- Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
- / ISBN・EAN: 9784036352500
感想・レビュー・書評
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読みたかった本。ファンタジーで数多くある異世界転移ものだけど、黒猫の登場や男の子の名前をさん付けで呼ぶこと、とげぬきがキーアイテムなど細かい所が好みだった。また書かれた当時よりあちらの世界が現実味を帯びてるのも興味深い。
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面白い。
この本を一気読みできた時間は本当に一瞬だった。
心地よい陶酔感を味わった。本の醍醐味。
言葉に無駄がなく、展開は予想を越えてくる。
時間がテーマの作品で、いきなりけっこう怖い部分が来る。
掛け算知ってる?のところ、なんだかゾッとしてしまった。
少ないヒントから冷静に切り崩して、竜との戦いと、ダレカの謎に挑んでいく。
主人公、悟は賢い。
岡田淳さんの本は初めて読んだけど、すごく面白かった。他の作品も読んでみたい。 -
再再読くらい。
初めて読んだのは、小学校高学年の時。
親に連れて行ってもらった図書館で借りた時の風景をぼんやりと覚えている。
表紙の恐竜が不気味で、当時文字数も多く分厚いと思ったけれど、意外とすんなりと読めた。
薄暗い少しおどろおどろしい不穏な世界の中で物語が進んでゆき、少し怖いと感じていたように思う。
四年生頃だろうか。
再読は割と最近。数年前?
懐かしさと、やっぱり岡田淳さん面白いよなーと思いつつ読んだ、と思うけれどあまり覚えていない。
そう、詳細をあまり覚えていなかったため今回再再読したわけだが、記憶が曖昧だった故に、黒猫ダレカが言った『いちばん確かなもの』が何か全く分からず、図らずもネタバレなしで最後まで物語を楽しめてしまった。
そうか、竜が確かなものなのか、な?と思いながら、そうか、かおりかもしれないな?なんて思いながら、最終的には、あ、そうか、それもそうだよな、と提示された答えに納得して終わった。とても単純な読者である。
単純ではあるが、結局『いちばん確かなもの』はソレでしかありえないよな、と思う。まぁ、ダレカがソレになっている、という点に少々疑問は残るが…。
岡田さんの設定する世界のルールは少し独特で、今までにもありそうな設定なのに、それでいて全く違うものになっている。児童書だから優しい世界かと思えば、そうでもなくて時々ひどく残酷だったりするところも、あるいは魅力かもしれない。
どの話も、主人公たちが巻き込まれた不確定な世界の中で、その世界のルールやしきたりを謎解いて行ったり、自分たちなりのルールや考え方を確立していくところが面白い。
こちらはそれを読みながら、そうか、そうかもしれないなと納得したり、いやでもよくわからないな、と思ったりする。そして自分がこの世界に巻き込まれたら?と想像することは、それこそがファンタジー世界を楽しむ読書の在り方の一つのような気がする。
今回読んで思ったのは、岡田さんの話の多くは、「仲間との協力が強い」ということを嫌みなくさらりと盛り込んでいるということだ。
夢の世界でいばらの蔓が伸びまくる話(タイトル…)も、『びりっかすの神さま』も『ムンジャクンジュ』も、そういうことが話の中に入ってくる。
やはり、小学校の先生をされていたからかな?
シンプルで、とても大切なことだと思う。
でも別世界トリップ小説としては、個人的には『光の石の伝説』の方が面白かったかな。
自分の価値観を自分でしっかり持つということ、常に考えるということ、仲間と協力するということ、そんなことを考えさせられる読書だった。 -
実はとっても文学的なお話しでした。
思いのほかLoveもあり…
トゲぬきを拾った悟が、保健室に届けようとすると、先生から2分以内に戻ってこいよ、と言われる。
その2分間のできごと…
黒猫から、見えないトゲを抜いてくれと言われ
知らない森の中へいざなわれる。
そこは、子どもだけのおかしな世界。
その世界を支配する竜を退治することになる。
ここでの時間はたっぷりあるが、もとの世界に戻るには、"一番確かなもの"を探さなくてはならないのだった。
岡田淳さんの作品って、いつも現実とファンタジーの間がとっても近いというか、ほんの少し足を踏み外しただけのような感覚があります。
なんというか、結果よりも子どもたちのかかわり合いの方に視点があるので文学的なんですよね。 -
★4.0
「ふたつある時間の、伸びたり縮んだりするほう」
時間は伸び縮みするらしい。『いちばんたしかなものは?』不思議な問いの答えを探して、少年は冒険する。
遥か昔子どもの頃読んだ本で、再読したかった本。
児童書なので2時間もあれば読めてしまう。
ヒーローズジャーニー理論がぴったりと当てはまる、優秀な児童書だった。要約してしまえば、異世界へ行って剣を手に入れて竜を倒し元の世界に戻る、なのだがそんな単純な話では終わらない。
"謎かけ"が重要なポイントなのだが、なんだかいちいちおしゃれにみえる。
「見えているのにけっしてとどかず、生まれてから死ぬ前の日まであるもの。それは何だ。」などなど。
まさかのデカルトを感じる瞬間もあったりする、大人も楽しめる本だった。 -
小学生の男の子が別の世界で「たしかなもの」を探す旅。自分、仲間、時間…。結局自分でしかないけど周りに仲間がいてこそ自分が形作られて。思っていたよりもすごく読みやすくてすぐ引き込まれて一気読み。おもしろい。いやあ良質。こういう物語を手渡したい。
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初版の1985年にはすでに大人になっていたので、今まで出会うことなく過ぎてきた本。でも本屋の棚で強烈に心惹かれて購入。
今の私にとって必要な本だったと思う。
二転三転する展開や、竜、剣、戦い、謎の老人など、ファンタジーの要素が満載で、非常に勉強になる。
それだけでなく、いつの時代にも通用する、「協力し合う心」とか「自尊心」「自分を大切にする心」を、押し付けがましくない形で読ませてくれる。
竜の館までの旅や、戦いの様子などは、胸がワクワクするような冒険で、現実の世界へ悟が戻ってきたときには、読んでいる私まで時間を超えたような気がして、めまいがした。
時計の針が教えてくれる時間だけが時間だけではない。たった二分間でも、遠く深く旅することができるのだ。簡単な答えに満足せず、逃げ出さず、粘り強く思索の森へ入り込むことが成長の一歩でもある。
竜の出すなぞは、スフィンクスの謎のようだ。