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- Amazon.co.jp ・本 (35ページ)
- / ISBN・EAN: 9784039636300
感想・レビュー・書評
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それから、そうそう、苔の野原の夕陽の中で、
わたしは、この話しを透き通った秋の風から聞いたのです。
そのとき、西のギラギラの縮れた雲のあいだから、
夕陽は赤くななめに苔の野原に注ぎ、
すすきはみんな白い火のようにゆれて光りました。
わたくしが疲れてそこに睡りますと、ざあざあ吹いていた風が、
だんだん人のことばにきこえ、やがてそれは、北上の山の方や、
野原に行われていた鹿踊りの、ほんとうの精神を語りました。
そのほんとうの精神とは・・・詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この作品を、青年期から大人へとステップアップする、最後の段階と表現した詩人がいた。いわく、「彼らは、嘉十の置いていった手ぬぐいを何だか確かめることにより、自分たちの勇気を試し、試す事で大人へのステップを一つ上がった。上がった先には個が自立して生きていかなければならないという、宿命しかない。青年期の雄は群れたがる。しかし、大人になると一匹の雄として他に頼ることなく自立しなくてはならない。彼らは、新しい生命を生み出し育てるため、群れを解体し孤独な嫁探しの旅に出かけることになる。」というもの。賢治の作品はただの童話ではない。読み方によってはいろいろな読み方が出来る。僕は紹介した詩人の解釈が好きだ。大人へとステップアップする今、だからこそ大切にしたい一冊。