クラバート

  • 偕成社
3.97
  • (194)
  • (121)
  • (177)
  • (13)
  • (2)
本棚登録 : 1324
感想 : 170
  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784037261108

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  何人かのブク友さんの本棚で目に付いた、この奇抜な表紙の絵。鮮やかな色彩の鳥…顔は人間で帽子を被っていて、こっちを見ている…に取り憑かれて読んでみることに。
     作者はドイツ児童文学界の巨匠、プロイスラー氏(恥ずしながら全然読んでない)。挿絵は、プロイスラー氏とよくタッグを組んでおられるらしい、ヘルベルト=ホルツィング氏。中に使われている挿絵はモノクロで紙版画のように味がある。
     これも何人かの読者さんのレビューによると「千と千尋の神かくし」の元になったお話らしいが、私には「ハウルの動く城」に影響を与えているように感じた。確かハウルでもハウルがカラスになって飛ぶシーンがあったし、魔法の先生に反抗する場面もあったし、魔法使いが戦争に魔法使いとして駆り出されるのも同じだ。
     読み始めると不思議に惹き込まれる。ある日、主人公クラバート少年が夢の中で十一羽のカラスに名前を呼ばれ、「シュバルツコルムの水車場に来い!親方の声に従え!」と言われる。
    なぜだか分からないが、少年はその夢に従い、件の水車場に行くと、ろうそくに照らされた黒い部屋にされこうべ。そして、黒い服を着て、黒い眼帯をした青白い顔の男が座っている。その男はその水車場の親方であり、魔法使いである。親方に「弟子になりたいか?」と聞かれ、自分の意思とは無関係に「なりたいです。」と言ってしまう。
     水車場には既に十一人の職人がいて、規則正しい生活をしている。親方にこき使われ、みんなキビキビ働いている。週に一回は魔法の授業がある。
    先輩の職人たちがクラバートを助けてくれたり、色んなことを教えてくれたり、時にはお祭り騒ぎをしていい日もあるので、暗い感じはしないのだが、不気味な謎もある。毎年、大晦日の晩には、職人の中の誰か一人が何者かによって殺され、その後、死んだ者のことは、初めからいなかったように忘れなければならないのだ。職人たちはこっそり助けあうのだが、親方に愛とか友情とか人間らしい感情を悟られると自分や周りのものが危険な目に合う。親方の目をくらませてこっそり愛や友情を育もうとしても、色んな生き物に姿を変えた片目眼帯の親方に見られている。そして、水車場から逃げ出すには、たった一つの方法で親方と対決しなければならないということを知る。
     カバーの折り込んだ所に、「生死をかけて親方と対決する日がやってくる。」と書いてありますが、流血沙汰の戦いではありません。元は、ドイツのラウジッツ地方(ポーランドとの堺)に伝わる伝説であったのをプロイスラー氏が膨らませて作品にされたもので、ヨーロッパの田舎の昔話を元にしたファンタジーらしい美しい光景も描かれています。最後はまるでジブリ映画の終わり方のようにほっこり、キュンとする終わり方です。

    • nejidonさん
      Macomi55さん、こんにちは(^^♪
      ステキなレビューですね!
      ずいぶん前に読んで忘れかけていた部分も思い出すことが出来ました。
      ...
      Macomi55さん、こんにちは(^^♪
      ステキなレビューですね!
      ずいぶん前に読んで忘れかけていた部分も思い出すことが出来ました。
      大人になった今読むと「暗い話だな」と思うかもしれません。
      でも子供だったから何の違和感もなく受け入れて、しばらく感動していたように思います。
      ファンタジーと言うと敬遠する現実的な大人が多いのが本当に残念になる作品。
      児童書と思えない、素晴らしい本ですよね。
      清々しくなるレビューでした。ありがとうございます♪
      2021/01/14
    • Macomi55さん
      nejidonさん、いつも有難うございます。
      nejidonさんは、子供の頃にこの本を読まれたのですね。羨ましいです。私は、子供の頃にこの本...
      nejidonさん、いつも有難うございます。
      nejidonさんは、子供の頃にこの本を読まれたのですね。羨ましいです。私は、子供の頃にこの本に出会っていたとしても、こんなに長いお話は読めなかったと思います。
      ファンタジーといっても、過剰な描写はなく、ヨーロッパといっても現在そこから連想する壮麗さはなく、中世?の質素で素朴すぎる風景に子供よりも大人のほうが入りやすいようにも思います。
      親方とクラバートが馬車に乗ったまま空を飛ぶあたりが一番ファンタジーっぽいと思うのですが、そこも色彩豊かなキラキラした世界というよりも、例えるなら、ろうそくの光でお話を聞きながら、精巧な切り絵細工を見ているような静かな幻想の世界でした。分かりにくい例えですみません。
      空気の澄んだ世界観でしたね。この良さをうちの子も分かってくれると良いなと思います。
      2021/01/14
  • 二人の仲間と一緒に浮浪生活を続けていたクラバート少年。ある日夢の中の強い呼びかけに誘われて、魔法使いの親方が運営する水車小屋で働くことになる。
    14歳の少年の3年間の成長を、ラウジッツ地方(旧東ドイツ東南部からポーランド西南部)の伝説をもとに著者が再編した物語。

    著者プロイスラーの「大どろぼうホッツェンプロッツ」シリーズは子供のころ夢中になって読んだ物語の一つである。悪者だけどちょっと間抜けなところもある大泥棒にクスッとさせられつつも、主人公の少年たちが魔法使いの家で過酷な労働を強いられる描写は、子供心にとても恐ろしかったことを覚えている。

    この話の主人公、クラバートも、両親を早くに亡くした後、引き取られた牧師の家を早々に逃げ出し、浮浪児として過酷な環境を生きることを選択する。
    水車小屋にやってきたクラバートは、最初はご飯と寝床にありつけてラッキー、という風にしか思っていない。厳しい労働でへとへとになるが、何かと気を配ってくれる職人頭のトンダや、厨房を担当するユーローなど、よい仲間にも恵まれ、魔法で力を持てることもうれしいと思っている。
    しかし、自由に行動することも愛する人に会うこともできず、自分の生命さえ支配される生活に、彼本来の独立心が目覚め始める。

    見習いだったクラバートが次第に自分の意志を強く持つようになり、信頼できる友人の助けと自己犠牲をいとわない女性の愛を得て親方と対決するクライマックスは、手に汗を握る展開で、ドラマチックである。また、水車小屋に来たばかりのころはトンダにフォローされていたクラバートが、2年後にはトンダと同じように見習の少年をフォローするようになっていて、彼の成長になんだかほろっとする。
    残酷な描写もあるが、少年の成長譚、冒険譚として楽しく、清々しく読むことのできる物語である。

  • この書は一応児童書扱いであるのだが、どうしよう…
    信じられないほど夢中になってしまった(汗)
    今まで読んだ書の中で一気にベスト5内に躍り出てしまったではないか!
    ブラックファンタジーとでも言うのか、不思議な世界とダークな世界が渦巻いており、無彩色な映像が続き、常にピーンとした緊張感がある
    かなりの好みである(ぐふっ♪)
    しかしホントに児童書かね?

    小学校の教師から専属作家となったドイツ児童文化作家のプライスラーの作品

    ドイツ伝説集の中にある、「ラウジッツ地方」の伝説(場所はドイツの東部からポーランドの西南端にかけての一帯であり、当時はドイツ領
    ここはドイツ人(ゲルマン民族)の他に、ヴェント人(中スラブ系少数民族)がおり、そのヴェント人のクラバートについての伝説がおさめられていた)
    こちらに感銘を受けた著者が11年もかけ練り上げた作品
    年月の重みと丁寧な作品を思う存分に味わうことができる

    注)多少のネタバレあり

    クラバートは14歳
    この気の毒な少年は両親がおらず、村から村へ渡り歩き、家のない浮浪生活をしていた

    ある時から奇妙な夢の中で11羽のカラスに
    「水車場に来い」
    「親方の声にしたがえ」
    と導かれるようになる

    親方の弟子は11人と自分
    水車場の見習いになる
    過酷な製粉の仕事だったが
    食事はたっぷりある、家もある、暖かく清潔な寝床…
    そう彼にしてみればなんの不満もない夢のような場所なのだ
    最初のクラバートこんな呑気な感じだ

    過酷な労働と不思議な慣習
    不可思議なことを誰もが口を閉ざし教えてくれない
    「時が経てばわかる…」
    職人頭のトンダがそう言う
    そしてそのトンダがこっそり何度もクラバートを助けてくれる
    親方や心ない同僚に見つからないように、そっと

    週に一回、親方は魔法を教える
    強制されない程度の教え方だが、クラバートは熱心に学ぶように…
    魔法の術に通じれば他人を支配できる
    いつしか頑張れば親方と同等の力をつけることができる…と考えるようになる

    「なんでも魔法でできるのにどうしてまだ働く必要があるのだい?」
    「そんな生活はすぐにうんざりしてしまう
    人は働かなければけっきょくはだめになり、おそかれはやかれ破滅するほかないのさ」
    そんな教訓も仲間から学ぶクラバート

    ここでの1年は実は3年の経過を意味する不思議な異空間
    外に出るには親方の許しがいる
    暗く立ち込める死の影
    水車場では毎年1人減り…そして1人増える
    「水車場で死ぬものは、そんなやつはぜんぜんいたことがないように忘れられる
    そうすることによってのみ残った他のものは生きていけるのだ」 
    謎と秘密の多い親方
    親方にはさらに親分(大親分)がいる…
    理由はわからないものの、肌で感じ、何か「普通でないこと」を察するクラバート
    ここに居ちゃいけないんだ
    そうか親方と対峙しなくてはいけないのだ
    自分を守るためならどんなことでもするおぞましさ、人の心を操るえげつなさ、そしてずる賢く容赦ないやり口…
    こんなラスボスである親方にクラバートが本当に立ち向かえるのか…⁉︎

    だがクラバートは徐々に成長し、頑張るのだ!
    この成長ぶりは見ものである(児童書にややありがちな、わざとらしさや、みえみえさがないのでとても自然に描写される)
    仲間とのやり取りもなかなかだ
    裏切り者や嫌な奴とも不器用な奴とも、味方も敵も…
    それなりに協力してやっていかなくてはならない
    そして個性的な彼らもそれぞれ内に抱えるものや、複雑な思いがあるのだ(ユーロなんか大好きになった!)
    (さまざまな教訓も散りばめられているのだが、このあたりも嫌味のない表現が多く、読んでいてニヤリとしてしまう)
    訳の分からない状況でも与えられた環境でユーモアを忘れずに逞しく生きるクラバート
    そして、いつしか自分もトンダにしてもらったことを、新参者の少年に…
    そうトンダがいなくなっても彼はクラバートの心の中にいつも存在した

    児童書だからって媚びてない!
    恐ろしいことや残酷なことや悲しみも実に容赦ない
    そのためこちらも身体を張って…いえ心を張って
    体当たりで(心当たり?で)読んだ

    わぁ、どうしよう止まらない!
    あぁ、でも終わってほしくない
    夢中になる手を止め、ちょっと我慢してみる
    でも気になる……くぅ

    この不思議な世界に浸っていたい
    クラバートがどうなるのか
    無事脱出し飛び立つことは可能なのか?
    …と同時に、この歪んだ不思議な世界がなぜか気になって仕方がなかった
    どんなカラクリでどんな掟があってどんな秘密が隠されているのか…
    どうしてこれほど生死が身近なのか…
    そしてこの圧倒的に抑圧された空間、環境でクラバーとが仲間がそして親方が何を考えどう行動していくのか…

    いやぁ~ワクワクした
    ブラックな感じも実に良い味を出している
    そのブラックペッパー的なピリッと感とクラバートの成長と仲間たちの考えと行動力が深みある御出汁のようで絶妙なバランスをとっており、実に素晴らしいのである

    久しぶりに何もかもが大満足の読書であった
    こんな年になるまで本書に出会えなかったのは残念だが、逆に出会えたことは本当に感謝感謝である

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      ハイジさん
      「クラバート」を読んだ人は、最後の決断を誤らない筈、、、は言い過ぎ?
      ハイジさん
      「クラバート」を読んだ人は、最後の決断を誤らない筈、、、は言い過ぎ?
      2021/09/01
    • ハイジさん
      猫丸さん

      クラバート好きに悪人はいない…
      これも言い過ぎ⁉︎
      猫丸さん

      クラバート好きに悪人はいない…
      これも言い過ぎ⁉︎
      2021/09/01
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      ハイジさん
      それは当たってるかも、、、
      ハイジさん
      それは当たってるかも、、、
      2021/09/01
  •  「千と千尋の神隠し」はこの作品から生まれたそうです。
     とにかく暗い。でも、死を書いているからこそ、生が際立っている。悲しみや痛みは美しく描写されていて、そのような中にも救いがあることを感じます。
     魔法があれば生きることはずっと楽だ。それでも、苦しんで生きたい。自分自身で生きたい。誰かを愛したい。仲間を失いながら、他者を危険にさらしながら、クラバート少年がたどりついた答えには、涙が止まりませんでした。
     クラバートが、少女の名は何だろうと思いめぐらせる場面が好きです。「ミレンカ、ラドゥーシュカ、ドゥーシェンカ……」名も知らない少女の面影が、彼の心をほのかに照らすのです。何と悲しく、何と純真な恋でしょう。

  • 中学時代の夏休みに読んだ、壮大なファンタジー。ドイツに伝わる伝説をもとに、プロイスラーが「魔法」「愛」「仲間」をテーマに読みごたえのある物語に仕立て上げた。
    当時、この本の何の予備知識もないまま引き込まれるように手に取ったのを覚えている。彼の作品で「小さい水の精」は読んだことがあったが、同じ作家だとは気づかなかった。それほどに濃〜い作品であった。
    今更知ったが、宮崎駿もこの作品に影響を受けたとか。確かに、大人が読んでも学ぶことの多い一冊だと思う。挿絵もすごく印象的であった。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「濃〜い作品であった。」
      意味深い話だと思います。魔法を単純に「権力」や「金」と置き換えれば、現代を生きる私達の話になる。
      「宮崎駿もこの作...
      「濃〜い作品であった。」
      意味深い話だと思います。魔法を単純に「権力」や「金」と置き換えれば、現代を生きる私達の話になる。
      「宮崎駿もこの作品に影響を受けたとか。」
      ゼマンのアニメーションを観て「もっと面白いモノが作れる」と言う様なコトを仰言ったそうです。
      そのカレル・ゼマンの作品ですが、クラバートが最初に少女と出逢う切っ掛けになった素朴な民謡のような歌が素晴しい、そして再び逢いに行く場面が幻想的でとても美しく、忘れられない名場面です。
      2013/02/01
    • メイプルマフィンさん
      カレル・ゼマンの作品、知りませんでした。チェックしてみます。
      いずれ本の方も再読したいです。大人になってからだとまた違った読後感かも。
      カレル・ゼマンの作品、知りませんでした。チェックしてみます。
      いずれ本の方も再読したいです。大人になってからだとまた違った読後感かも。
      2013/02/01
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「幻想の魔術師 カレル・ゼマン レトロスペクティヴ」としてDVDが発売されたのですが、今では入手困難なようです、レンタル店とかにあれば良いの...
      「幻想の魔術師 カレル・ゼマン レトロスペクティヴ」としてDVDが発売されたのですが、今では入手困難なようです、レンタル店とかにあれば良いのですが、、、
      2013/03/18
  • 小学生のころ、ブルーの表紙にカラスがいる、シックな表紙に惹かれて購入。
    内容は三分の一で挫折。
    きっと、あの湿気のあるような、薄暗い雰囲気に堪えられなかったのだろう。

    しかし、大人になってよむと、その抑えた表現のなかに包まれた重厚さ、不気味な雰囲気をジワジワと感じさせる表現、少女と出会ってからの美しい光が差し込むような世界…
    それ以降、何度も折にふれて読み返す一冊になりました。そのつど、味わいがちがいます。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「ブルーの表紙にカラスがいる」
      初版の装丁は、チョッと暗かったですよね。
      「不気味な雰囲気を」
      底知れぬ闇があるコトを暗示していて、現実も一...
      「ブルーの表紙にカラスがいる」
      初版の装丁は、チョッと暗かったですよね。
      「不気味な雰囲気を」
      底知れぬ闇があるコトを暗示していて、現実も一番悪い奴は姿を現さないんだと。ゾっとしました。
      2012/08/29
  • 昼休みに10分読書をコツコツと4カ月ほどかけて読んだのだが、飽きることなく引き込まれた。
    ただ、登場人物たちの名前が覚えにくい。
    主人公のクラバートの他に11〜13人の仲間が出て来るのだが、リュシュコーとかシュタシュコーとか馴染みのない響きで、判別が出来なくなってしまう…記憶力の落ちたオバさんの10分読書だからかもしれないけど。
    絶対的な力を持つ魔法使いの親方への挑戦と未熟なクラバートの成長、死と向き合う物語。
    全体的にずっと不穏な空気が漂うのだが、友情や初恋の切なさが闇に灯る光のよう。2019.1.25

  • 静かで誠実な物語。雨の日に毛布をひっかぶって読むのがおすすめ。心がすりへってるとき、プロイスラーは効きます。

  • ☆3.7
    「たしかジブリの作品の原作がこれとかいううわさを聞いたような」で読み始めた作品。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「たしかジブリの作品の原作が」
      ネタバレ?ですが、「千と千尋」のラストシーンに使われている部分があります。原作よりカレル・ゼマンのアニメを観...
      「たしかジブリの作品の原作が」
      ネタバレ?ですが、「千と千尋」のラストシーンに使われている部分があります。原作よりカレル・ゼマンのアニメを観てイメージを得たそうです。
      2012/08/29
  • 最後はさらっと終わりますが、くどくど後日談がないのも、昔ながらの物語の良さだなと感じました。

全170件中 1 - 10件を表示

オトフリート=プロイスラーの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
小川 未明
梨木 香歩
コルネーリア フ...
荻原 規子
有効な右矢印 無効な右矢印

クラバートを本棚に登録しているひと

ツイートする
×