切だ
     ビジネスの現場において、複数の懸案事項の背後関係がつかめれば、問題解決へ向けての有効なアプローチとなるだろう

    ・同質性が高いとみなされている場所でナショナリズムが暴発すると恐ろしい

    ★思考のポイント7 アイデンティティに注目する

    ★思考のポイント8 第三の立場から考える

    ★思考のポイント9 別の概念にあてはめる

    ★思考のポイント10 さらなる謎に迫る

    ★思考のポイント11 他人事と捉えない

    ★思考のポイント12 他の選択肢の可能性を探る

    ★思考のポイント13 価値を相対化する

    ★思考のポイント14 立ち位置に目を配る

    ★思考のポイント15 感情的な要素を排除する

    ★思考のポイント16 ルールの数はしぼる

    ・日本はいまも帝国である

    ★思考のポイント17 効果的に敷衍を使う

    ★思考のポイント18 双方の立場から立証する

    ★思考のポイント19 裏返して考える習慣をつける

    目次
    序章 「生き残り」のための技術を磨く
    第1章 「したたかさ」を身につける
    第2章 多様なものの見方をする
    第3章 「失敗」と謙虚に向き合う
    第4章 複雑な問題を分解して考える
    第5章 「あてはめ」で可視化する
    第6章 不動とされる価値を疑ってみる
    第7章 物事を考えるときのルールを決める
    第8章 「思考の鋳型」は組み合わせて使う
    第9章 自分の考えを自分で否定する知力をつける
    終章 いま置かれた立場で「生き残る」
    あとがき

    ISBN:9784022736109
    出版社:朝日新聞出版
    判型:新書
    ページ数:240ページ
    定価:760円(本体)
    発売日:2015年04月30日第1刷

  • ⚫︎タイトルからして、いつものハウツーかと思いきや、かなり無骨な内容。
    ⚫︎イギリスは発想が他民族に比べて異質というのはなるほどなと。気の利いた教科書を使用しているのもすごい。徹底して考えさせる訓練が織り込まれている。たしかにあれだけの植民地を統治していたのは、今となっては物凄いノウハウだし、能力だと思う。
    ⚫︎最後らへんが一般化されたエッセンスだが、中盤も色々あって飽きさせない。

  • 2023/11/04

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/685369

  • タイトルにやや偽りありかな。元外務官僚の佐藤氏が世界情勢や政治を考える上での思考法をまとめたもの。イギリス帝国主義と日本の安倍政権の改憲問題や、スコットランドの独立と沖縄の普天間問題などを関連づけてどのように考えるべきか。という内容。他にも多数事例あり。斜め読みするのは困難で、それなりに時間と熱意が必要な本だが、良書だと思う。

  • イギリスの歴史教育を例にとり、その帝国主義の変遷から、アナロジーと敷衍という手法を教えてくれる。そうした手法は、敢えて言語化して定義せぬだけで、日常生活で自然と用いる考え方だ。我々は、教えられなくても、十分にしたたかなのだろう。

    人類の歴史は繰り返す。と、言い切らぬまでも、大衆心理における行動、政治力学による決断は、合理的なものから感情的なものまで、作用する複雑な因子を理解すれば、類推は可能だ。例に取る、前例を挙げる、という手法の使い道は広い。時に、人生も二度目ならば、より器用に生きていく事が可能なのにと悔いるような失敗もある。

    歴史は、そうした過誤を未然に防ぐ絶好の教材だ。佐藤優は読み易く、常に知的刺激を与えてくれる。好きな著者の一人、それを再確認した。

  • 恐らく再読。実践書であり、当時の時事を取り上げているので発売当初に向き合うべき本だったような気がする。日本史A、世界史A、イギリスの歴史教科書を手に読むのが正しい読み方でつらつら読むだけの本ではない。最終ページに『「一冊の本」(2014年4月号~2015年3月号)の連載「超したたか勉強術 私が外務省研修指導官だったら・・・」に加筆のうえ再構成したものです』とあり、この本の目的と意味が分かった気がした。

  • 基礎的教養を身に着ける。
    情報収集。
    内在的論理を探る。
    インテリジェンスの要諦の1つは公開情報の読み解き。オシント(Open Source Intelligence)新聞だけでなくあらゆる情報に目を通す。読解力が要求される。

  • 2015年刊。著者は元外務省主任分析官。◆広義の勉強術、つまり「イギリスの歴史」(英国中等教育用教科書)を素材に、核となる思考方法の内容を明らかにしつつ、これを構築していく過程について、現実問題(イスラミックステート、安倍氏の集団的自衛権関連の議論など)における著者の思考過程を辿りつつ解説する。◇石原千秋氏と著者は思考の「過程」を開陳するので、学習法では読み応えある著作が見受けられるが、本書もその一。◆なお、反知性主義とは実証性と客観性を欠く思考態度で、知識がないばかりか知識・知性を憎む傾向にある。
    ◇安倍氏が「捏造と主張する報道を、毎・朝・産・日経・共同通信各社が行っていたにもかかわらず、捏造批判の対象を朝日に限って『国会』で答弁した」態度も、実証的には矛盾し、行動面で論理的一貫性を欠く不整合さ満載であって、彼の反知性主義的な性格の表れ。このような証拠や事実を無視しても平気な反知性主義に反駁するのは難しい、勿論、これが現実の脅威にならない限り、つまり思想の範囲内で止まっていならば、共存可能(内心の自由は無制限)。
    が、表現行為や、首相言動あるいは権力行使等第三者へ影響や情報が齎される場合は、社会の力で排除するしかない(選挙/ヘイトスピーチに関する民事司法の活用とこれへの行政からの経済的支援(大阪市長橋下徹提言))。こういう著者の論は大いに首肯。◆個人的には、未学習の安易な発言自体は問題視すべきでないと考える。その際、学習不足であることの自覚と、発言後も学習を継続する姿勢と実行さえあれば十分だからだ。問題はそれすらない人だが、それを社会的に忌避するための方法論が先の指摘なのかもしれない。

  • イギリスで用いられている歴史の教科書などを題材に、心情的な反知性主義に陥ることなく、「新・帝国主義」の時代を生き抜くためのインテリジェンスの能力を磨く方法を具体的に語っている本です。

    どういうジャンルになるのか、分類のむずかしい内容です。いわゆる自己啓発本的な読書術でもないし、国際政治の解説書でもありません。しいていえば、著者の専門であるインテリジェンスのトレーニング法とその応用がテーマだということになるでしょうか。

    左派の安倍内閣批判とは異なる視点からなされる著者の議論も、興味深く読みました。しばしば保守派が金科玉条とする「リアリティ」が、インテリジェンスの視点から見ると反知性主義的で心情主義的な幻想にすぎないこともあるという指摘はけっしてめずらしいものではありませんが、そうした幻想を克服してリアリティに目を見開くことを、インテリジェンスの能力を身に着ける努力とひとつながりのものとして語っているところに、本書の特色があるように感じます。

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著者プロフィール

1960年1月18日、東京都生まれ。1985年同志社大学大学院神学研究科修了 (神学修士)。1985年に外務省入省。英国、ロシアなどに勤務。2002年5月に鈴木宗男事件に連座し、2009年6月に執行猶予付き有罪確定。2013年6月に執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―』(新潮社)、『自壊する帝国』(新潮社)、『交渉術』(文藝春秋)などの作品がある。

「2023年 『三人の女 二〇世紀の春 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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