帝国軍人 公文書、私文書、オーラルヒストリーからみる (角川新書)
- KADOKAWA (2020年7月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784040823348
作品紹介・あらすじ
大日本帝国、陸海軍秘話。
大和ミュージアム館長と『独ソ戦』著者が初公開!
戦後、将官・下士官は何を二人に語り残したのか……。
大日本帝国陸海軍の将官・下士官は戦後に何を語り残したのか?
戦後も陸軍はヤマタノオロチで、海軍は双頭の蛇の組織構造だったこと、
瀬島龍三が情報を握りつぶした話が漏れた経緯に、
松井岩根の『陣中日記』改竄を突き止めた舞台裏をはじめ、
陸海軍の秘話が明かされる。
そして、日本軍の文書改竄問題から、証言者なき時代にどう資料と向き合うかに至るまで、
直に証言を聞いてきた二人が語りつくす!!
■瀬島龍三が情報を握りつぶした話が漏れた経緯
■藤村義一の「誇張」、坂井三郎の「加筆」、朝枝繁春の「ほら」
■大井篤が漏らした「連合艦隊との戦いは終わった」
■『滄海よ眠れ』で暴露された、ミッドウェイで捕虜を茹で殺していた事実
■松井岩根の『陣中日記』改竄を突き止めた舞台裏
■大和と武蔵を「使いこなせなかった」ことに問題があった
■歴史に残るメイキング、バベル島虐殺事件 etc.
【目次】
まえがき
序 章 帝国軍人との出会い
第一章 作戦系と情報系――陸軍編1
第二章 陸軍はヤマタノオロチ――陸軍編2
第三章 連合艦隊と軍令部――海軍編1
第四章 海軍は双頭の蛇――海軍編2.
第五章 日本軍の文書改竄――史料篇1
終章 公文書、私文書、オーラルヒストリー ――史料編2
あとがき
ブックガイド
感想・レビュー・書評
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軍事史研究の第一人者による対談。研究の雰囲気が伝わってくる。
時代の雰囲気や先行研究を理解せずに資料を読むのは危険というのは同感。軍事史研究だけではなく、戦後史研究についても、同様の問題は既に生じているような気がする。 -
資料からは読み取れない口述から知る「オーラルヒストリー」の大切さ面白さがわかった。その時代の空気や雰囲気を知るにはやはりこうした口伝も必要なのだろう。一番の衝撃的な話は、ミッドウェイ海戦で利根の索敵機が遅れたのは故障もさることながら酷いシゴキで半ばボイコットされていたということだった。
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戦史家二人による対談。
戦史史料、文書、オーラルヒストリーについて、著者二人が日本軍について語る。 様々な事例をあげながら、旧日本軍の軍人達がどのような人たちであったのかを語っており、大変面白く読めた。 二人とも過去に軍人当事者に会う機会があり、資料や書き物だけではわからない雰囲気や性格、軍人気質に接することができた。 この先そういう経験を持つ人が少なくなり、史料を読むときに、文字に書かれたことだけを鵜呑みにすることを心配している。 また戦史についてはいろいろな本が出ているが、小説家では吉村昭と澤地久枝を高く評価している。 資料の付き合い方向き合い方が真剣なのだそうだ。 対談なので面白いエピソードが多く、知らなかった事実や見解の違い、俗説への批判、文人たちの考え方などいろいろと勉強になった。
ちなみに自分の家系では、祖父が軍人で輸送船に乗って何度も南方へ行っており、生還した運のいい人だったらしい。また母方の伯父は空母鳳翔の通信長だった。 伯父の紹介で父母が結婚し、自分がいる。 身内の人たちが戦争を生き延びてくれたから今の自分がある。 この本とは関係ない話だが、生きている時に話を聞いておきたかった。 -
東2法経図・6F開架:392.8A/To17t//K
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当事者たちが亡くなる現在だからこそ重要な議論。軍事研究の泰斗二人が語る資料、オーラルヒストリーなど調査の留意点。
今年読んだ本の中でベストワンかもしれない。二名の歴史研究家が、調査の過程で身につけたワザ、バイアスについて語る。資料そのものには記載されていないが、重要な視点を多く指摘している。
書籍だからといって100%は信用できないという。海軍は戦後もヒエラルキーが生き続け、通史と違う内容の記載は否定されたという。戦闘詳報など公文書も同様。言われてみれば当たり前だが軍人は国家公務員。自分たちの組織に都合の悪いことは書かない。
公文書、私文書とオーラルヒストリー。それぞれの長所がある。ほとんどの関係者が亡くなった今、お二人のように旧軍人との接点が異常なほど多かったことがありがたい。そして本書でその経験を後世に伝えようとする姿勢も素晴らしい。
澤地久枝、吉村昭の取材スタイルを絶賛しているところも本読みとして面白い。
今や戦争を知らない世代がさらに知らない世代に伝承していく時代。残された資料そのまま信用するわけにもいかないし、証言も記憶の変化、バイアスがかかっていることもある。そんな状況でどのように資料に向き合うか、本書は貴重な視点を与えてくれる。 -
対談形式でかなりマニアックな書。本当はとか、背景にはとか、現代にも往々にして存在する忖度がサラッと書いてある。故の信憑性を感じたり、歴史書には表っつらしか書かれていないちょっとした真実が垣間見れとても考えさせられました。
特に山本五十六が何故選ばれたのかについては成る程と驚嘆だった。
取材した時には、涙して聞いていたが原稿が上がってくるとそこまで書かれていないとか。人って…とか、寝て起きたら気持ちが変わる…とか、取材側も色々大変そうだ。
書籍でも版によっては書かれている事が変わっているものもあるそうで、著者のピックアップも関心度がまします。
取材と出版で数名の作家の名が上がっているが、吉村昭さんは読み手からしても感じていた取材に対する真摯さはこちらでも評価してが高く、やっぱりそうでしょと思いながら読んだ。 -
戦争ものは、本当なのか、嘘なのかよくわからないところがあったが、この本を読んで、一冊の本を信じるのではなく、いろんな本を読むことが大事だと気付かせてくれた。これから少しづつだが読んでいきたい。
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大木氏はアカデミック畑の人かと思っていたら
編集畑でもあったことを”まえがき”で知った。
読みやすい内容だが特別新鮮さは無いかと。