本当に日本人は流されやすいのか (角川新書)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040820293

作品紹介・あらすじ

グローバル・スタンダードに沿おうとする構造改革路線が続く中、日本人は権威に弱く、同調主義的であるとの見方が強まっている。だが、本来、日本人は自律性、主体性を重んじてきた。現在、改革をすればするほど閉塞感が増すという一種の自己矛盾の状態が続いているが、文化と伝統のある社会で日本人が持ち合わせてきた自律性と道徳観について、『菊と刀』や『リング』『貞子』『水戸黄門』なども題材にしながら論考していく。さらに、人々がよりいきいきと暮らせる安定した社会を取り戻すためには何が必要か、真っ当な国づくりについても考察していく。気鋭の政治学者で、話題作『英語化は愚民化』著者による画期的日本論。

感想・レビュー・書評

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  • ・また日本人論が世に出て喜ばしい。
    ・R. benedictを土台に論を進めている。
    ・専門外の分野(例えば、第二章では文化心理学、社会心理学)を複数、かるく参照していることから、著者がこのテーマにまじめに取り組んでいる点が伝わる。
    ・ただ、著者がついつい「均質な日本人の集団一億人ちょい」を迂闊にも想定してしまっていることがあるのではないかと、私はいぶかしんでいる。
    ・評価には関係ないが、「呪縛」(という一部界隈で人気の熟語)を使うあたり、立ち位置がややイデオロギッシュな気がする。

    【書誌情報】
    著者:施 光恒
    定価: 902円(本体820円+税)
    発売日:2018年05月10日
    判型:新書判
    商品形態:新書
    ページ数:272
    ISBN:9784040820293

    ◆自律性と主体性を併せ持つ日本人。「右に倣え」の米国化は愚策である
     グローバル・スタンダードに沿おうとする構造改革路線が続く中、日本人は権威に弱く、同調主義的であるとの見方が強まっている。だが、本来、日本人は自律性、主体性を重んじてきた。現在、改革をすればするほど閉塞感が増すという一種の自己矛盾の状態が続いているが、文化と伝統のある社会で日本人が持ち合わせてきた自律性と道徳観について、『菊と刀』や『リング』『貞子』『水戸黄門』なども題材にしながら論考していく。さらに、人々がよりいきいきと暮らせる安定した社会を取り戻すためには何が必要か、真っ当な国づくりについても考察していく。気鋭の政治学者で、話題作『英語化は愚民化』著者による画期的日本論。
    https://www.kadokawa.co.jp/product/301502001304/

    【目次】
    はじめに 
    目次 

    第一章 同調主義的で権威に弱い日本人? 
      「同調主義的な日本人」というイメージ
      「忖度」という言葉の流行
      進歩的文化人による日本社会批判
      『水戸黄門』人気も同調主義の表れ?
      「右派」も信用していない日本人の自律性
      グランド・キャニオンと自律的個人
      「外圧」を求める心理の背後にも
      ナショナル・アイデンティティの不安
      ベネディクトの呪縛 

    第二章 日本文化における自律性──ベネディクト『菊と刀』批判を手がかりに 
      「恥の文化」と「罪の文化」
      ベネディクトの分析に対する疑問
      関係を重視する自己観(人間観)
      「相互独立的自己観」と「相互協調的自己観」
      言語習慣に表れた自己観の相違
      「原理重視の道徳観」と「状況重視の道徳観」
      日本で優勢な状況重視の道徳観
      子育てや学校教育の特徴
      二つの対立する見解
      なぜスミスとミードか
      自律性獲得のメカニズム
      状況重視の道徳における自律性
      「離見の見」
      芸道や武道と自律の理想
      自律・成熟の理念と反省の役割──内観法を参考に
      日本のしつけや教育の特徴の再解釈
      日本文化における自律性の理念
      『水戸黄門』の人気の理由再考
      過去の世代の視点
      人間以外の生物・自然物の視点
      事物(モノ)の「視点」
      内山節の議論
      日本型自律性と関係性の重視
      豊かな文化的資源を活用すべき 

    第三章 改革がもたらす閉塞感──ダブル・バインドに陥った日本社会 
      問題の所在
      やる気を失った日本のビジネスマン
      疲れの原因
      急増した自殺とひきこもり
      1990年代後半という分岐点
      「構造改革」の推進
      職場の変化 一つの仮説
      『ひきこもりの国』
      ジーレンジガーへの疑問
      北山忍の議論
      意識レベルと無意識レベルの価値観の乖離
      その他の調査でも
      ひきこもりを生み出すメンタリティー
      「ダブル・バインド」とは
      ダブル・バインドとひきこもり
      「自立社会」の落とし穴
      壊される心理的土台
      知識人と改革の政治
      日本人の「しあわせ」観 

    第四章 「日本的なもの」の抑圧──紡ぎだせないナショナル・アイデンティティ 
      近代化のなかでの日本的なもの
      「グローバル・スタンダード」の流行 「言説の二重性」
      「日本的なもの」の抑圧
      朝日新聞の1997年の元日社説
      アイデンティティの不安定さ
      「心のかたち」と怖い話──『リング』に着目するわけ
      日本の怪談話の特徴
      「六部殺し」──日本の怪談の典型
      ヨーロッパ民話の怪談
      現代の都市伝説
      『リング』は例外なのか?
      「貞子」の性質
      「神が零落したもの」
      「日本的感受性」
      巫女の零落
      現代日本人の罪悪感
      意識の深層からのサイン
      ナショナル・アイデンティティの不統合 

    第五章 真っ当な国づくり路線の再生 
      二つの方法
      変えにくい半ば無意識の心理的傾向性
      子育てや教育の慣習の変革の難しさ
      教科書の記述に対する違和感も
      「質の悪い輸入業者」
      和魂洋才、採長補短のすすめ
      半ば無意識の心理的傾向性を前提に
      「日本的価値観」を定式化する試みの困難さ
      「筆豆の口達者」に負けないように
      日本的価値観と戦後秩序
      脱・構造改革路線の方向性
      かつての日本型資本主義の特徴
      グローバル化の本質
      脱・グローバル化の可能性
      起業偏重の風潮への疑問
      「創造性」の捉え方の相違
      「日本型資本主義」の新バージョンを模索せよ
      保守するための改革を


    おわりに

  • 日本社会に蔓延する疲労感、引きこもりなどの要因は一種のダブルバインドが原因だと指摘している本。ものすごく納得させられる。

  • 若干カバーにスレ、小キズがあるものの、中身は良好です。線引き、書き込みなし。第1刷。アルコール消毒し、クリスタルパックで包み、丁寧に梱包し発送します。

  • なんか忘れてました。途中読みで。
    つーかさ。逆の意味で「日本人は〇〇だ」という前提を
    (そもそもそういう発想を抱いている人間たちのことです)
    異常なくらい狭い物の見方をしていますよねーという形も
    既に過去のものになっていると思います。

  • 東2法経図・6F開架:361.42A/Se11h//K

  • 結局、新自由主義批判、良き日本の保守に戻ろうと呼びかける本。
    日本の知識人の多くは演繹法で思考、論述する場合が多い。
    過去の学説(規範)の妥当性、問題点の論証には熱心だが、広く海外から事例を集めて現状を判断しようとしない。
    日本と同じような事例は海外にないのか、そこからどのような教訓が得られるのかといった帰納法の思考で考えると、きっと、別の結論に至ると思う。
    日本の閉塞感は、古い慣習を固守していることが原因だと私は思うのだが。

  • 2018.07.16読売朝刊紹介。
    日本社会は、他者の気持ちや社会的役割に応じて自己規定する「関係性重視型」であり、知識人が称揚する、西洋式の「主体性確立」「自己責任」によって矛盾葛藤が生じ、多くの人が疲労感や閉塞感にむしばまれている。

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著者プロフィール

九州大学大学院比較社会文化研究院・教授。慶應義塾大学・博士(法学)。リベラリズムの政治理論が専門。学校教育との関わりでは、人権教育や有権者教育などの公民教育に関心がある。ビジネス上の考慮を教育的考慮よりも優先する近年の風潮に懸念を抱いている。その観点から現在の英語偏重の教育改革に疑問を呈した著書『英語化は愚民化』(集英社新書、2015 年)は話題となり、教育関係者向けに講演することも多い。

「2022年 『学校と子ども、保護者をめぐる 多文化・多様性理解ハンドブック 第3版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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