- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041003893
感想・レビュー・書評
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さとるの堂々として頼もしい性格に惹きつけられた。
★印象に残ったフレーズ
「私が蛍に見せたいものはほんの少しの矛盾もシミもない綺麗な傷跡だからだ。その上からつけた無数の掻き傷は、自分自身の弱さだ。」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
恋愛選書きっかけで。
久しぶりの島本理生さん。
文章は美しいし素敵なのだけど…麻由の心情が読んでいてすごく苦しかった。
麻由と蛍には幸せになってほしいと心から思った。
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これから先、きっとまた誰かがあなたを傷つけることだってある。世界が安全な場所だなんて誰にも約束できない。それでもあなたが、また日々を続けられるように。それは誰かが優しくしてくれるとか、世界が救ってくれるからじゃなくて、あなたが、あなた自身を支えることなの。
誰にも知られたくなかったし、相談できなかったのも事実で、だけど本当はずっと、誰にも理解されない可哀想な自分でいたかったんだと、思う
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私の大好きな作品
描写がほんとに美しい
そしてなにより二人の世界が儚くて、まさに世界の果てという言葉が似合う -
理解されない寂しさに浸って、そのくせ自分の言葉を伝えられないし伝えようとしない。そんな自分を自覚した。
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私の好きな島本理生の恋愛小説だった
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過去に恋人からのDVに傷つけられた麻由は、同じ相談室に通う蛍と出会い、やがて恋をする。
触れてほしいという恋情と、触れられたくないという拒絶。心と身体がそれぞれ別の生き物みたいに違う意志を持って動いている様子が、痛くて苦しくて、無意識に息を止めていた。
心にある古傷を隠して生きている人は世の中にたくさんいる。
ページをめくるごとに、少しずつ自己肯定をして傷の上に塗り重ねてきたものを一枚一枚剥がされていくような感覚になった。「だめな自分」に戻されてしまう、と心が怯える。前半部分の麻由の言動を客観視することは、傷を抱えて生きている人にはほとんど自傷行為のようなものだと思う。ひたすら自分の弱さと向き合わなければならない。だんだんと、自分と麻由の境界線が曖昧になっていく。
この本を読んで改めて感じたのは、どれだけ自分がボロボロで醜い姿になったとしても、自分を諦めないでいてくれるたったひとりが心強いかということ。どん底から引っ張り上げてくれたさとる君や、逃げても呆れず向き合ってくれた蛍のように。逆にそういう人がひとりもいなければ、人は簡単に死を選んでしまうのかもしれない。他者の中にいる「大切にされている自分」を知ることで、人は強くなるのだと思った。 -
島本理生さんの作品、久々に読んだ。
過去付き合っていた人のDVが原因で、男性恐怖症になりながらも、その病院で出会った人に惹かれていく。
傷を負いながらもどうしても惹かれてしまう心の動きに、自分は経験してるわけではないのに引き込まれた。
惹かれる相手の蛍さんは、魅力的なんだけど、元カノと友達として付き合いが続く人。
また次の人に行ってしまいそうな危うさを感じつつ、この2人がこの先穏やかに関係を築いていけることを願ってしまう。 -
島本さんの作品はこれで二冊目。やっぱり私は、この人の書く静かで流れていくような文章や、そこに生まれる時間が心地よいと感じた。
美しさだけではなく、文章の温度のようなものに対しても度々はっとさせられた。温かさの中にひやっとするものが混じり、逆に背筋が冷たくなる場面でも麻由の肉体の温度が伝わってきた。生きている、その実感がある。このように読者が感じられるような文章が書ける作家さんを、私は他に知らない。
恋愛ものなので急展開や伏線はないけれど、ただひたすらにこの人の書く物が好きだ。 -
前半、主人公の不安定さに自分も引きずられて、心苦しくなりながら読み進めていった。最後、しっかりした麻由は綺麗だなと思った。さっぱりした紗衣子さんが好き。