- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784040824642
作品紹介・あらすじ
戦乱の狂騒に抗す。
ウクライナ戦争、独ソ戦、太平洋戦争……。動乱の時代には俗説(フェイク)が跳梁跋扈する。
理性を保ち、史実と向き合う術を現代史家が問う!
軍事・戦争はファンタジーではない。
日本では報じられなかったウクライナ侵略戦争の「作戦」分析、『独ソ戦』で書ききれなかった挿話、教訓戦史への強い警鐘に歴史修正主義の否定、そして珠玉のブックガイドを収録した論考集。
俗説が蔓延していた戦史・軍事史の分野において、最新研究をもとに新書を著し、歴史修正主義に反証してきた著者が「史実」との向き合い方を問う。
戦争の時代に理性を保ち続けるために――。
■戦争を拒否、もしくは回避するためにも戦争を知らなければならない
■軍事は理屈で進むが、戦争は理屈では動かない
■軍事理論を恣意的に引いてきて、一見もっともらしい主張をなすことは、かえって事態の本質を誤認させる可能性が大きい
■歴史の興趣は、醒めた史料批判にもとづく事実、「つまらなさ」の向こう側にしかない
■歴史「に」学ぶには、歴史「を」学ばなければならない
■イデオロギーによる戦争指導は、妥協による和平締結の可能性を奪い、敵国国民の物理的な殲滅を求める絶滅戦争に行きつく傾向がある
■戦争、とりわけ総力戦は、体制の「負荷試験」である。われわれ――日本を含む自由主義諸国もまた、ウクライナを支援し続けられるかどうかという「負荷試験」に参加しているのである
【目次】
まえがき
第一章 「ウクライナ侵略戦争」考察
第二章 「独ソ戦」再考
第三章 軍事史研究の現状
第四章 歴史修正主義への反証
第五章 碩学との出会い
あとがき
初出一覧
感想・レビュー・書評
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本作中で書かれていますが、ロシアのウクライナ侵攻が独ソ戦を彷彿としていると感じていた読者の中の1人である私。
そして必然的に本作を拝読する流れになるのですが、読みながらずっと「へーぇ!ほうほう!」と頷いてしまう程興味深い内容ばかり。(公園に居ましたが周りに人が居なくて良かった)
ウクライナ侵攻について独ソ戦に準えて書かれているだけかと思いきや、大木さんの著書『独ソ戦』で書き切れなかった補足等や、大木さんが取捨選択して下さった文献も丁寧に紹介されており良い意味で裏切られました。
色んなメディア等に寄稿された記事やインタビューも一纏めにされているので有り難いです。
では印象深かった内容を。
何故こんなにも長期化しているのか。私自身、当初はロシアが圧倒的武力と作戦能力で短期決戦に持って行くのでは無いかと予想していたのですが、本書を読んで納得。
ウクライナ側はゼレンスキー政権からの解放を受け入れ、ここまで抵抗するとは思わなかったプーチンが楽観視してしまい政治が軍事的合理性にそっぽを向いてしまったと著者。
なるほど、今回の侵略も戦争ではなく「特別軍事作戦」と称していたのも頷けます。
更にウクライナ軍が「任務指揮」をしっかり勉強していて下士官に至るまで叩き込み、ロシア軍を圧倒したという驚愕の事実。
「軍事は理屈で進むが、戦争は理屈では動かない」
消耗戦まっしぐらになる訳です…。
今回のウクライナ侵攻も後に歴史家の方々に研究される対象となるのでしょうけれど、大木さんは本書で歴史修正主義にも警鐘を鳴らされております。
作中で例に挙げられている船戸さんのお言葉「小説は歴史の奴隷ではないが、歴史もまた小説の玩具ではない」まだまだ知識不足で勉強中の私には響きました。
『同志少女よ敵を撃て』を書かれた逢坂さんはこの辺りを良く分かってらっしゃるんだなと改めて感服した次第です。ちゃんとソ連側も虐待していたものなあ(ちゃんと、という表現は良くないですけれど)
しかしウクライナに対して「ナチ化」とのたまうプーチン自身が、ヒトラーと同じく収奪によって戦争を維持している事実に頭を抱えてしまいますが、台湾での緊張も高まっていますしいよいよ他人事では無くなって来ていますね。
『独ソ戦』が再度売れ出したのも皆さん危機を感じていらっしゃるからなのかも。
最後に私が衝撃を受けたトロツキーの言葉を書き置いて終わりにしたいと思います。
「諸君は、戦争には関心がないというかもしれない。だが、戦争のほうは諸君に関心をもっている」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
読み終えた。また機会を見て読み直したい。とくにウクライナ戦争がおわってから。
あと、歴史修正主義の部分は危機感を感じる。思い込みの激しい人間であっても、その趣味の世界だと付き合わないといけないことがあるのでよくわかる。 -
著者のワンテーマで語る本も好きだが、このような色々な所で、発表された記事を
1冊で読めるのはファンとしては嬉しい。特に、日本のW・WⅡ欧州戦史研究の未アップデート状態は、何か日本全体のガラパゴス化と類似しているようで考えさせられる。 -
新聞や雑誌・書籍他、webに掲載した大木毅のインタビュー記事や書評・解説・短文などを主題毎に分類し、取り纏めた書籍(2023/07/10発行、1012E)。