自動運転「戦場」ルポ : ウーバー、グーグル、日本勢 ── クルマの近未来 (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022737786

感想・レビュー・書評

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  • 2018年11月7日読了。自動運転を巡るシリコンバレー勢・自動車メーカー勢や主にアメリカ・日本の世論の「今」の動向と今後に向けた提言を行う本。非常に面白くスリリングな本だった。JMMのメルマガで著者の文章には馴染みがあるが、ルポというものは著者の技量次第で深さ軽さ・面白さ・読後の問題意識の深まりも雲泥の差がつくものだなあと再認識。自動運転に関してはとにかく2018年3月のアリゾナ州での事故の影響が社会受容的にも技術開発的にも大きかったこと、自分が今まで読んできた数冊の自動運転の本はやはり「自動車メーカー・既存の自動車の延長」に書かれたものでありシリコンバレー勢は「今どうあるか」に全くとらわれない方式で完全自動運転を目指そうとしていること・これがまさにイノベーションであるということに衝撃を受けた。とはいえ「人命に影響する自動車」の特殊性からそこには無理があり、著者の提言にあるような施策を国・メーカーを超えて議論・実現させていく必要があるのか…。便利になるのはいいが自動車事故で死にたくはないものだ。ドライバーが人間であっても機械であっても。

  • ふむ

  • 537||Re

  • 高齢者による交通事故のニュースが増えている昨今。
    それの改善の一助になるのではと思って読んでみました。

    人間の手を離れるという不安からか世論がなかなか受け入れていないし、技術もまだまだ発展途上。
    でも私は期待したいしぜひ完全自動運転が実現して欲しいです。

  • レビュー省略

  • 自動運転車の勉強をしてみようとして手当たり次第に何冊か手にとったうち、一番最初に読み終わった一冊。

    前半は自動運転の技術動向について、後半(というか後ろ 3/4)は自動運転の技術的な困難さ(ナイーブな記述が目立ち、あまり参考にならない)と、社会的な受容の困難さ(端的に言うと事故のたびに過剰に不安になる大衆と、それを煽る旧来メディア)について。

    LiDAR とか、レベル0〜5とか、高精細地図とか、V2X とか言葉のお勉強にはほどよいレベルだったが、あんまり参考にはならなかったな。

  • 昨今の自動運転を巡る複雑な状況、特に米国での人身事故後の状況がよくわかった。

    米国の状況(「デトロイト組とシリコンバレー組の発想の違い」、「「やたら楽観的なシリコンバレーと、そのタニマチとしてのウォール街」と、「事故のたびに不安感を増す一般世論と、それを煽る一般メディア」という落差の構図」)を見るに、米国では、シリコンバレーの熱気とは裏腹に、自動運転車のレベル4や5の実用化へは簡単に行きそうにないな。 アメリカの国民の多くは、自動車に対して、移動手段という以上の格別な思い入れがあるようだし。自動運転車への不安感や嫌悪感の強さは、米国での自動運転実用化の足カセになるかもしれない。むしろ、シンガポールや中国の方が早いかも知れないな。日本はどうなんだろう。個人的には、自動運転が一日も早く実用化されることを切望しているのだが…。

    著者は、シリコンバレーの方向性を軌道修正し、レベル2や3を地道に突き詰めていくべき、といっている。そうであれば、日本メーカーにもまだまだ勝機がありそうだ。

  • 来年(2019)には元号が変わりますが、今の元号になって社会人を始めた私は、職種は変わったものの、一貫して自動車部品である潤滑油の開発、今ではその潤滑油の元(添加剤)のビジネスに携わってきました。この間、主な技術動向はバブルが弾ける前あたりから、ずっと燃費向上であったと思います。

    燃費を向上した製品開発が終了しても、次の課題はさらなる「燃費向上」であり、この解決に向けて取り組んできた「一つの時代」と言っても過言では無いと思います。その流れが、ここ数年で変わってきていると感じているのは私だけでしょうか、燃費向上は今でも重要な課題と思いますが、少なくとも日本において、更には私の関わっている潤滑油のエリアでは、かなり限界に達しているのではと思っています。

    そこで、それに代わるものとして、私は「自動運転」があると思います。この流れも、電気自動車の活用により、計算の仕方によっては燃費向上することにもなるので、燃費向上の一つの技術として語られることもあると思いますが、何といっても「自動運転」は、今までの車と運転手の関係を変える、車を保有する(ステータスの一部)から、利用する(バス・電車のような公共物の扱い)ことに代わる可能性を秘めていると思います。

    尤も、私のようにマニュアル車で運転免許を取って、5年ローンを組んで初めて手に入れた中古車の喜びを知っている人間の考え方を変えるのには時間がかかると思いますが、車が家にあるのは当たり前・それも操作の楽なオートマでカーナビ付き、という環境に育ってきた私の娘達は平気で「早く自動運転になればイイのに」と言っています。政府は2020年後半を目途に自動運転の実用化を目指しているようですが、今の私達の世代が後期高齢者になり運転をしなくなったころ、社会は普通に自動運転を受け入れていると予想されます。

    そのような中、この本は実際に日本の現場において、自動運転の技術がどれほど実現性があるのかの調査をベースに書かれた本です。やはりと言うか、完全な自動運転は難しそうですね、本の中でも心配している様に、本当に難しい局面(天候不順、地図にない道路情報、突然の工事・事故等)に対して、急に人間に運転を振られるような問題がこれから出てくるが予想されました。どんな局面にも対応できるドライバーが、楽な運転モード(例えば、高速道路で一定速度での巡行運転)だけを任せることは可能かもしれませんが、私も初心者のころ苦労したのを覚えていますが、首都高速の車線侵入の仕方、渋滞時の入り方、後続車両の状況を把握しながら右折車両を先に行かせるかどうか、これらの判断をすべて自動運転に求めるのは難しいのではと思ってしまいます。

    飛行機の操縦は、巡行運転ではもう自動運転になってから数十年経過していると思いますが、離着陸だけはまだ手動と聞いています。自動運転も、そのように、自動と手動運転が共存する時代が長く続くのではないのでしょうか、とこの本を読んでその思いを新たにしました。ただ、私は運転頻度が減ってきているのは認めざるを得ませんが、当分は自分で運転するのを選びたいですね。

    以下は気になったポイントです。

    ・2018年3月のシリコンバレー北部のサンマテオ市のイベントタイトルは、「AV18シリコンバレー」AVとは、オトノモス・ヴィークル(autonomous vehicle)、つまり自動運転車のことである(p14)

    ・90年代から2010年代へのコンピュータ利用の進歩が、光学ディスクを追放する等、目に見えるものを追放して抽象的なデジタルデータに置き換えたように、クルマ社会というもの「自動車」というモノを簡素化する方向から、新しい移動手段へと作り替えようとしている(p20)

    ・レベル1とは、自動車の運転を、前後方向の加減速・左右方向の操舵、の2つに分けて、そのどちらか1つだけをAIが支援的(ある特殊な状況においてのみ機械の判断で制御する)するもの、レベル2は同時に行う。レベル3は異常時にはドライバーが運転するもの、レベル4は特定の条件から外れた場合は、ドライバーが運転する(p25)

    ・EVとAVの相性は決してよくない、自動運転に必要なセンサーの消費電力が無視できないから(p30)

    ・AI運転では、地図データをベースにして、このような条件下ではこのするのが一番安全という判断データとつきあわせ、さらにこれに自車に搭載したカメラ、レーダー、ライダー(レーザー光線照射によるセンサー)、超音波センサーの4種からなるデータを合わせて判断し続ける(p59)

    ・自分が創業したアップル社から一旦は追放されていたスティーブ・ジョブズは1996年末に復帰していたが、1997年に企業再建のためにマイクロソフトとの業務提携を行った(p63)

    ・テスラは、高速しかダメ、インターチェンジ内はダメ、ドライバーは100%の監視をして問題があれば操作を、ということを「オートパイロット」の条件にしている、テスラがさらにセンサー・システムを構築するとすれば、航続距離は現行の500キロから半減するだろう(p77)

    ・テスラには、モバイルバッテリー2700個分が搭載されている、このような電池の塊が熱暴走する危険性がある(p79)

    ・現在のAIとは、人工の知能とは名ばかりで、ビックデータと呼ばれる膨大な情報を統計的に処理して、人間に似た判断へと誤差を縮めていく、つまりは統計マシンに過ぎない(p87)

    ・実際問題として、カリフォルニア、アリゾナを走り回っている自動運転試験車の場合、その道路の「流れ」が制限速度をオーバーしていても、その流れに乗るように走っている(p156)

    ・AS社という自動運転技術の夢に社運をかけているベンチャー企業は、完全自動運転を目指すと、EVではなくガソリン車になるというのが現状とコメントしている、システム・センサーの消費電力が馬鹿にならず、熱対策も必要となるため(p171)

    ・シンガポールでは、10年間有効という高額な登録証が必要なので、日本では180万円程度の小型車を保有するのに、税込みで1000万円近くの金額が必要(p184)

    ・自動運転の実用化というのは、さまざまな困難を抱えている、夢を追う技術ではなく、泥臭い「実務的カイゼン」を重ねていくことで、ようやく前に進める、そのような特殊な技術革新である(p219)

    2018年8月15日作成

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著者プロフィール

1959年東京生まれ。東京大学文学部、コロンビア大学大学院(修士)卒。 著書に『911 セプテンバーイレブンス』『メジャーリーグの愛され方』『「関係の空気」「場の空気」』『アメリカは本当に「貧困大国」なのか?』『チェンジはどこへ消えたか~オーラをなくしたオバマの試練』。訳書に『チャター』がある。 最新作は『場違いな人~「空気」と「目線」に悩まないコミュニケーション』(大和書房)。村上龍のメルマガJMMに「USAレポート」を寄稿。ニューズウイーク日本版でコラム連載。NHKBS『クールジャパン』の準レギュラー。

「2016年 『民主党のアメリカ 共和党のアメリカ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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