新版 流れる星は生きている (偕成社文庫)

著者 :
  • 偕成社
4.22
  • (21)
  • (16)
  • (7)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 153
感想 : 13
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784038508202

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 壮絶でした。
    満州からの引き揚げがこんなにも大変だったとは!
    生きるための人間の強さももちろんですが、生き抜くための狡さや醜さも包み隠さず描かれているのがすごい。
    作家新田次郎さんの妻で、数学者で作家の藤原正彦さんのお母さんだそうですが、奥さんのこの作品の影響で新田さんも小説を書き始めたのだそうです。
    現代でも戦争の影響で辛い日々を送っている方々がいます。早く平和が訪れることを願っています。
    オススメ!

  • 読んでいて辛くなりました。残酷さ、強かさ、強さ、賢さ、優しさ、愚かさ…人間の様々な面を見せつけられた感じです。同じ境遇だったら、私はどうするか?同じように思考、行動できるのでしょうか?平和な日本で生まれ育った私には想像すらできません。でも、現実に起こったことです。だからこそ、絶対に忘れてはいけない過去の事実だと思いました。今も世界では戦争が起こっています。過酷な日々を過ごしている人がいると思うと胸が痛みます。

  • 中国からの引き上げの自伝でした。

    当時 一人身でも大変だったのに
    乳飲み子を含めて 三人の子どもをつれての長い道のり。
    同じ日本人同士でも助け合える余裕もなく
    子どもの具合が悪くても
    どんな状況でも 皆の引き上げの集団についていかないと生き残れない。
    ただひたすらに 進むのみ。

    飢えは勿論、体力の衰えからの 病気や 下痢、
    川を渡るのも一人で 子供を一人づつ抱えていく。
    靴もなく 裸足で痛みをこらえて歩く。

    やっと 医療を受けられ 足の裏が治るまで
    いざりあるきを していたら 同じ日本人に馬鹿にされたり
    船の中などで 子供が下痢をしたら 
    文句を言われ、子供が泣いても文句言われてて。

    本当に大変な 道のりだったことです。
    でも、他の人のように 途中で子供を失う事もなく
    本当に良かったと思いました。

    この本は 多くの人が読むべきですね。
    こういう事が 戦争には ついて回る事。
    今世界の難民の人達も このような状況だと思います。
    各地の争いが 早く 終わる事を祈ります。

  • 亡き祖母は、父が2歳の時に満州から引き上げてきたということは知っていました。
    大きな船に乗って九州に着いたのよ。大変だったの。とだけ聞いていたのですが、、、

    たまたま出会ったこの本で、大変さが想像以上だったことを知りました。

    主人公は3人の子供を連れて、生きることにしがみつき、身も心もギリギリの状態で満州から引き上げる。
    引き上げる、、、ではなく脱出をする。

    人の強さと弱さを、戦争の恐ろしさを知ることがでにた作品です。

  • これはなかなかにスゴイ本に出会った感。
    戦争反対とかなんだとか、もうそういう次元ではなくて、ともかく人間の本能というか、パワーに圧倒される。この主人公のお母さんがまた、変にきれいに見せないというか、めっちゃ本音が、本性が出ていて、小説じゃ絶対こうはならないよなっていう、何しろ気に入った。
    対するかっぱおやじも、ライバルとして最後は認め合うという、もちろんあしたのジョーみたいなキレイな関係ではないけど、それもまた熱い。
    って褒め称えてたら、wikiに一部創作も入ってるってあって、マジかーってなったけど、まぁそれも良しとしよう。

  • 体験に圧倒されて一気に読んだ。体験自体の凄さもあるが、文章の力がとても大きかったと思う。おかげで、引き揚げの様子がありありと目の前に浮かんできた。行動、言葉、心の中どれも臨場感あふれるものだった。
    著者のお名前や本作も有名すぎて、逆に手に取るのがこんなに遅くなってしまった。引き上げを描いた作品はいくつも読んでいると思っていたが、いやいや、私は引き揚げ=引き揚げ船、というふうにイメージが定着してしまって、引き揚げの苦労は引き揚げ船の苦労みたいなイメージだった。どう考えても間違ってる。釜山から博多の間、そんなに長い時間のわけがない。陸路が大変だったに決まっている。確かに何冊かは読んでいるはずなのに、どういう記憶だ。
    著者の力はすごい!どこをとっても、どう考えても到底私には乗り越えられそうにない。生まれたばかりの子供と3歳と5歳の男の子を連れて、ものすごく強い。最初は夫がいなくて不安で心細い普通の人に思えたが、頭も回るし、根性もあるし、気はしっかりしているし、機転は効くし、手先も器用だし、もう超人的だ。
    あと印象的なのは、極限状態に置かれたときの人間の本性のようなもの。みんな自分が生きるのが必死で他人のことまで構っていられなくなる。それがまたすごくうまく書かれている。
    子供が邪魔者扱い、子供連れが邪魔者扱いされるのは現代に始まったものではないのだと思えた。昔から子供を大切になどと思っていない。子連れに手を貸そう、助けようなどという人はほとんどいない。
    戦争で亡くなった兵士(男性)ばかりでなく、女性もどんなに大変だったか。
    そしてあとの解説を読んで、「こんなに大変だったのだから、戦争は絶対ダメだ」と思う時、つい日本人のことだけを考える。それでは全然ダメだということはわかっていたつもりだったけどわかっていないことに気付かされた。朝鮮半島が南北に分断され、今なお解決しないのは何が原因なのか。忘れてはいけない。
    忘れてはいけないことがたくさんありすぎて追いつかない。
    この本の感想も書き尽くせない。

  • 文句なしに貴重な引き揚げ記だ。
    先に読んだ「日本人が夢見た満洲という幻影」や「ソ連兵へ差し出された娘たち」にも通じるものがあるが、国策で推し進めた移住は賛嘆たるもので、ソ連の侵攻を察知した関東軍や政治家のお歴々はいち早く日本に帰り、一般庶民は実際生き延びた人たちも、正に命からがらだったのだ。
    そして生き延びるために、動物的の本能が表れ、決してきれいごとでは済まされないし、またそれを責めることも出来なくなるのだろう。
    自分の母や親戚が満州からの引き揚げ者で、ソ連兵のことや、かなり混乱状態だったことを話していたが、もう少し詳しく聞いておくべきだった。

    一度戦争になると人間性は破壊され、堕ちるところまで堕ちる。だから常に戦争を回避する努力は怠らないことだ。
    人間としての尊厳を保つためにも。

    しかしそれにしても著者の藤原ていさんの逞しいこと。
    現代の女性には真似が出来ないだろうと感じた。

    あとがきにもあったが、著者の藤原ていさんの夫は、一度は家族と再会したもののソ連軍につかまり、満洲の延吉にあった収容所に一年あまり抑留され、著者ら家族の引き揚げから1か月おくれの10月に帰国する。その後、妻の作品に刺激されて小説を書きはじめ、小説家新田次郎として山岳小説の分野で大きな足跡を残す。
    著者のように敗戦になって海外の植民地から引き揚げてきた人たちは、320万人にものぼり、中でも満洲や北朝鮮からの引き揚げ者は、想像を絶する苦難を体験し、家族や財産を失ったために、戦後の生活も楽ではなかった。彼らは自身の苦難を社会に訴え、悲劇の歴史を語りつたえるために、おびただしい数の体験記を出版したが、この作品のように、多くの人に読みつがれているものは多くはない。
    理由は、この作品が引き揚げの苦労話で終わるのではなく、集団の中で表れた人間の弱さや醜さを直視し、追いつめられた人間の本性をあぶりだすとともに、生きようとする人間の意志の大切さと尊さを訴えた文学作品になっているからだ。

    当時の満洲には150万人以上の日本人が住んでいたが、避難できた人はわずかで、多くは満洲にとり残された。中でも開拓団の人々の被害は大きく、ソ連軍の攻撃と混乱のなかで多くの命が失われた。また、ソ連軍は、生きのこった日本軍兵士や民間人等57万人以上をシベリアなどへ連行し、強制労働をさせた。戦容所では飢えや寒さで6万人近くの犠牡者を出したと言われる。ソ連も第二次世界大戦で2千万人以上の犠牲者を出し、戦後復興の為の労働力が不足していたからだ。

  • 極限状態で生き抜くエネルギーに、ただただ、圧倒される。
    こどもたちのいじましさにも涙。みんな無事でほんとうによかった。

  • 2018.02.28 図書館

  • どれだけ長い1日を重ねてこられたか。生きることに真摯に向き合った著者の生き様を見せて頂きました。

全13件中 1 - 10件を表示

藤原ていの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×