軍事の日本史 鎌倉・南北朝・室町・戦国時代のリアル (朝日新書)
- 朝日新聞出版 (2018年12月13日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022737991
作品紹介・あらすじ
【歴史地理/日本歴史】テレビ出演でもおなじみの本郷先生が中世、戦国時代の軍事史をわかりやすく解説。戦国時代に1万人の軍勢が1カ月にかかる必要経費はいくらか?、源平の戦いと一騎打ちの実態、集団戦から総力戦へ、錦の御旗に隠された真意とは?「戦場のリアル」が見えてくる。
感想・レビュー・書評
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●タイトルはわりと硬めだが、中身はいたって読みやすい。
●事実の羅列ではなくしっかりした意欲的な考察なのでわかりやすい。
●戦国時代の戰のリアルが少しは理解できたかな。農民ならそりゃ殺せないし、槍で叩くというのもなるほどなと。実際斬り合いなんて中々出来るわけじゃない。
●あまり日本史は詳しくなくて、将軍と天皇の関係性はどうかわからないけれど、筋の通った解釈というのは中々難しいのではないか。原則はあれど例外も多いし、当時の状況で臨機応変に変わるはず…
●しかし、戦国時代なんて昔すぎて精緻な話はないなんて、とんでもないなと。小さい島国の中でも必死に知恵を絞りながら乗り切っていたんだとわかる。昭和時代の軍が研究したのも理解できる。結局、時代は変われど、人間ということは普遍。考えることは似通っているって話だよね。
●個人的に、最後のあとがきがいきなりテイストが変わって、弱者の視点って言い出したのは笑った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『三河雑兵心得』の展開を復習するがごとく読めた。軍事行動が戦術、戦略的なものとして考察できるのは、やはり戦国時代以降なのだろう。そして著者が言うように、歴史学者だけではなく、軍事の専門家との共同研究は必要だと思う。信長、秀吉、家康までの戦の進め方とその理由は理解できた。もう一つは著者が研究課題としている明治維新と太平洋戦争の相関関係で、私は本書の説明では得心がいかず、引き続き著者の研究が進むことを願うのみ。ただ、個人的には薩長閥が軍部の実権を握り、無謀な戦争が継続されたとの思いは拭えない。
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著者は東大のめちゃくちゃ頭がいい先生なのに、わかりやすい本を書いてくれる方です。
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時代の流れを考えて日本史を相手にしようという著者の考えと時代の区分にとらわれることのない視点を大切にし、歴史的な点、ポイントにこだわるのではなく、多面的に時代を見、どういうベクトルで歴史が動いているのか、その流れをつかむという2つの事を前提に「軍事」という方面から応仁の乱、関ケ原の戦い、川中島の戦い、桶狭間の戦いなどを詳細に分析していく。戦争には(1)戦術(2)戦略(3)兵站という三つが重要になって来る。この三つは戦う上での要諦だから、近現代の戦争でも変わらないベーシックなものである。さらに戦術については「兵力」「装備」「大義名分」があると著者は言う。勝負を直接的に左右する、戦術、さらに「誰と戦うのか」「どういう展望をもって戦うのか」という戦略も大事になって来る。詳細→
http://takeshi3017.chu.jp/file9/naiyou28104.html -
中世から終戦まで、薄く広く言及されている。内容は平易で読みやすい。
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農民は戦場に狩り出されたって人を殺すのは嫌だろうし、できたら木の陰に隠れてやり過ごしたいと思うんじゃないか。私ならそう思うし、著者もそう思うらしい。武将ばかりがクローズアップされる戦国モノの新書に新たな一石を投じる問題作(?)。
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昨年(2018)に本郷氏の本に出合って、彼の本を読むようになり、順不同ですがこれが8冊目の本となります。毎回テーマが異なっていて、様々な角度から日本史を通して、各時代に生きた人間の考え方がわかるような気がしてきます。
鎌倉、南北朝、室町、戦国時代と、使われる武器の種類も異なりますし、それに応じて戦い方も変わってきます。その様子を、本郷氏の解説により楽しく読ませてもらいました。時間に余裕ができたら、このような講義も受けてみたいなと思いました。
以下は気になったポイントです。
・戦争には、1)戦術;戦争をする場所、2)戦略;誰と戦うのか、どういう展望を持って戦うのか、別の大名に攻められないようにどう手を打つか、3)兵站から成り立っているのが大前提である、戦略と兵站という視点がないことが多い、更に必要なのは、4)兵力、5)装備、6)大義名分である(p27、28、37、38)
・戦争が起きるのは、政治と外交という両輪が機能しなくなったときに起きる(p40)
・当時は太平洋より日本海交易が栄えていたので、日本海側で作られている焼き物を蝦夷地で売買、そこで仕入れた海産物を直江津に持ってくる、越後で作られていた、アオソという木綿ににた繊維を載せて京都に行く。直江津を押さえれば海を通じた交易権を手にできた(p63)
・戦争をするには理由がある、どちらが戦いを仕掛けたか、どんな目的があったのか、その目的を調べてそれが達成されていればそちらの勝ちである(p75)
・領地からどれだけ米が取れるかをお金に換算し、米ではなく銭の単位で表した、この貫高によって軍役を課していた(p96)
・大江広元の子孫として有名なのは、毛利家であるが、武将の毛利元就に文官のイメージはない、上杉家も宗尊親王が京都から鎌倉に下向してくるときについてきた下級貴族が上杉で元々は文官だが、それに反して武官になっていく。日本では武官が文官より上であった(p104)
・天皇という地位を降りた上皇が権力を握り続けるのは、皇族・皇家の家父長が上皇であり、その次の家父長になれるよ、というメルクマールが天皇である(p112)
・戊辰戦争の時の軍勢は、薩摩軍・長州軍を併せても約2,3000程度、これは武士だけを集めているからで農民は排除している。戦闘を行う人々に限ればこの程度であり、農民を大量に動員してくると何万人という軍勢になる(p159)
・非常時に忘れてはいけないポイント、1)食糧、2)恐怖心があることを理解する、3)神頼みを本気で信じてはならない(p175)
・承久の乱では、賊軍とされた鎌倉幕府が勝利を収めたが、これは例外中の例外、たいていの場合は江戸幕府を終わらせた戊辰戦争のように官軍は強かった(p207)
・自分の属している会社はどういうビジョンを持っているかを社員が理解する、ビジネスの現場で判断を迫られたとき、自分の行動はそのビジョンに即しているか、別の方向に行こうとしているかを考えることができる(p240)
2020年4月13日作成 -
20190406読了