日独伊三国同盟 「根拠なき確信」と「無責任」の果てに (角川新書)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040823836

作品紹介・あらすじ

亡国の同盟は、不信と誤認の産物だった。
『独ソ戦』著者が対独関係から描く、大日本帝国衰亡の軌跡。

優秀な人びとを抱えながらも、なぜ日本は亡国の戦争に突入したのか?
亡国への分水嶺となった三国同盟は、そもそも不信と誤認の産物でしかなかった。

〇外国を崇拝し、その国の人間になってしまったかのような言動をなすもの。
〇国家が崩壊することなどないとたかをくくり、おのが立場の維持をはかるもの。
〇自らの構想の雄大さを誇るばかりで、足下を見ず、他者をまきこんで破滅していくもの。

これら、我々に似た人間が敗北必至の同盟締結を加速させたのだ。
利害得失を充分に計算することなく独と結び、米英と争うに至るまでを、対独関係を軸に分析すると、
日本の指導者の根底には「根拠なき確信」があり、それゆえの無責任な決定がみちびかれた様が浮き彫りとなる!!

「根拠のない確信」が災禍を拡大した。
■最初は冷淡だったドイツ       ■墨の色を濃くする大島
■走り出したバスに飛び乗った面々  ■海相吉田善吾の苦悩
■我を通し続けた松岡

※本書は2010年10月にPHP研究所より刊行された『亡国の本質 日本はなぜ敗戦必至の戦争に突入したのか?』を改題の上、この間の研究の進展を反映し、全面的に加筆・修正したものです。

【目次】

序に代えて――わたしに似たひとびと
第一章 ヒトラーに「愛された」日本大使
第二章 同盟のため奮闘せるも……
第三章 バスに乗ってしまった男たち
第四章 独ソに翻弄される松岡外交
第五章 亡国の戦争へ
あとがき
主要参考文献

感想・レビュー・書評

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  • 歴史の教科書では語りきれないことが満載されていた。

    政治の世界にも腹の探り合いはあっても案外とサッパリしていると思ったけど、いやいやねちっこくあり嫌なら嫌と言えない上下関係姻戚関係。

    大島浩、松岡洋右、この二人の行動が大きく影響したことがわかるが、この本ほどしっかり裏付けされた書き方をしているものは見ない。

    歴史には、日独伊三国軍事同盟とあり、それは「互いに利益がある事に対して協力関係を結びましょう」エイエイオーかと思っているでしょうが
    そうせざるを得ない伏線があったり、バーターであったり、たくさんの大人の事情がある。

    御前会議で昭和天皇のが敢えて口を開き読み上げた
    四方の海みなはらからと思ふ世に など波風のたちさわぐらむ
    明治天皇の御製が意味のわからないものはいなかったという。
    なら何故と思ってしまう。

    振り返れば少しのきっかけで結果が大きく変わることは多い。
    終盤を拝読するあたりからはいつも慈愛の念があった。

    腹の探り合いは日常かもしれないが、何かを信じたり例え痛みがあろうとも協力し支える、そんなお互い様の世の中にしていけたらと思う。

  • 読み終えてタイトルその通りだと感じた。「根拠なき確信」と「無責任」。学者としての大木毅氏の憤りがこの二言に凝縮されているとでもいえよう。

    新書なので簡潔かと思っていたが、とんでもない。映画のシーンを思わせるような描写があちこちに出てくる。特に大島浩と松岡洋右という2人の判断、行動が日本を大きく誤らせたことが克明に描かれている。かなりファナティックだったのだなあ。

    ただし、この2人にすべてを負わせるのだけでは学びは少ないかもしれない。もう少し科学的にみてみる、今でいう行動経済学的なアプローチから分析しても興味深い、というかバイアスが先行で国を導いたのは恐ろしいと感じる。我々も大なり小なりこうしたバイアスで判断していないだろうか?胸に手を当ててみた。

  • 日本が日独伊三国同盟を結び、太平洋戦争に向かう一連の流れをドイツに近い立場から解説している。
    松岡洋右は国際連盟を脱退する気はなかったがブラフとして使っている間に引っ込みがつかなくなったというのは(松岡はポーカーの名手)、また、ドイツ贔屓の大島浩の日独同盟案を独自の見解で進めたことが、この同盟に繋がったと思うとガバナンスが本当に効いてないなと感じた。当時の状況を今のロシアによるウクライナ侵攻に当てはめると酷似している点がいくつかあるなと思った(ドイツ→ロシア、チェコスロバキア→ウクライナ、イギリス→アメリカ、日本→中国に入れ替え)

  • 日独伊三国同盟 「根拠なき確信」と「無責任」の果てに (角川新書)。大木 毅先生の著書。「根拠なき確信」と「無責任」が破滅を呼ぶ。「根拠なき確信」と「無責任」が不幸な結末につながる。自分や誰かの「根拠なき確信」と「無責任」で本人だけが破滅したり不幸になったりするのは自己責任。でも自分や誰かの「根拠なき確信」と「無責任」でほかの人たちまで破滅したり不幸になったりするのは自己責任では済まされないし許されない。

  • まるでドキュメンタリーのような臨場感を感じるほど、外交官たちの交渉の一部始終がまとまっている。なんとなく「同盟」という言葉を聞くと協力関係といったポジティブな印象だったり、少なくとも利害関係が一致している関係性を想起させるが、日独伊三国同盟はお互いを利用しようとする姿勢が見え見えで、当初の自分がイメージしていたものとは全くかけ離れた実態があった。所詮国際政治や外交関係なんてそんなものなのかと。建前と本心の棲み分けは昔から変わらないのだなあと。

  •  特定の国への親近感が政策判断を誤らせることはあるだろうが、大島浩はその生い立ちも含めいささか度を越している。大島だけでなく、陸軍そして日英同盟廃止後の海軍にも親独派はかなりいたようだが。
     組織として対独接近に最も積極的だったのはやはり陸軍だが、海軍でも若手・中堅は突き上げ。また外務省でも、「外務省きっての枢軸男」白鳥敏夫など積極派はいた。更には戦争序盤の独の快進撃から「バスに乗り遅れるな」が民間でも流行語に。
     一方で著者は、英米仏を敵としかねない対独接近に慎重だったとの点において、「海軍左派トリオ」を肯定的に評価している。その後の吉田善吾海相も慎重だったが、もはや孤立していた。

  • 日独伊三国同盟の締結に至る過程を丁寧に叙述。
    日独伊、露英米のそれぞれの視点からの分析は、複雑怪奇な三国同盟の多角的・立体的理解に役立つ。

    読んでみてやっぱり思うのは、松岡洋右はやっぱりアカンなということ。

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著者プロフィール

現代史家。1961年東京生まれ。立教大学大学院博士後期課程単位取得退学。DAAD(ドイツ学術交流会)奨学生としてボン大学に留学。千葉大学その他の非常勤講師、防衛省防衛研究所講師、国立昭和館運営専門委員等を経て、著述業。『独ソ戦』(岩波新書)で新書大賞2020大賞を受賞。主な著書に『「砂漠の狐」ロンメル』『戦車将軍グデーリアン』『「太平洋の巨鷲」山本五十六』『日独伊三国同盟』(角川新書)、『ドイツ軍攻防史』(作品社)、訳書に『「砂漠の狐」回想録』『マンシュタイン元帥自伝』(以上、作品社)など多数。

「2023年 『歴史・戦史・現代史 実証主義に依拠して』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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