なぜ「改革」は合理的に失敗するのか 改革の不条理

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  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784023308923

作品紹介・あらすじ

日本航空、雪印食品、夕張市、日本陸軍-。よかれと企図した"組織の改革"が頓挫する。回避策はなにか。

感想・レビュー・書評

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  • なぜ「改革」は合理的に失敗するのか?
    それは、個人の利益最適なオペレーションと、組織のそれとが相反するからである。「当然、その場合は、組織優先でしょ」が常識ならば、改革はうまく行くはずだが、実際はそうではないから、改革は合理的に失敗するのである。
    この負のスパイラルから抜け出せずにもがき苦しむ組織の多いこと。

  • 大変参考になりました。改革に失敗するのは、限定的に合理的であるから。

  • 「批判とは、どこまでが正しくどこまでが誤りなのかその境界を確定すること。(すべてを否定することではない)」
    世の中に転がっている大半の「批判」「批評」が、文句になっていることがよくわかる。
    本来の「正しいこと」をするための、「個別最適化」と「取り引きコスト(説得や人間関係上の駆け引きにかかる無駄な手間暇やストレス)」が低い状態に仕組みや人間関係で持って行くか、がポイントになる、という内容。

    しかし、最後まで解決できないストレスを打破できるのは…

    空気読めない人

    というのが、如何にも人間的。

  • 組織改革を成功させるには?

    →改革の不条理には、
    1.全体と個別合理性の不一致
    2.効率性と正当性の不一致
    3.長期的利益と短期的利益の不一致
    改革への賛同を募る場合、事後利益のみだけでなく、改革前の損失も見せる
    プラスの心境にあふメンバーで推進すべき
    取引コスト、エージェンシー問題、マイナスの外部性、心理的バイアスが正しい改革を避ける
    予防的に改革の不条理を回避するには、組織のリーダーやメンバーが自分たちの限定合理性を認識し、批判的議論を展開し、絶えず組織を改善し、戦略を変更し、流れているような組織を形成する
    批判とは限界を明らかにすること

  • 慶応の教授ってなんか自分の主張にそった事例とそれにあった理論を持ち出してきて、この話は普遍的だといった態度を取ることが多いなー(偏見


    合理的に行動した結果失敗する。一見すると変な話だが現実にはそういう話は少なくない。そんな話を解説する理論紹介本です。
    著者の主張や解説は置いといて、紹介されている理論は興味深いものが多く、合理的とはなにかを考えるきっかけになればと思います。

  • 1「取引コスト」
     交渉の際に発生する人間関係上の駆け引き、無駄な手間暇。
     社会的には非合理的で日倫理的な現象を生み出す。
     よって、信望の厚い人による改革は失敗する。
      「空気」とは取引コストが生み出す沈黙。

    2「エージェンシー理論」
     「依頼人」と「代理人(エージェント)」の関係。
      利害が不一致で、両者の情報も非対称的な関係。
      社会的には不正で非効率的な現象であるが、
      エージェントにとっては合理的な不条理現象。

    3「所有権理論」
      財や資源の所有関係の不明確さが非効率的で不正な使用に導く。
      プラスもマイナスも誰にも帰属できない無責任な事態がおこる。 

    4「プロスペクト理論」
     人間は利益より損失に敏感 
     黒字の状態では、大きな利益を出しても小さな満足。
     赤字事業では少しでも利益が出ると大きな満足が得られる。
     よって、赤字から脱却できない。


    「制度」で取引コストの節約や
     エージェンシー問題、所有権問題、プロスペクト問題は改善できるが限界はある。
     「自立的な人間」は自由で道徳的で責任のある行為ができる。=大改革を実行できる。
     「他律的な人間」には制度によるコントロールを行う。

    「批判」とは限界を明らかにすること。
     不条理に立ち向かえるのは、
     批判的議論にもとづくマネジメントが常に行われている組織。

  • 人間が限定合理的であることを前提に全体最適と個別最適の観点での違いを説明した本。
    新制度経済学という論理自体はよくあるけど改革という観点に絞った点で面白い。場の空気に水をさすことが出来る人が全体最適での改革を起こせる!

  • 行動経済学という新しい学問で、失敗をケーススタディをしている。
    理論自体は頷け、身近に当てはまるので面白い。数値化するので類型し比較しやすい。

    ただ、内容は判りにくい。
    当出版社系列のカルチャーセンターで講座をもった著者が、テキストとして生徒に売りつける為
    に作った、著者も編集者も志の低い本。ケーススタディをするなら、一般論を排して全て事例で
    まとめてほしいし、失敗しないための方策も、様々な障害を乗り越えて改革したケースを挙げて
    説明してほしい。

    1.取引コスト理論
       取引コスト=人間関係上の駆け引き
       取引コストがあまりに大きいと、それを節約するのではなく避けようと
       し、人間は不条理に陥る

        ①信望の厚い社長による改革は合理的に失敗する。
           個々の取引コストを調整できない
        ②成果主義への改革は合理的に失敗する。
           従業員同士の取引コストが発生する。
           上司は個々の調整をするには時間がかかり、大雑把な評価に終わる。

    2.エージェンシー理論
       プリンシパルの利益に反してエージェント自身の利益を優先した行動とること。
       プリンシパル=エージェント理論とは、どのようなインセンティブ(誘因)をエージェン
       トに与えれば良いのかについて、主として報酬を対象に考察する研究のこと

        ①監督の監督を設置する改革は合理的に失敗する
           省庁と会計検査院。新たなモラルハザードを生むだけ。利害の一致、情報相互化
        ②ワークシェアリングを用いる改革は合理的に失敗する。

    3.所有権理論
       人間は自己利益追求のために悪徳的に行動することがあるので、隠れて共有地の資源
       を浪費したり資源を過剰に利用したりすることがある。その結果として共有地資源は枯れ
       果て最終的に誰にも得にならない事態になる。
       共有地を細分化し所有権を割り当てることができれば、人々は自分に与えられた資源は
       大切に使うインセンティブを持つので資源は大切に使われる。このように財を効率的に使
       うためには所有権の設定が重要になる。

        ①連帯責任制度は合理的に失敗する→組織的隠蔽工作を行う事が合理的になる
        ②意味のない会議は合理的に開かれる。
           リスク回避の強い保守的な上司にとって会議を開くことは合理的

    4.プロスペクト理論
      意思決定を「編集段階」と「評価段階」という、ふたつのフェイズに分けて考える。まず編
      集段階において意思決定主体は与えられた選択肢を認識し、参照点が決定される。参
      照点は人それぞれである。
      その後、「評価段階」において価値関数と確率加重関数を計算し、行動を決定する。

        ①成功者は改革に対して合理的に保守的になる
        ②赤字ビジネスからは合理的に撤退できない。
          同じ利益額でも黒字ビジネスより赤字ビジネスの方が心理的価値が強い。

    戦艦大和特攻作戦 →空気とは取引コストが作る沈黙
    羽田空港ハブ化をめぐる行政 →長期利益より短期利益を優先する取引コスト
    古紙配合率偽装 →消費者と製紙会社で利害が一致していない。エージェンシー問題
    夕張市財政破綻 →映画祭、テーマパーク。公企業は無責任、所有権問題
    バーゲンセールで元の値札に新しい値段を書く →プロスペクト理論

    日航 早期退職制度
    エンロン ストックオプション制度
    脱派閥
    一般競争入札
    医療制度改革
    ゆとり教育

    武田勝頼 時代遅れから抜け出すのは大変 騎馬軍団と鉄砲
    インパール作戦 司令官の判断を揺さぶった状況の変化
    三菱自動車、雪印 改革を拒む閉ざされた組織

  • 改革できない理由について、4つの考え方による説明は分かりやすい。

    しかし、筆者が不条理を超えるヒントとして挙げているマネージングフローや、自律型人間というコンセプトは、4つの理論によってどのように説明されるのだろうか?。ある組織がマネージングフローを実践しているか否か、誰かが自律的な人間であるか否かということを、どうすれば判断できるのだろうか?

  • 印象に残った一節【批判とは「どこまでが正しく、どこからが誤りなのか、その境界を確定すること」】。組織運営に煮詰まってるサラリーマンなら読む価値あり。多くの示唆に富んでいる。

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著者プロフィール

慶應義塾大学教授

「2016年 『組織の経済学入門〔改訂版〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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