鹿踊りのはじまり (日本の童話名作選)

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  • 偕成社
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  • Amazon.co.jp ・本 (35ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784039636300

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  • それから、そうそう、苔の野原の夕陽の中で、

    わたしは、この話しを透き通った秋の風から聞いたのです。

    そのとき、西のギラギラの縮れた雲のあいだから、

    夕陽は赤くななめに苔の野原に注ぎ、

    すすきはみんな白い火のようにゆれて光りました。

    わたくしが疲れてそこに睡りますと、ざあざあ吹いていた風が、

    だんだん人のことばにきこえ、やがてそれは、北上の山の方や、

    野原に行われていた鹿踊りの、ほんとうの精神を語りました。

    そのほんとうの精神とは・・・

  • この作品を、青年期から大人へとステップアップする、最後の段階と表現した詩人がいた。いわく、「彼らは、嘉十の置いていった手ぬぐいを何だか確かめることにより、自分たちの勇気を試し、試す事で大人へのステップを一つ上がった。上がった先には個が自立して生きていかなければならないという、宿命しかない。青年期の雄は群れたがる。しかし、大人になると一匹の雄として他に頼ることなく自立しなくてはならない。彼らは、新しい生命を生み出し育てるため、群れを解体し孤独な嫁探しの旅に出かけることになる。」というもの。賢治の作品はただの童話ではない。読み方によってはいろいろな読み方が出来る。僕は紹介した詩人の解釈が好きだ。大人へとステップアップする今、だからこそ大切にしたい一冊。

著者プロフィール

1896年(明治29年)岩手県生まれの詩人、童話作家。花巻農学校の教師をするかたわら、1924年(大正13年)詩集『春と修羅』、童話集『注文の多い料理店』を出版するが、生前は理解されることがなかった。また、生涯を通して熱心な仏教の信者でもあった。他に『オツベルと象』『グスグープドリの伝記』『風の又三郎』『銀河鉄道の夜』『セロ弾きのゴーシュ』など、たくさんの童話を書いた。

「2021年 『版画絵本 宮沢賢治 全6巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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