表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 2548
レビュー : 276
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040693163

作品紹介・あらすじ

読者の共感を呼んだ前作「社会人大学人見知り学部 卒業見込」を出発点に、新たな思考へと旅立ったオードリー若林の新境地! 

累計20万部に迫る前作『社会人大学人見知り学部 卒業見込』。
そこで吐き出された社会への違和感、悩みは普遍的なものだと思っていたけれど、
「あれ? これって人が作ったシステム上の悩みに過ぎなかったのか?」
と気づいてしまった著者。
「俺が競争したい訳じゃなかった! 競争しなきゃ生きていけないシステムだった!」
新しい発見に意識がいったところで、
「別のシステムで生きる人々を見てみたい」
と、猛然とキューバへ旅立った。

キューバはよかった。そんな旅エッセイでは終わらない、間違いなく若林節を楽しんでもらえる、そして最後はホロリと泣ける、待望の書き下ろしエッセイです。
本当にプライベートで若林さんが撮ったキューバ旅行の写真も多数掲載予定。

感想・レビュー・書評

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  • 旅行エッセイ、とでも言うのだろうか。
    旅先は、社会主義国のキューバ。
    写真も多数載せられ、全編通してセンテンスが短いためとても読みやすい。
    タイトルになっている章は三分の一ほど読むと現れる。
    誰かに飼いならされて手厚い庇護を受けるよりも、自由と貧しさを選んだ野良犬が気高く見えるという著者の思いから、表題となったらしい。
    野良犬は自ら選んだ境遇ではないと思うが、眼を惹きつけるタイトルではあるよね。

    お笑い芸人さんの書いた本ということで期待値は低かった。
    文章が特別上手いわけでもなく「そこ、もうちょっと踏み込んで書いて」という部分がいくつもある。ところが、読む側に期待させるものが底辺にあって、ページをめくる手が止まらない。
    たぶん若林さんが何に出会ってどう思うかが知りたいからだ。

    「社会への違和感・悩みは普遍的なことだと思っていたが、それは人が作ったシステム上の悩みに過ぎなかった。では、違うシステムで生きる人々を見てみたい。」
    ・・この、社会への違和感・悩みが具体的に書かれているわけではない。
    衣食住が保証された国で安穏と生きてて何が不満なの?と違和感満載になるが、まぁ先へ行く。

    旅のモチベーションは実は他にもあって、終盤それが明らかにされる。
    ここは思わずじわっと来る展開だ。
    語りすぎず、かと言ってドライなタッチでもなくもはや文学の香りさえする。
    スマホでイーグルスの「Take It Easy」を流し続ける場面では、「しまった・・」という事態に。そう言えば、大人になってから旅に出た先はどこも、亡父が「いつか行きたい」と言っていた場所だったことなどを一気に思い出した。

    旅には、いつもの自分を俯瞰させる力がある。
    キューバに行けて良かったね、若林さん。あなたの傍でお父さんも喜んでいることと思う。
    これからは父親のいない人生を歩むように思えても、本当はいつでも一緒。
    お父さんに喜んでもらえるように、これからも生きれば良いだけ。
    旅に出たい気持ちをおおいに刺激させられた一冊だった。

  • 控え目に言っても最高。
    初めて若林のエッセイを読んだけど、本を普段から読むだけあってとても文体がまとまっていて読みやすかった。
    ただのエッセイかと思いきや、若林を通して今の日本の在り方や自分の日常を考えさせられる。
    最後は涙を堪えるのに必死だった。
    灰色の街に住んでいるからこそ色をとり戻すために旅に出て、そしてちょっぴりこの日本人であることを誇りに感じて帰ってくる。
    旅っていいなぁ…
    とても充実した読者体験だった。

  • ちょっと根暗なイメージの若林さんがキューバへ一人旅。しかもけっこう弾け気味に楽しんでいて、ますます意外。やはり自分を知らない人達に囲まれている方が楽なのかなぁと思ったり。よく知らないキューバという国への興味もあって楽しく読み進めていたら、最後の最後に明かされる、若林さんがキューバを訪れた本当の理由に泣かされます…これはズルいよ、若林さん…。
    『芸能人のエッセイか』と思われてしまうかもしれませんが、おすすめの一冊です。

  • オードリー若林さんのキューバ旅行記。旅エッセイに留まらない文学の香り。なぜキューバなのかという動機も詳しく語られ、大きなテーマにもなっている。美しい情景に加え、若林さんの高揚感も文章から伝わり、とても瑞々しく読めた。

    浸れる文章を書く人だなって思う。色や匂いまで伝わる描写なのに、どこかサッパリとして静かな夜の空気を感じさせる文章が好き。

    「でも、例えば人生とか、愛とか、感謝とかって実はアメフトの話のようなものの中に含まれていて、わざわざ言葉にして話すようなことじゃないんだ」って一文が好き。

    「明日死ぬとしたら、生き方が変わるのですか? あなたの今の生き方はどれくらい生きるつもりの生き方なんですか?」というゲバラの言葉も刺さる。
    「ぼくはきっと命を『延ばしている』人間の目をしていて、彼らは命を『使っている』目をしていた」という表現もよかった。

    若林さんの文章には、思考に潜らせる能力があるんだなと。眠れない夜にいろいろ考えふけってしまうように。
    そんな時はモヒートかダイキリをお供に、この旅を追体験して色を取り戻せたらなと思った。

  • 前作の自信過剰でありながら、周囲の自分への評価のギャップの高低差に悩む姿を、第三者的に見つめる若林さんの姿にとても共感して、本作も読みたいなと思っていました。旅行記なのですが、お父様が亡くなられたことが、また若林さんの生き方を変えたんだなというのが伝わって、とても切ない気持ちになりました。若林さんには幸せになってほしいな。ちなみにわたし、リトルトゥースです。ふふふ。

  • とあるきっかけでキューバに訪れたオードリー若林のエッセイ

    離陸場面と最後が好き。
    有能と無能、勝ち組と負け組。新自由主義のもとに生まれた価値観。離陸と共に、これら"冷笑的なニュアンスの込められた当事者性の感じられない言葉が物凄いスピードで後方にフェードアウトする"っていいよね。旅が好きな理由を言語化してくれたような感じ。
    (自分も有能とか無能とか言う奴はマジで嫌い。松本人志が川崎の殺傷事件の犯人を"欠陥品"と言ったように、上から目線で人間をモノのように見下す残酷な視点。自分の周りにもいる。もしかしたら自分のそれに加担してる時があるのかもしれないけど、、)

    そんな日本より共産主義(当時)の国キューバの人々の方が幸せなのだろうか。共産主義と言っても、アミーゴ社会というように人脈が収入、家の大きさ、社会的ステータスに大きく影響するらしい。

    どちらにおいても大切なのは"血の通った人間"でいること。若林をキューバに導いた人物がそうであったように。

    変わりばえのない日常に色がなくなってきたら、色を与えに旅をしよう。

    「出かけたいところがあることって人を幸せにするんだな」俺もそう思います。










  • 文庫版で読みました。
    モンゴル編、アイスランド編、コロナ後の東京、が加筆されています。

    解説まで読んで、ふふっと笑顔になった後、鼻の奥がツーンとした。
    泣きそうだった。

  • オードリーの若林さんによるキューバ、モロッコ、アイスランドの旅行記。

    旅を通じて日本での生きづらさについて綴られる。社会主義のキューバ、遊牧民族のモロッコ、競争社会から外れた国で心の中で静かな自由を獲得していくように見えた。

    ラジオでも「芸能界は勝ち続けた人間ばかりで人の痛みが分からない人が多い」とか言っているように、若林さんは痛みとか競争に本当に自覚的なひだ。

    でも、若林さん自身芸能界で圧倒的に勝者なんだけと、きちんとあとがきで「新自由主義の競争で誰かを傷つけて貰ったお金を使って俺は見てきた」ともあって自分の事は棚上げしないバランス感覚が本当に好きだ。

    あと、DJ松永のあとがきはあとがきの場を借りたラブレターだった。俺も生々しく生きていきたい。

  • この本を読むきっかけは、山里亮太さん署の『天才はあきらめた』のあとがきを読んだことだ。若林さんが書かれたそのあとがきからは、捻くれているように見えて真っ直ぐな著者への敬意が伝わってきて、この人はどんな本を書くんだろうと、素直に気になった。
    そしてこの本を手に取っていた。

    結論から言うと、泣きたいくらい嬉しい気持ちになった。
    共感と納得。それが自分を安心させた。

    生きづらさを知りたくて、もがいて、知るために行動して、その中で生まれる出逢い一つ一つから気付き、己の生きづらさの根元に向き合っていく。
    ただ悩むだけで終わらせたくない、理解したいという苦しいくらいの思いが、ひしひしと伝わってきた。
    そしてその痛みに共感し、彼の気付きに納得して安心した。

    素直にそう思えたのは、きっと文章から、彼の芯のあたたかさを感じたからだと思う。
    愛おしい人に対して愛おしいと感じ、行動でき、そして人への敬意を忘れない。
    上面ではない、芯のあたたかさ。
    そして、海外での様々な状況をポジティブに捉えて消化している部分も見えて、やっぱり面白いし楽しい人だなぁと、純粋にすごいと思った。

    彼自身の文章からだけでなく、あとがきと解説からも彼のあたたかさに救われた人が多いのだと知ることができる。
    そこにはいやらしさがないから不思議だ。

    私もたぶん、これからも新自由主義のもとで、生きづらさを感じながら生きていくんだと思う。
    悩んで悩んで、血や涙を流しながら、必死に生きていくんだと思う。
    でもそれは間違ったことじゃないし、それを共有できる大切な人たちが、同じ新自由主義のもと生きていることを知った。
    だから、生きていこうと思う。
    生きていけると思った。

    あとがきにもあるように、
    私も今回、若林さんの言葉に救われたうちの一人となった。

  • タレントが書いたエッセイと思っていると痛い目に遭う。
    まず自分を表現する文章がうまい。
    単なる読みやすさとか、表現力ではない。
    自分の感情というか、日本という(いや多分東京かも)環境の中における、若林正恭という芸人の取り扱いというものを、第三者的に醒めた目で俯瞰して見せて、それでいて虚無的でなく、読む側に少しだけ共感を求めるような、「あなたもそんなとこあるでしょ?」という感じで進んでいく語り口がすごい。
    基本的に独白調なのだけれども、自分の中なら特に説明も不要で、あえて説明もしないような感じ方、感性をちゃんと説明しているのだ。
    個人的に興味を持つのは、この文章をスラスラと書き綴るのか、何度も何度も書き直すのか?というところかな。いや、どっちがいいという話ではなく、単に興味だけど。

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著者プロフィール

若林 正恭(わかばやし まさやす)
日本のお笑い芸人。「オードリー」のツッコミ担当だが、当初はボケだった。
2013年に初の著作にして代表作『社会人大学人見知り学部 卒業見込』を刊行し、2017年『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』を刊行し第3回「斎藤茂太賞」を受賞している。2018年8月、『ナナメの夕暮れ』を刊行。
趣味多数、その中に読書と本の帯収集がある。「アメトーーク!」人気企画「読書芸人」の常連。

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