ヴァン・ゴッホ・カフェ

  • 偕成社
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感想 : 47
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  • Amazon.co.jp ・本 (98ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784036310500

感想・レビュー・書評

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  • ヴァン・ゴッホ・カフェはアメリカのカンザス州にある。でも第1章を読み終えたとき、ある疑問が生じた。だってこのカフェには、レジの上に“BLESS ALL DOGS”(犬も歓迎)という札がかかっていたり、女性用トイレの壁にむらさき色のアジサイが描かれていたりはするけれど、肝心のゴッホの絵が掛けられているという記述はない。つまり仮定の話としてこのカフェに行く機会に恵まれて実際に行って中に入ったとしても、店内でゴッホをイメージさせるものを見つけることは難しいはずだ。

    だったらオランダともゴッホとも縁がないように思われるこの店は、なぜ「ヴァン・ゴッホ・カフェ」と名付けられているのだろうか?
    それを見つけようとして第2章以降へ読み進めていった。すると、店を切り盛りするマークと、その娘で10歳のクララと、店を取り巻く様々な不思議な客や不思議な現象についての数々のエピソードによって、本当に「魔法」にかかったかのように、彼ら彼女らが実際に存在することを素直に信じられるような感覚になっていった。つまり、美術館などで、ゴッホが描いた夜空の星々やひまわりを見た私たちが、それらこそがゴッホにとっての真実であり実在の姿なのだと気づいて心が充たされていくあの瞬間と、まさに同様だ。そして、なぜゴッホの名前が店に付けられているのかを探るような考えは後退していった。

    だがゴッホに関する詮索をすっかり忘れていたところに、最終章になって、まるで作者が満を持したかのように唐突にゴッホに関する話題を出現させてくるのに目を引き付けられた。-「このカフェが名まえをもらった画家は、一生にたった一枚の絵しか売ることができなかったという。」-

    その一節を読んだとき、私はこの店がヴァン・ゴッホ・カフェと名付けられた理由を探すことをやめた。なぜなら、今を生きる私たちは、ヴァン・ゴッホの生前に売れた絵の枚数がどうであろうとも、彼が素晴らしい作品を生涯のうちに残していたのを知っているから。売れなかった画家の作品が、その死後に呪文が解けるかのように人々の心に芸術の花として開いたという魔法のような展開を私たちが理解できるのと同様に、片田舎にあって何の変哲もないけれど数々の魔法のような物語を起こすことができる喫茶店が、それゆえにヴァン・ゴッホ・カフェという名前で呼ばれることを素直に受け入れられると思ったのだ。

    と言うよりも、作者がこの本に潜ませた魔法に、読者はゆったりと心をゆだねるだけでいいのでは。作者は他の本でよくあるような、人を傷つけたり騙したり中傷したり差別したりという物語をこの本ではまったく書いていない。ゴッホの絵もそうではないか。

  • カンザス州フラワ-ズの町のメインストリ-トに、むかし劇場だった建物の片隅にあった「ヴァン・ゴッホ・カフェ」。このカフェのオーナ-は、若い<マーク>と、その娘<クララ>10才のふたり...まるで夢の世界のような、ミステリ-のような、素晴らしい油絵のような、「魔法」のつきまとう、ニュ-ベリ-賞受賞作家<シンシア・ライラント>のファンタジックなカフェの物語。 ちょっと立ち寄って、コ-ヒ-とパイとマフィンをオーダ-したくなる “愛犬・大歓迎 (BLESS ALL DOGS)”の小さなカフェ。☕

  • 児童書です。素敵な装丁です。
    芸術には詳しくないですが、ゴッホの絵は好きです。
    自粛期間中に3ヶ月程かけて「夜のカフェテラス」のパズルをやったり(ものすごく小さいピースで難しいやつ)、いなりマーケットで「星月夜」を待ち望んだり(あつ森)、リビングのカレンダーを決める際にゴッホの名画カレンダーを推したり(結局ピカソになりましたが)しているのを見ていたからか、子どもがこの本を貸してくれました。
    「まるで夢のような、ミステリーのような、すばらしい油絵のような」お父さんと娘が営むカフェのお話です。
    「作家志望の男」が一番好きです。子どもにはよくわからないようでしたが、、静かにじんわりあったかくなるような一冊でした。

  • ファンタジー?こういう魔法がちょこっと起きたら楽しいね。猫がかもめに恋したり、マフィンが増えたり。かもめのヒッチハイク見たい〜(≧∇≦)b

  • 映画みたいなお話、カンザス州の広い道路沿いにあるお店が目に浮かぶよう。

  • 「ご注文は?」と聞かれたら「コーヒーを」と答えるのはもちろん(ここはカフェだから)、「ここが、好きなときにわたしの帰る場所であること」と答えてもいい(だってここは魔法が宿る元劇場のカフェだから)。
    読み終えて真っ先に頭に浮かんだのは、この店と同じ名を持つ画家の描いた〈星月夜〉という絵。
    魔法はぐるぐると渦を巻くきらきらの夜空みたい。訪れる人たちを次々と巻き込んでいく。迷っているものをあるべきところにまるく収めるのがカフェの役目。いつでも素敵な予感と清潔な秘密を胸に抱いていることが、魔法が長続きする理由なのかな。

  • ほっこりしました。
    「おかえり、ここはきみの家」の曲を聴きたいです。
    きっと、小さな魔法は そこらじゅうでおこってる。
    その小さな魔法に気付けるように私はなりたい。

  • 夏休みに帰省した時のお出かけで、たまたま素敵なブックカフェを見つけました。そこで出会ったのが、ヴァンゴッホカフェ。ゴッホの絵は好きだし、装丁もめちゃんこ好み!これは連れて帰るべきでしょう!と。

    さて…内容は、期待してたゴッホにまつわる話はまるで無し。舞台もオランダでもパリでもなくアメリカだし苦笑。カフェを営むオーナーとお客さんの少し不思議な、でも素敵なエピソードの数々。

    のんびりお茶を愉しむように、ゆっくり読み進めています。

  • 1960年代のミニシネマ見てる感覚

  • 魔法がつきまとうとか、あふれるとかいう表現は、私なら、思いつかなさそうです。なんか落ち着く物語です。

    • ポンタリエさん
      立ち寄るとみんながちょっと幸せになるお店。
      いいですね。
      立ち寄るとみんながちょっと幸せになるお店。
      いいですね。
      2012/06/27
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著者プロフィール

1954年、アメリカのヴァージニア州に生まれる。
大学卒業後、図書館員などを経て本書を発表し、コールデコット賞オナーを受賞する。絵本、詩、幼年童話、小説などで、幅広く活躍。『メイおばちゃんの庭』(あかね書房)で1992年ボストングローブ・ホーンブック賞、93年ニューベリー賞を受賞。ほかに『ヴァン・ゴッホ・カフェ』〈小石通りのいとこたち〉シリーズ(以上、偕成社)『名前をつけるおばあさん』『ゆき』(以上、新樹社)などがある。

「2012年 『わたしが山おくにすんでいたころ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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