永遠に生きるために

  • 偕成社
4.25
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本棚登録 : 71
感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784037449100

感想・レビュー・書評

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  • 両親と8歳の妹と一緒に暮らしているサムは11歳。6歳のときに白血病にかかり、2度めに白血病を再発してから、もう入院しなくてよくなった。死期が近いと思っている。
    友人フェリックスと、ウィリス先生に来てもらってやっている3人だけの「学校」で、自分のことを書いてみたら?と勧められて、この本を書き始めた。
    先生は、「どうしたら自分は死んだってことがわかるのか?」とか、「神さまはなぜ子どもたちを病気にするのか?」の質問にも、ちゃんと調べたり考えさせたりしてくれる。
    3人で一緒に「やりたいことリスト」も作った。フェリックスが、リストを実行するのを手伝ってくれた。ところが、その途中フェリックスが入院し、面会にもいけなくなる。

    自らの死を間近に感じる少年が、自分のことや、自分の集めているウソのようなホントの話、いろんなリスト等をまとめた一冊。




    *******ここからはネタバレ*******

    闘病記ですが、焦点が当たるのは病の進行ではなく「生きている時間をどう使うか」だったため、悲壮感があまりなく、読みやすい作品です。

    彼らの「学校」のウィリス先生がとてもいいですね。
    普通の先生なら、死期を間近にした子どもたちから「死」に関する質問をされたら、話を逸らしたくなるでしょうに。
    そして子どもたちは、これらの考察や「やりたいことリスト」の実行などから、どんどん賢くなっていくのです。
    たとえば、「この目でじかにゆうれいを見る」の実行のために、コックリさんをしようとするフェリックスに対し、サムが、母さんが「わけのわからないものに中途半端に手を出すもんじゃりません」ってそれを嫌っている、と言うが、フェリックスは、「おまえの母ちゃん、教会へ行っているよな?それってさあ、わけわかんねえもんに手ぇ出すの最たるもんじゃないのか?」と言い返すのです。

    親を放っておいて子どもはどんどん成長していきます。
    1年あると思っていた余命が、2ヶ月か2~3週間か、と宣告されたとき、泣き崩れる母親にサムは言うのです。
    「泣かないで。お願い、母さん。ぼく、神さまに言っとくから、なんかあんまりでしたって」「あっちへ行って会ったらね」
    「そうしてちょうだい、かならずよ」「ウチノ子カエセって伝えてよ」


    自ら記せない、自らの最期を記録に留めるために、サムは本の最後に、両親たちに書き込んでもらえるように質問表を作っていて、それに両親が書き込んだものと、彼の「死んだらしてほしいこと」リストでこのお話は終わるのです。


    優しい物語ではありますが、でもやっぱり子どもの死ぬ話は悲しいですね。

    「良書」だとは思うけれども、どなたにお薦めしたらいいのやら?と途方に暮れていましたが、やっぱり、「死」を感じることは、より良い「生」のためにも必要だと思います。
    しっかりした高学年以上の読書をお薦めします。

    • しずくさん
      最近、レビューがアップされませんがお忙しいのでしょうね。またお邪魔します、お元気で
      最近、レビューがアップされませんがお忙しいのでしょうね。またお邪魔します、お元気で
      2021/05/02
    • 図書館あきよしうたさん
      しずくさん、コメントありがとうございます。
      お元気されていますか?
      気にかけてくださってとても嬉しいです。

      最近放ったらかしになっ...
      しずくさん、コメントありがとうございます。
      お元気されていますか?
      気にかけてくださってとても嬉しいです。

      最近放ったらかしになっているなと気にはなっていたのですが、お察しのとおり本が読めない(読まない?)生活をしております。
      在宅で仕事を始めてしまったので、今座る時間はすべてそちらに取られてしまっています。
      秋頃にはまた読める生活に戻りたいと、今努力している最中です。

      また読んだら書きますので、そのときには遊びに来てくださいね。
      ふたたびここに戻ることを励みに、がんばってきます。

      ありがとうございます(^o^)。
      2021/05/02
  • フォローしている方の感想で、出会うことができました。ありがとうございます。

    白血病の度重なる再発(85%は治るのにね)により、余命少ない、11歳の少年「サム」が綴った、

    「ぼくはこういう人間なんだよ」

    というひとつの本。

    日記や、やりたいことリスト、死に纏わる様々で素朴な疑問を探求していく様子には、セラピーのようにも感じられて、サム本人も、それほど悲観的にはなっていないようにも見える。

    しかし、もし自分がそのような立場になったら、はたしてどういった心境になるのかを考えたとき、こうした探求の姿勢に勇気づけられるような気がします。

    死というものを考えるにあたり、世界中、様々な捉え方が可能であることや、ライフサイクルの一環であること。更に、全てのやりたいことの一面にまで、死に近い概念が含まれているように感じられる、サムの探究心は、まさになりたかった科学者そのものだと思う(表紙の鉛筆も彼の成果のひとつです)。

    また、彼を支える周りの方々の存在の大切さと大変さは、本当に身に染みて実感いたしました。

    特に、サムの両親の気持ちを推しはかると、他人の私でも辛いだろうと感じるのに、その辛さはどれほどなのか。彼らの普段と異なる言動や、神さまを恨むしかないような息子を思う辛い描写は、真に迫っていて、胸に刺さります。傷つけるつもりがなくても、結果として傷つけてしまう。本人も辛いのだけど、周りも辛いということを、改めてこの作品で実感いたしました。

    ちなみに、それ以降の両親の描写も、真に迫っていたことを、書き足しておきます。そこには人間の愛の強さを感じ、あたたかい気持ちになりました。

    おそらく、何が正解かなんて、誰にも分からないと思うけれど、それでもサムの中には、満ち足りた気持ちがあったと思うし、これを読んだ人の内にも、なにか心強くあたたかいものが灯ると思います。

  • サムは11歳。
    白血病が再発して、自宅でフェリックスと一緒にウィリス先生の授業を受けている。
    フェリックスは病院で仲良くなった友だちだ。
    ウィリス先生が「自分のことを書いてみたら?」と言ったので、サムは書き始めた。

    ほんとのことリスト、やりたいことリスト、だれにも答えてもらえない質問、思ってること、
    とにかくいろんな自分のことを書いた。
    それが、1月7日から始まって4月12日に終わる、この物語だ。

    自分の命の長さを正面から見つめ、常に前向きに生きたサムが健気でたまらない。

    友だちの協力で、やりたいことリストを1つづつ叶えていくところ等、
    アメリカの少女の物語『16歳。死ぬ前にしてみたいこと』と似てます。
    サムのやりたいことリストの方が、かわいいけどね。

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