チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784023310315

作品紹介・あらすじ

中国を動かしているのは中国共産党政治局常務委員の9人だ。国家の方向、経済の動向、社会の行方、人心のありか、9人をめぐるドラマを紐解けば、おのずと中国の全貌が見える。2012年秋、政権交代で誰が9人となり、どんな舵を切るか?2023年、誰が国家主席となるのか?中国政府のシンクタンクで客員教授を務めた著者が明示する。

感想・レビュー・書評

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  • 日経ビジネスオンラインで中国ネタはいろいろ有るが抜群に分析が鋭い遠藤氏の現在進行形の解説書。中身は先のサイトに書かれたものも有るがまとめて読む方が理解しやすい。
    中国を動かしているのは9人の中央政治局常務委員で、25人の政治局委員から選ばれる。重大な決定は9人の多数決で行なわれるので、誰が選ばれるか熾烈な派閥争いが続く。失脚した薄熙来はパフォーマンスでアピールしたが、毛沢東時代に戻る気がない胡温に見放された。
    今年の秋メンバーが入れ替わり習近平と李克強以外の7人が新たに常務委員となる。25名の内67歳以下が時期候補で9人いる。この中で誰が入るのかがこの夏の一つのポイントで、もう一つは習近平の次は誰か。先の9人のうち2017年に引退しないのは習、李以外に 李源潮、汪洋で習は上海閥だが、後は胡錦濤派の中共青年団派。江沢民の影響力は習近平を次期国家首席にするところまでだったと分析している。

    2022年を睨むと習の次は現在52歳以下つまり1960年以降に生まれたものが候補であり、もしこの秋いきなり常務委員入りすれば胡錦濤、習、李と同じ路線であり胡春華、周強、孫政才の名が上がっている。
    胡温体制は行き過ぎた経済発展からバランスの取れた社会への変換を目指しているが一方で現体制の安定が第一である。結果としては温家宝が民主的な発言をし一方で胡錦濤が締め付けるという役割分担をしていると言う。

    これからの中国ではネットの力が無視できなくなる。広東省の烏坎村事件は村民の勝利がネットで瞬く間に拡がり民衆が勝利した画期的な事件だという。いつ迄も武力鎮圧一辺倒とは言えなくなってきている。また、胡温体制は何度か親日的なメッセージを出したがその度ネットの批判に晒された。尖閣についても08年5月7日の日中共同声明でガス田の共同開発を発表して売国奴とまで批判されたらしい。
    こういったネット世論を作るのは主に30代迄で高卒以下の5億人。平均月収2000元未満が半数で5000元未満が9割を占める。一方で日本のアニメや漫画にはまっていたり、北京でSMAPを歓迎しているのも彼らだ。

  • 中国政治の意思決定を担っているのは9人の政治局常務委員であるとし、権力構造や争いを解説している。毛沢東個人の独裁による文化大革命を二度と繰り返さないため集団指導体制になっているという説明に納得。共青団vs太子党という構図は新聞でも頻繁に出てくるが、単なる二項対立的な構図ではないこともよくわかる。

  • 著者の遠藤さんは1941年に中国で生まれ、日本敗戦後には中国国民党が支配する長春に対する中国共産党による包囲作戦によって引き起こされた、死者10数万人から30万人とも見られるすさまじい飢餓地獄から生還した過去を持つ人物です。

    #尚、この時の経験は、1983年に執筆した「不条理のかなた」を始めとする様々な著書に書かれています。

    この様に中国と切ろうとしても切ることが出来ない結びつきをもつ遠藤さんですが、その人脈には中国政府の要職についている人物もいるとの事。
    本書は、この様な遠藤さんの手による次の中国を率いる指導者(中国共産党中央委員会政治局常務委員)グループ、通称チャイナ・ナイン(現在常務委員は9人いるのでナインとなっているが、常務委員の人数は9人に限定されている訳ではない)について解説した本であり、類書は他に無いのではないかと思う程ユニークな一冊です。

    構成は、序章と終章を含めて全7章からなり、それぞれ

    序章:権力の構図
    権力闘争を含めた中国の現状を簡潔に解説

    1章:中国を動かす9人の男たち
    中国で最も強い権力を握る、9人の中国共産党中央委員会政治局常務委員たちについて、その経歴や著者が相手に抱いた印象などを解説

    2章:次の中国を動かす9人の男たち
    次期中国共産党中央委員会政治局常務委員に選ばれるであろう人々や上海閥(江沢民を筆頭とする改革解放路線派。汚職がすさまじいと言われている)、団派(叩き上げの高学歴集団。共産主義の価値観を重視)、太子党(共産党の高級幹部の子弟)と言ったチャイナ・ナインの派閥を解説。
    加えてこれら派閥間の駆け引きも紹介

    3章:文化体制改革
    秩序、価値観が崩壊した文化大革命後、改革解放路線へと直進した中国。
    この経緯により、中国社会には薬物、性の売買が入り乱れる等、モラル崩壊が社会問題となっている。
    この現状と中国政府の対策及び中国のインターネット世論を構成する若者たちなどに関して解説。

    4章:政治体制改革
    インターネットなどにより無視できない力を持ち始めた世論。これと折り合いをつけ様とする中国政府の取り組みを解説。

    5章:対日、対外戦略
    胡錦濤政権の対日戦略とそれに対する中国国民の強い反発や北朝鮮、アメリカ、アフリカ諸国との関係について解説

    終章:未完の革命
    この書評の冒頭でも紹介した著者の壮絶な過去や中国に対する思いについて


    著者個人の思い入れや想像なども多く記載されている本なので、淡々と事実関係を解説したものではなく、勢いよく書かれている文章に何となく「未だに読んだことが無いが、水滸伝ってこの様な感じなのだろうか?」と言った印象を抱いてしまう一冊でした。
    加えて、例えば、中国共産党の指導下での他政党の活動を紹介する記述では(一応、限定的である点は断りは入れてはいますが)中国国内の民主的な側面として強調されている等、「その気になればいつでも潰せるのに民主的と言えるのだろうか?」と言った感じの疑問を感じる箇所もあり、正直、内容の客観性に関してはどの程度確保されているかは(少なくとも私には)分かりません。

    とは言え、上記しましたが、本書のユニークさは類書に無いものですので、一読の価値は十分にあるかと思います。
    従って、(内容の正確性にある程度の判断をつける為には)本書を読む前に「日中危機はなぜ起こるのか」(リチャード・C. ブッシュ著)等を読まれるといいかも知れません。

    何にせよ、興味深い一冊です。

    お時間のある時にでもどうぞ。

  • 知らなかったたくさんの史実と考察が分かり易く描かれた素晴らしいルポルタージュ。
    筆者の情報レベルの深さ・広さには感服するばかりで、平易な表現に徹していて とても読み易く、好感がもてます。

    体制を危険にさらすのは、政治でも経済でもなく「精神文化」であること/
    「たかが漫画」と放置した日本漫画が、若年層の精神に影響していること/
    共産党以外に、8つの民主党派が存在すること。

    これらのことは本書で初めて触れた事実でした。
    今ままでは 狭く浅い情報で近視眼的に 中国を見てきたと省みるばかり。
    やはり 多面的に知る・考える、が大切と思い知る。

    終章にて明かされた 革命戦争時の筆者の壮絶な瀕死体験。

    死線を越えて、
    「~が実現したときに初めて、私にとってのあの革命が完結するのである。その日まで私は死ぬわけにはいかない。」
    と表明された筆者に 凄みを感じます。

    遠藤誉さんの原動力がここにあると理解して
    彼女のレポートをこれからも追いたいと思う。

  •  ひさかたぶりに凄い本に出会えた。本書を読んで、中国の現状が手に取るようにわかる思いを持った。著者の情報力・分析力・表現力、全てを絶賛したい。
     現在の世界において、かつてないほど大きな存在になった中国。その謎に満ちた政治体制の奥の院を、手に取るように語る本書の内容は、垣間見える中国共産党の姿を完璧に誰の目にも見えるように紹介したようにも思えた。
     「江沢民・上海閥」「胡錦涛・共産主義青年団閥」「習近平・太子党」の権力の構図を、その歴史から現状、関係性、法則、力関係、文化、政治方針、構造にいたるまで詳細に解明していると思えた。
     その内容は、最近明らかになってきた中国共産党の過去の詳細な歴史よりもはるかに深く明晰な分析であり、まさに現在の中国共産党の内情を明らかにしていると誰もが思える説得力に満ちていると思えた。
     「鄧小平の先富論」とそれを実践した「江沢民の三つの代表論」が経済成長を重んじた結果、中国は歴史的な経済発展を成し遂げたが、同時に格差と腐敗を生んだ。
     その後の指導者・胡錦涛は「共富論」と「化学的発展観」を掲げて「平等と安定」を志向するが、平等を重んじれば経済成長は鈍化する。
     それらの「政治方針」と「経済政策」の違いと共に、三つの派閥が織りなす政治ドラマのような中国の内情は、まさに歴史のダイナミズムを実感させるものと思えた。
     それにしても、本書を読むと、この中国共産党と日本の情けない民主党とを比較せざるを得ないと思えた。
     確かに一見中国は民主化を拒む硬直した一党独裁のように見えるが、本書が明らかにしている中国共産党の内情は、決してそんなものではない。一面柔軟とも思えるダイナミズムに満ちている。
     一方民主主義の日本においては、政権党の民主党と野党の自民党が政権を争うという理由で何も決められない泥仕合を演じている。これは政治制度としてどちらが優位なのかと嘆息せざるを得ないと感じた。
     本書終章の著者の経歴と本書を著す動機・経過についても驚嘆する思いを持った。本書を絶賛したい。



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    【要約】


    【ノート】
    ・日経アソシエ7月

  • 2012年3月発行。習近平が国家主席になる前の政権争いの話が書かれている。
    結果を知っている今ではあるが、理解が深まった。

  • これはちょっと前の本なんですけど、中国を動かす共産党の政治局常務委員の話です。当然トップは習近平ですけど、彼らが選ばれていく過程がおもしろいんですよ。みんな、自分が目をつけた有望な若手を育てたうえで、チャイナ・ナインに指名する。そうすると、自分が辞めたあとでも、次の国家主席に強い影響力を持つじゃないですか。「あの人のおかげで自分はこの地位に座れた」なんて思わせるようなやり方でね。

    中国人って自分の影響力を利用しながら、政治を動かしていくのが猛烈にうまいんですね。「権力闘争というのはこんなふうにやるものか」というところが徹底していて、日本の政治家のかわいらしいやり方とは全然違うんです。気に入らなくなったり、敵になったりしたら、一族郎党逮捕したり殺したりするので。すごいですよ。

    (公式メルマガ「ブックトーク」28号より一部抜粋)

  • [以九為政]今や世界第2位の経済大国として、国際社会で大きな影響力を有するようになった中国。その中国の政治を仕切る「中国共産党中央委員会政治局常務委員会」の9人(評者注:本書執筆当時)に焦点を当て、今後の中国の舵取りについて考察を重ねた作品です。著者は、現在の中国の長春市で1941年に生まれた遠藤誉。


    外部からは分かりづらい中国共産党のトップ陣の動きを、制度や歴史の歩みから紐解いていく遠藤女史の筆はまさに圧巻。胡錦濤総書記時代に続く中共中央政治局常務委員の顔触れ予想の結果はさておき、中国の複雑かつ(若干この表現は不謹慎かもしれませんが)面白すぎる人事ゲームを読み解く際にぜひ参考にしたい作品です。

    〜国家の基本構築を決めていくのもチャイナ・ナインである。すべてはそこから発信され、執行機関を全国津々浦々に張り巡らせて、揺るぎのない巨大なピラミッドを形成している。それでいてチャイナ・ナインの中には、表面から見たのでは分からない「ブラック・ボックス」のような、何手も先を読み込んだ駆け引きの力学で動く綱渡りの世界がある。まるでミステリーまがいの複雑な人間の絡みが織り成すドラマが展開され、それが政局を決定していく。これが中国だ。〜

    著者の原体験が中国に対する執念を感じさせる☆5つ

  • なんとなくのイメージとメディアからの断片的情報でしか知らなかった中国の国家、政治、経済、社会の状況、動向や方向性が凝縮されている内容。2012年以降でまた状況は変わってきているが、現代の中国を知るにあたって有益な情報である事には変わりがない。

  • 中国の国家を肌で体験している著者だからこそ、深い感性で把握する中国国家運営の肝から見える権力中枢の全貌が書かれている。これからの中国を理解するための参考となる。

  • 薄熙来事件の時に慌ててチャイナ・ジャッジと共に斜め読みしたのをゆっくり再読。今回の香港の件の背景を理解する為にも読んどかないとと思って。現実に2012年にはチャイナジャッジがチャイナセブンになり、団派の汪洋や李源潮が外れているところに、江沢民と胡錦濤の壮絶な駆け引きがあったんだろうなあと想像。開明派の汪洋(広東省長経験者)が中央にいないのは、香港にとってマイナスになってしまったと思う。そう言えば汪洋の後の広東省長は同じく団派で第6世代ホープの胡春華である。今回の件は広東省長も無縁ではいられない、2017年のセブン入りを念頭に置けばかなり難しいハンドルになるのかも。それを考えるとこの放置政策は判らないでも無い。
    しかし、本編と関係ない、終章の長春包囲から脱出するシーンが凄惨すぎる…。

  •  この本は2011年末に書かれたが、時は中国の胡錦濤政権末期で、中国の政権構造の解説とともに次期政権の顔ぶれを予想している。その結果が分かっている今から見て、ほぼ正解である。中国人や共産党の考えかたと経歴などの事実を基に自ら分析しての考察であり、他の言い分や思いこみではないだけに、洞察力はすばらしい。
     筆者は、幼少期を中国内戦を命からがら抜け出し、長じては中国のシンクタンクで職を得るほどで、上から下まで通じている本当の中国通である。
     中国の分析は、この人がいちばん信用できると思う。
     それにしても、国共内戦の長春包囲を生き延びたと凄まじい人生を過ごしてきたものである。生い立ちのその部分は本書のおまけの部分だが、最も読み応えのある部分である。

  • 2014年の今となっては随分昔の話に感じてしまうが、中国の第五世代の指導層に誰が入ってくるか・・というのは、中国関係者やそこに住んでいる人間からすると、一大関心事項だった。国家主席が誰になるか(結局は習近平になった)や、結局のところ政治的には完全に終わることになる薄熙来は常務委員になれるのか、といった人事に関することから、そもそも9人が選ばれるのか、それとも7人なのか、といったように多くのトピックがそこには含まれていた。

    この本はその結果(18大)がわかる前に、現指導者層を予測するということで、書かれた一冊。著者は中国生まれで日本育ち、成人してからは中国の公的機関の顧問も経験したという立場にあって、外からの情報とインナーの情報をバランスよく配置してあって読み応えがある。中国にそこそこ長くいた人間としては、こうやって「中の人とつながりがあります」的なこと堂々という人は、あまり信頼が置けない・・・というのがあるのだけれど、そこはある程度割り引いて読むほうも考えるしかない(深淵をのぞいている時には、向こうも覗き返しているという文を思い出す)。

    2014年の今となっては結果がわかってしまっていて、当たり外れを語るというのは後だしじゃんけんになってしまって意味がないが、そもそも中国の権力構造がどのようになっていて、意思決定というか「彼らの内側の世界観」がどのようになっているのかを理解するにはうってつけの本だと思う。

  • 中国で生まれ育った著書の命を賭して中国を分析した渾身の一冊。現在の中国の権力構造がわかりやすく、近代の歴史をひもときながら説明されている。

  • 上海駐在中の父に読むように言われて読んだ。「一党独裁」というイメージをなんとなく抱いていた中国の全貌を知る非常に良い機会になった。中国の共産主義を崩壊させるものが「精神文化」であるなら、民族としての「精神」も「文化」も揺らいでいる我々日本は、もう崩壊寸前なのかも知れない…そんな危機感を抱いた。

  • この本は 中国を見る視点が 中国の現実の中から
    歴史的な経過もふまえて、見通そうと努力している点ですぐれている。

    この表題である チャイナナイン という言葉は
    中国が 個人指導ではなく 集団指導であるという
    ことを 正確に言い切っていることだろう。
    それは,文化大革命の反省からきているというのも、
    きわめて重要な指摘である。
    権力が個人に集中することで、大きな誤りを起こさない
    というのは,正しい選択である。

    中国における権力闘争の構図が明確になる。
    中国を牛耳っているのが チャイナナイン。
    現在は チャイナセブン。
    権力の中枢。ここにはいれば 安全圏 という話が、
    今少し変わっているような気もする。
    周永康の拘束は 明らかに 大きな衝撃。
    石油族であり 公安のトップ。
    江沢民派が ジリジリ と追いつめられているような気もする。
    習近平が 江沢民派であるにもかかわらず。

    薄煕来が あせりすぎたんですね。
    自分の年齢が 10年というスパンで考える時に。
    紅衛兵として 暴れた青春期から 
    ひたすら 権力に登ろうとする執念。
    毛沢東回帰。
    『紅色度』という革命度を センサーとする。
    という 隙間を狙ったのは うまいと思う。

    向前看から 向銭看。
    中国の精神文化の衰退。
    男人有銭、就変壊。
    女人変壊、就有銭。
    商品化された性。愛人が商売となる。有名大学まで。
    三陪小姐。2000万人の売春婦。
    麻薬、ドラックにおぼれる人たち。

    現在の中国は こうしなければならない
    という方向性はあるが,なぜこうしなければならないのか
    ということが,明らかにされない。それを明らかにすることで
    弱点や問題が浮き彫りになることが、現政権には困るのだろうね。

    薄煕来がなぜ失脚せざるを得なかったのかは、
    確かに 江沢民・太子党派と団派の権力闘争がありながらも
    チャイナナインで 決定した ということが重要だろう。
    陳良宇の失脚、そして,薄煕来の失脚。
    江沢民派への追究は 強力である。そして、周永康も。
    少なくとも 胡錦濤・共青団派が 
    今後の主流になっていくのは明らかなような気もする。

    反日の潮流は 江沢民の強力な推進によって、形成された。
    反日教育と言われるものは、精神形成の過程で深く刻み込まれている。
    それが きっかけ で噴出するということだ。
    愛国主義、愛国無罪というもの。

    アニメブームによって そこにある 日本の文化が 浸透している
    という遠藤誉の評価は正しいと思う。
    『民主主義の鐘を鳴らす革命の道具』『生きていくための精神の糧』
    人生の夢、人類への愛、学校キャンパス内での恋愛と苦悩、友情の大切さ、希望と絶望、ステキなファッション、ときめく心、性の開放、消費の喜び。
    それは『青春の教科書』であり、『民主主義の教科書』でもあった。 

    終章 未完の革命
    この章が 遠藤誉の 原点なのだろう。
    餓死で死ぬ人々の中で みずからの原点をみつめる。
    この章が 中国という国を 真摯に見つめる著者を形成する。 

  • 中国の権力継承がどのように決まるのか、時間をかけて大国の中枢を掌握していくその伏線の深さ、この本が本当に真実かどうかは要注意だがそれでもスケールの大きさは中国ならではという感じ。後半の著者の体験は別にまとめて方がよい気もするが読み物としてなかなかのものだ。

  • チャイナ・ナインの中にどんなに激しい党内派閥があったとしても、全員が一致していることが1つだけある。それは絶対に社会主義国家としての中国を崩壊させてはならないと言う鉄の理念である。戦争などを仕掛けて、中国の誰が得をするのか。

  • 中国の最高権力者たちは9人の共産党中央政治局常務委員。薄熙来が重慶市書記として権勢を振い、「唱紅打黒」を叫び、今年3月に失脚したことが報じられていますが、この本はその直前。予言が当たったともいえます。しかし薄熙来が毛沢東時代に戻ることをアピールしつつ、江沢民派というのは矛盾に満ちた世界ですが、その謎が解明されていきます。胡錦濤派と江沢民派の権力闘争が未だに続いていること。9人だけではなく、政治局委員に至るまで上海(江沢民)派と団(胡錦濤)派に分かれ、太子党がそれに絡んでいるという構図は分かり易いです。単に、裏模様を示すだけではなく、江沢民=先富派、胡錦濤=共富派という位置づけは明快です。しかし薄熙来が毛沢東時代に戻ることをアピールしつつ、江沢民派というのは矛盾に満ちた世界です。 今年秋の党大会で遠藤氏の予想があたるのか、興味深々です。2011年9月の広東省烏坎村事件という民主的な国民決起があったということは報じられておらず、驚きです。最後の章「未完の革命」で著者が生い立ちを語っているが、1941年長春生れで、53年帰国という人生はもの凄いドラマでした。48年の中共軍の長春包囲の凄まじさ!それが、現在まで流れる著者の理解の根底にあることが良く分かります。

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著者プロフィール

1941年中国吉林省長春市生まれ。1953年帰国。東京福祉大学国際交流センター長。筑波大学名誉教授。理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『チャイナ・セブン 〈紅い皇帝〉習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』(以上、朝日新聞出版)、『完全解読 「中国外交戦略」の狙い』(WAC)、『ネット大国中国――言論をめぐる攻防』(岩波新書)、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』(日経BP社)など多数。

「2015年 『香港バリケード』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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