- Amazon.co.jp ・本 (185ページ)
- / ISBN・EAN: 9784035509608
感想・レビュー・書評
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H30.1.28 読了。
・「テストごとに点数順にすわる場所をかえさせる、という実にいやらしい教師がここには出てくる。こういう傷つけかた、いやらしさに対抗するのは難しい。それを変えていったのは例によってスーパ-ヒーローではないごく平凡な男の子。」・・・解説より。
児童書だと思って読んだら、面白かった。
もっと早く出会いたかった本の一冊になりそう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
毎日そこで過ごしている人には分からないことをよそからやってきた人が気がつくってことあるよね。
この物語は、4年1組にやってきた転校生の木島始くんが”それ”に気がついたことから始まるんだ。そう、始めは始くんからってこと。
始くんのお父さんは、仕事でとにかく人に負けないように、つねに勝つようにって、働きすぎてがんばりすぎで無理がたたって亡くなってしまった。お母さんは始くんに、「がんばるっていうことが、人に勝つっていうことだったら、そんな頑張り方はしてほしくないわ」って言う。
そんな始くんが転向したのは、担任の市田先生がなんにでも順位を決めて、その順位で席替えをするというクラスだった。
転向初日に始くんは不思議なものを見た。透き通った男の人、20センチ位で、くたびれた背広で背中に羽が生えている。
その男は、クラスの生徒たちの「びりになったという気分」から生まれた”びりっかすの神様”だったんだ。
始くんは、びりっかす神様と一緒にいるためにわざとビリをとった。そのうちに、ビリをとった他の生徒達にもびりっかす神様が見えるようになり、そして一度見えた生徒たちは心で会話ができるようになっていったんだ。
がんばるってどういうこと?
自分が加わっているこの競争は本当に価値があるの?
明らかにハンデがある相手と競って自分が勝っても気分が良くないけれど、わざと負けたら相手はもっと嫌な気分になるよね?
自分も相手も嫌な気分にならずにがんばるってできるのかな?
こうしてクラスのみんなは真剣に話し合い、そして本気でやるということこそが楽しく嬉しい気持ちになれるんだって思うようになったんだ。
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がんばること自体が悪いのではなく、がんばる気持ちの元と目的によって、それは辛くもなるし、楽しくもなる。
最初はこのクラスは、担任の先生により順位を競い他の人より優位に立つことが正しいと思ってしまって、それはいびつなクラスメイト関係となっていました。
しかしみんなで高め合うということに自分たちで気が付きます。
そしてラストの”種明かし”により、先生自身も心の奥底では疑問を感じていたようですね。
”がんばる”の反対は、”かんばらない”ではなくて、”気持ちを変える”というお話でした。 -
評価が高いので読んでみた。児童書なのでサクっと読めた。私にとったら正直なところまあ普通かな、って感じだった。小学生に読ませるには良いかもしれない。いや、むしろ大人の方が良いかも。
主人公の男の子は転向した学校で小さな大人の姿をした神様を見る。その神様はビリにならないと見えないらしい。その神様を見るために少年はわざとビリを目指していく。その神様を見たくビリを目指す子どもたちが増えていって・・・。
なんでも一番を目指すことだけが正しいことではない。そして頑張れと言うことも。ただ、一生懸命にやることは大切なこと。そんなことを教えてくれる。そんな作品だ。
「がんばれ」にも2種類ある。考えさせられた。 -
小学生向けの推薦本として定番のようなので、興味を持って読んでみました。
結果、期待どおり、面白い。
成績順に席を座らせる先生。今だったら倫理的に大問題でしょう。
ただ、進学塾などでは普通にやられていることだったり。リアリティはあります。
そんな息苦しいクラスに、転校生である主人公が、マイペースに新しい風を吹き込んでいく。
競争することが必ずしも価値ではないということが、この話の価値観だけど、それが説教臭くうすっぺらくならないのが凄いところ。
何より、主人公達が見る「びりっかすの神様」の存在そのものがわくわくする。それは、ある意味藤子不二雄の漫画のように、ドラえもんだったり、オバQなど、異物を媒体にして、社会の息苦しさに風穴をあける。という物語が気持ちいいのに良くにている。
そして、子ども達は、大人に見えない、びりっかすの神様を見る事で、秘密を共有し、しだいに活き活きとしてくる。
普通に自分らしくいること、社会で過ごす上で、これがいかに難しいことか。
しかし、勇気をもって、自分を見つめることで、自分を認められる。このことをこの物語は、子ども目線で語ってくれる。
なにより、筆者の子ども達への信頼、可能性へのロマンが力強く伝わってくる。
家の子供も、この本を面白いと言っていたが、この物語の面白さに惹かれているようだった。
道徳の時間のような教訓めいた話の面白さではないところが絶妙だと思う。 -
読み始めたときは、白い透明の男はなんなんだと、思いました。
でも、読んでいるうちに透明の男は、「びりっかす」だと分かりました。
この本ははビリになって、「悔しい」、「悲しい」と思った人にオススメです。 -
小4の始(はじめ)と「びりっかす」との間でこんなやりとりがある。
-いいのか、おまえ。
びりっかすが、おこったような声を、始の頭のなかでひびかせた。
-なにが。
-なにがって、こんなにばかにされるってのは、おまえがびりになってるからだぜ。
-いいんだ。
-どうしていいんだ。くやしくないのか。
-そりゃ、気分はよくないよ。けれど、そんなことより、ぼくはきみとはなすことのほうがおもしろいんだ。
クラスでの競争(なんでもいい。テストとかの勉強面でもいいし、50m走とかの運動面でもいいし、あるいは給食を食べ終わる早さとかでもいい。)では、1番(トップ)がいる一方で、当然ながら最下位(ビリ)もいる。転校生としてビリからスタートせざるをえなかった始は、偶然、ビリになった者にしか見えない「びりっかす」の存在に気づく。
ここで話をこの本の前段に戻すのだけれど、始が転校した理由は、お父さんが急に亡くなったからでもあった。始のお父さんは「人に勝つため、がんばる」ことを目標にするような人だった。始にも日ごろから「がんばれ」と言っていた。だけど、がんばりすぎてあっけなく死んでしまった。そして始のお母さんは始に言った-「ひとに勝つことが、がんばるっていうことだったら、お母さんはあなたに、がんばってほしくなんかないのよ」と。「がんばる」と意識しなくても、人よりかはちょっとできるようなタイプの始は、「がんばらない」生き方がどんなものなのか、どうすればいいのかがよくわからない。そんな状況でポンと全く知らないクラスの中に投げ込まれた。新しいクラスでは授業のたびに10分間の小テストをする。クラスメイトはもう慣れた感じで答案に向かうが、始にはみんなの顔が「のっぺらぼう」に見えた。いや、始にははっきりと表情が見えた人物が1人だけいた。それが「びりっかす」だったというわけ。
「びりっかす」はどう見ても「がんばって」いるようには見えない。むしろ「がんばる」とは正反対の外見や態度だ。でも「がんばる」クラスの雰囲気のなかで「がんばらない」びりっかすの存在と、それが自分だけに見えているという事実とに、始は強く興味を引かれる。だってその“特権”は、「がんばって人に勝つ」ことから完全に離れることができた子どもだけが得られると気づいたから。
ここまでのあらすじだけでも十分おもしろいでしょ?でも中盤から、クラスで始の次に、つまり2番目にビリの女の子「みゆき」が出てくると、もっとおもしろくなる。私は前から思っていたのだけれど、岡田さんが書く(特に女の子の)キャラクターは本当に生き生きとしている。どのクラスにも1人はいそうな子だけれど、物語のはじめと終わりとを比べれば、その子の個性の成長の跡がきちんと書かれている。つまり書かれている小学生はみんな等身大で、まるで実在したモデルがいたかのようだ。
こういう学校ものとファンタジーものとのミックス作品は、現実と非現実とのバランスが大切。非現実な部分も読者はそれを前提として楽しんでいるのだけれど、そっちが強くなりすぎるとどうしても読者の実体験の感覚からは離れていき、「作り物」という感覚が心に満ちてきてしまう。だが岡田さんが創作するストーリーの最大の魅力は、この本のような「現実感」だろう。今の私には小学生の子どもがいるが、実際の教室で、私の子どもを含めたクラスメイトと、その間を飛び回る「びりっかす」との様子をこっそりと見ているような感覚。もちろん羽をはやした「びりっかす」なんて実在しないけれど、机の間を歩き回る先生がそう見える瞬間があるかもしれない。このリアル感はまさに岡田さんが学校現場にしっかりとたずさわっていたことを証明するものだ。 -
子供の読み聞かせに。奥深い作品でした。
「人に勝つことががんばるっていうことだったら、お母さんはあなたにがんばってほしくなんかないのよ。」人より抜きん出るためにがんばり続けたお父さんが亡くなって、お母さんとともに引っ越しして転校することになった始(はじめ)。転校先のクラスは成績順で席が決まっているという。そこでフワフワと漂うおっさん天使、びりっかすさん。
ビリをとるとびりっかすさんが見える、と言って仲間が増えていくところ、みんなそろってビリをとるために助け合うところ、だんだん最低点が上がっていって、満点だけどみんなビリというところがおもしろかったです。やつれていく先生は気の毒でしたが、最後は丸くおさまって良かったです。
がんばるって、誰かに勝つためじゃなくて本気でやるってこと、本気でやってそれが評価されたらうれしいよね、誰かと比べてどうこうではないんだよ、と言ってくれる本でした。子供にも伝わってるといいな。 -
この本の場合は「クラス」が舞台だが、社会に置き換えると、社内で社員同士競争させるよりも、協力したほうが生産性がアップするという、当たり前のことが書かれている。子供時代から児童文学には触れてこなかったが、大人になって、その価値がわかった。
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久しぶりに 読みました。
10年くらい前だったので
ラストってどうだったけ??
と 思い出せなかったなので再読しました。
新しく転校していった学校になじむ前に
なんと 神様?に出会ってしまって
それがきっかけで クラスメイトと仲良くなっていくその神様? は なんと びりっかすにならないと見えないのであった。
さてさて そういう時は どうやって
友達と一緒に見ますか??
クラスが一つになっていく
ほのぼのとした 物語です。
この人の 「竜退治の騎士になる方法」も 面白かったし 「二分間の冒険」も 面白かった。。。
いつか 時間がある時に 再読したいですね~~