- Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
- / ISBN・EAN: 9784030034204
作品紹介・あらすじ
アフリカ最奥部の大河コンゴ河を手漕ぎ舟や輸送船で下る旅。それは物の見方を根底から覆す強烈な経験だった。笑いと涙の旅行記。
感想・レビュー・書評
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「旅行ライター」「珍しい国に行く旅行記」は、バックパッカー離れや個人旅行者の情報発信によってニーズが激減していると思うが、そうはいっても、アフリカは北・南・東と何カ国も行った私でもコンゴには行きそうにない。まずその点で面白い。1度目に行った奥さんはすごい。いくら夫婦でも私なら無理だ。衛生や快適と程遠く、何度もマラリアにかかり生理も止まる過酷な旅。ご本人は今度は男性の若者と一緒に繰り返すわけだが。
面白おかしく珍しい国を紹介する旅行記に留まらず、田中氏の叙情的な文章で、コンゴという大自然と脆い体制の国で死と隣り合わせで生きていく人々の暮らしや、その中を旅する日本人としての思いを語る。「ゆるす、ゆるす、おまえなんかゆるしてやる」というおおらかさが作家の個性。そこが最大の読みどころだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
頭木さんの『食べることと~』で紹介されていたので購入。
つくづく世界は広いと思わされる。読むとコンゴ(過去に植民地だったアフリカ諸国)の現状や未来を悲観してしまいそうになるがそれすらもこちら側からの思考であることに
気づかされた。イモムシはまだ想像できるがサル食には少なからずショックを受ける。アイスランドのヤギの頭よりさらに強烈。繰り返しサルの燻製のエピソードややいぶされてるサルの写真やらが豊富に載っているので夢にまで出てきてしまった。それにしても最初の旅に同行した奥さんすごいです。 -
オナトラに乗って丸木舟でザイール河下りを敢行した真知さんは、当時のアフリカ旅行者の憧れの的でした。
モブツ政権の終わり 6年にもわたる民族紛争
武器流出による危険地帯の拡大
厳しいセキュリティチェックと賄賂の温床
20年前と今とで 変わったものと変わらないもの
過去の旅をなぞるように物語は進んでいくので
かなり「読ませる」感じ。
旅の助っ人オギーやたくましい青年シンゴ君
それと著者の田中真知さんの人柄が伝わってくる。
「終わりに」を読み終えた時とても優しい気持ちになり ニッコリしていた自分がいました。
「アフリカの水を飲んだ者はアフリカに還る」の言葉どおり
私ももう一度 自分をなぞる旅ができるかな。
…いろんな思いをこめてブログに感想書きました。
http://zazamusi.blog103.fc2.com/blog-entry-1316.html -
良くも悪くも気持ちを振り回されて、私は旅した訳ではないのに、満足感でいっぱいになった。
貧しさを前にしたとき、できることならなんでもやりたい、助けたいと思うし、相手が目の前にいたらそう約束してしまうと思う。でもそれは無責任で、個人のエゴで、相手を傷つける行為でもあるのだ、と戒めれたし、お金はその場しのぎの解決法でしかなく、相手が自ら続けられるように、教えたり支援していくことが何倍も価値のあることだと諭された。
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1991年と2012年の二回にわたるコンゴ民主共和国(ザイール)の旅行記。一回目は妻と、二回目は首都のキンシャサ在住の若手日本人研究者と。貨客船を中心に数珠つなぎになった船団に乗ったり、スピードボートに乗ったり、丸木舟に乗ったり。同じ行程の旅をのなか悟空さんの旅行記で読んだことがあるが、人によって感じ方がまったく違う。真知さんはこの国を穏やかな眼差しで見つめていく。そうやって見たり聞いたりしたことを柔らかでわかりやすい文体でかみ砕いて書いていく。
「世界は偶然と突然でできている」という言葉が見出しに記された281~283ページの節が素晴らしい。不安定な社会に住む現地の人たちが生きていくため、自然と身につけた偶然や突然な出来事に「折り合いをつけ、わたりあい、楽しんでしまう力こそがここで生きるうえでは不可欠」と結論づけているのだ。
真知さんの本を読むと、こうした心の奥深くに染み渡る静かな言葉がちりばめられているのだけど、やはり今回も期待を裏切らなかった。 -
世界は偶然と突然でできている。それを必然にするのがいきるということだ。それがコンゴ河の教えだ。
ほとんど永遠のような時間にひたされて、体力や精神力や生命力をぜいたくに使いはたして、こんな愚にもつかない、とほうもなくむだで、底抜けにばかばかしい、たまらなく幸福な旅をすることは、もうけっしてあるまい。 -
1991年にコンゴを旅した記録。それも尋常の旅ではなくコンゴ川をクルーズ船でくだる。しかも後半は丸木舟で1カ月漕ぎ続けて降る。
コンゴ川がそもそも尋常ではない巨大スケール。その船も巨大。船と言うよりもはしけで5000人近くが暮らしながらくだっている。乗客は人だけでなくヤギから牛からなんでもあり。運行スケジュールもあってないようなもの。
「世界は偶然と突然でできている」。どこだっていつだって未来は不確かなのだ。だから、ゆるす。今日もあては外れた。「でも完璧な一日だった」。そう思えればいいい。
この一節が旅全体のトーン。
91年といえばまだインターネットもなくいきあたりばったりに偶然と突然の旅が可能だった時代。いまだと事前にネットであらゆる情報が手に入ることで便利になるかわりに旅から偶然と突然が減っていく。計画的にはなるけど不確定性はなくなる。こういう旅ができる時代がたった数十年で消滅してしまったというオマージュともいえる。 -
有り 294.4/タ/15 棚:旅行
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アフリカのコンゴ河(旧名ザイール河)を丸木舟で下った旅の紀行文。写真が豊富で楽しい。
アフリカ旅行記と言えば[ https://booklog.jp/item/1/4105058517 ]、[ https://booklog.jp/item/1/4087455955 ]を思い出す。どれも強烈な体験。
本書で印象的なのは1991年と2012年の2回旅をしている点。1回目は著者が若かったこともあり、現地での体験が割合素直な鮮烈さで書かれている。特にオナトラ船は衝撃的。動力船が1艘で、4台の大きなはしけを押していく。船中には人も家畜も店もあり、年単位で住んでいる人もいるという。「コンゴ・ジャーニー」でも荷物山積みで乗客が簡単に落ちて死んでいく物凄い船の描写があった気がするが、同じものだろうか。
2回目の旅では著者の観察もより深まり、見聞きするものだけでなく、現地を取り巻く政治情勢や、21年間に起きた変化を振り返りながら語られる。一番大きな変化は治安の悪化。1997年のモブツ政権崩壊後も紛争が収まらず、収賄が横行しているという。独裁政権が倒れた後かえって治安悪化したというのは、シリア等他の地域でも聞く話だ。
紀行の面白いのは、新しい価値観の発見。色々と名言が出てくる。
「来る日も来る日もくりかえされる、あきれかえるほど不条理な一日の終わりに目にする夕暮れのコンゴ河の風景は、絶景などというありきたりな言葉ではとてもいいつくせない。それは、この旅のさなかに、いくたびとなく口にした『ゆるす』という言葉そのもののように思われた。それは、なんというかベラボーなゆるしだった。(p292)」
「タフであるとは肉体の強靭さとか不屈の意志ということとはあまり関係ない。むしろ、思いこみがはがれ落ちても、中身の自分が意外と大丈夫だと気づくことではないか。(p251)」
本書が好きな人には、旅行が主眼ではないものの[ https://booklog.jp/item/1/4334039898 ]、[ https://booklog.jp/item/1/4344984633 ]等も面白いかもしれない。 -
奥さんが偉い!よくもまあ、こんな旅に着いて来てくれる。危険が少ない時代であったろうが、不潔さ不便さが尋常ではない。