山椒大夫・高瀬舟・阿部一族 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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感想 : 34
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041002872

感想・レビュー・書評

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  • 安寿は神様になったなのだなあ
    しかし切なくって落ち込む

  • 山椒大夫・高瀬舟・阿部一族の3作のみ読み終えた。
    さすが森鴎外。圧巻の語彙力である。
    無駄が無く、私が過去に読んだ、近代文学作者の中で一番の優雅さが伺える。

    ただ、情景描写しかしておらず、心理描写がないという点が、自然主義文学を中心に読み進めてきた私にとっては、物足りなさを感じた。

    兎角、夏目漱石と並び称される、森鴎外とは一体どのような作家なのかを知るという目的で読み進めたため、それは十分に果たされた。
    また時を置いて、他作も読もうと思う。

  • 青空文庫にて、高瀬舟を読んだのだが、読み終わってもぞくぞくとしたままである。森鴎外はやはり綺麗な文を書く。丁寧な言葉を使う登場人物が魅力的に感じた。喜助の弟の死への描写が、生々しく考えただけで身体がゾッとした。思わずゾッとする作品なんてそうない。ここが鴎外の凄いところか。

  •  この作品の時代は、平安時代だそうです。(作中には書かれていません)
     僕らの時代(高校生頃まで)に、『舞姫』と共に現代国語の教材として使われていたそうなんです。もしかして、習ったかもしれません。でも、記憶がないのです。
     何しろ現代国語の授業が大嫌いで、授業中は窓の外を眺めていたからです。(笑) だから何で今更って言う感じなのです。
     この年になってこの作品を読んでいると、純文学と言うよりは歴史小説チックな感覚があります。
     初出は大正四年で、『高瀬舟』は大正五年ですから時代背景から考えると近代日本の成長期ではなかったのかな・・・なるほど、時代を置き換えて読んでみると、この小説は国にとって成長期ではあったけれど、国民にとっては物造りの大量生産を強いられたかの様なイメージを連想するのです。
     この作品が、何故学校の教材に選ばれたかについては、教育の思想的判断かもしれません。ネットで調べてみると、この作品の書評は数多くありますが、鴎外先生の伝えたかったものの真意は分かりません。
     もしかしたら、辛いだろうなと思う時代の風刺なのかもしれません。
    でも、その風刺が真意ならば検閲されていたでしょうね。
    この作品の鴎外先生自身の解説本がありますか?

  • 「舞姫」「雁」に続く森鴎外。
    歴史小説は苦手…。あと、ふり仮名多すぎ。
    山椒大夫はなぜ題名が「安寿と逗子王」ではなく「山椒大夫」なのか不明。

    「高瀬舟」には安楽死の問題が出てくる。(弟が死ぬシーンだけ妙にリアルに描かれていて忘れられない…。)この頃から安楽死がテーマの小説があったのかと思うとすごいけど、それよりもこの小説に出てくる「財産に対する人の欲」の問題の方が、興味をひいた。とても短いのに、大きなテーマを二つも盛り込んでいる小説。

  • 2013年82冊目

  • マダムMさんからのおススメ!
    装幀も素敵~!
    『じいさんばあさん』が良いです。

  • 大正元年から大正五年の間に発表された歴史小説9編を収めた本。
    「山椒大夫」「じいさんばあさん」「高瀬舟」など、もはや説明不足と言うべきくらいに無駄がなく、重要な登場人物の心理描写が少ない。だがむしろその表現が観察者にとって畏敬すべき何かを強く感じさせる。

  • 教科書に載っていた『舞姫』以来久しぶりの森鴎外作品。表紙がきれいで、見ていて飽きない。今回は以下の3作品を読みました。

    『山椒大夫』…正直、なんだかよくわからなかった。当時の人買いの風習だとか、奴隷として働くくらいなら入水しようという考え方?信仰の大切さ?姉弟愛?いろいろあるだろうけど、その時々の生き方を書いているのだろうか。読む人次第なのかな。
    『高瀬舟』…この中にある『附高瀬舟縁起』にも書いてあるけど、安楽死と、兄弟愛、財産に関する考えかたを描いている。特に、財産に関する考えかた(貰っている量が違うだけで、財産が残らないのなら変わりは無い。足りなくても、それで満足する心持)は勉強になった。あと、自分でも、兄弟に迷惑をかけるくらいなら死を選ぶことが出来るのだろうか。兄弟愛について考えさせられた。
    『阿部一族』…殉死についてを書いている。殉死については、明治天皇が逝去したときの乃木希典のイメージしかなかったが、武士の時代には一般的な風習だったのか。これについては授業で使えそう。「武士は上が認めたことをしてこそ意義がある。そうでないなら犬死だ」という考え方は、面白く感じた。そして、急に話が展開し、阿部一族の話になる。面白かったが、最期の部分で何を描きたかったのだろうか。考えていく必要があると感じた。

    今回はこの有名なこの3作品にしました。この人は歴史による倫理観の違いを読んでいくと面白いのかもしれない。意義として、昔の色々なエピソードを、読みやすく現代化したことに成果があるのかな。もっと勉強しなければ。

  • 「山椒大夫・高瀬舟・阿部一族」森 鷗外
    歴史文学。鉄色。

    文章が難しかったです。でも、ゆっくり読めばストーリーは分かるし、時代時代の倫理観が読みどころなのかな、という読了感でした。
    『阿部一族』で、次から次へと人が死にます。もちろん推理小説的な意味ではなくて、主君に殉ずる、家督に殉ずる、名誉に殉ずる。死を怖れず名を守ることをさも当たり前のように捉えて、描いている。でも、つまり鷗外がこれを主題に倫理観を捉えているということは、美意識として又は忌むべき旧態として、特筆すべき故事だということですよね。小説であるならなおさら。
    他『山椒大夫』の悲劇にしても、『じいさんばあさん』の夫婦愛にしても、近代には既に廃れ始めている封建時代の美徳というのが、その100年後の今でも、美徳の形(形骸)として残っているのが興味深いなあ、と思います。

    『阿部一族』のp156、殉死を前にして午睡をとる主人、各々物を思う母、よめ、弟。家人もひっそりとしているなか、微かに鳴る風鈴、手水鉢に伏せた柄杓といっぴきのやんまの風情。いやー、綺麗すぎる。。
    『寒山拾得』はよく分かりませんでした。残念。

    正直言って、現代作家でこういった風情のある作品を読みたいねえ。ただの回顧主義じゃなくて、今の日本に今の日本ながらに残っている、封建時代の情景というか、荒んでおらず軟体化もしていない日本人を読みたい。

    (3)

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著者プロフィール

森鷗外(1862~1922)
小説家、評論家、翻訳家、陸軍軍医。本名は森林太郎。明治中期から大正期にかけて活躍し、近代日本文学において、夏目漱石とともに双璧を成す。代表作は『舞姫』『雁』『阿部一族』など。『高瀬舟』は今も教科書で親しまれている後期の傑作で、そのテーマ性は現在に通じている。『最後の一句』『山椒大夫』も歴史に取材しながら、近代小説の相貌を持つ。

「2022年 『大活字本 高瀬舟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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