- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041008263
感想・レビュー・書評
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ドイツとイギリスの戦争が激化する中、大日本商船が誇る豪華客船『朱鷺丸』がサンフランシスコから横浜に向け出港した。出航直後からの嵐をようやく抜け、ハワイ寄港を前に浮かれたムードのデッキで、日本人技術者の『内海』は一人クロスワードパズルを楽しんでいた。
が、彼は日本陸運内部に設立された秘密諜報機関、通称『D機関』のメンバーであり、英国のスパイ『教授(ザ・プロフ)』が顔を変え日本に入国するのを阻止するのが、今回の任務だったのである。
その任務がほぼ達成されたとき、予期せぬ事態が起こり、ターゲットが何者かに毒殺されてしまう。
魔王のごとき結城中佐を欺いた謎。
内海は、任務の枠を超えて、何としてもその謎を解き明かすつもりだった。そのために、たとえどんな犠牲を払うことになったとしても…。「暗号名ケルベロス」
ジョーカーゲームシリーズ第3弾。
より心理戦の色合いが濃かった今回。
相手に気取られることなく、無意識化に働き掛け意のままの行動をとらせる。そしてそれは相手に限ったことではない。どのような状況におかれても任務に必要な情報が混乱しない様に、無意識化のレベルに刷り込む。恐ろしい人達だ。だがそんな中にチラリと垣間見える人間味が良い。
そしてさらに、その上を行く結城中佐。自身の過去さえも罠に使う。しかも二十年も前に予見し仕掛けた罠だ。
彼の過去は、未だ謎に包まれている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
読みたい!と言って、お友達借りたのに既読だったwww
でも、せっかくなので再読した。やっぱりよかった♪ -
相変わらず面白い。
ここまで面白いと。ネタが尽きるのではないかと心配になる。
「誤算」「追跡」が面白かった。
「失楽園」が一番ガッカリだったな。
「暗号名ケルベロス」前後篇の割にアッサリした結末。
トリックというかオチはちょっと消化不良気味。 -
結城あってのD機関。騙し合いのスパイ活動。でも、鋭い観察力や臨機応変な態度に引き込まれてしまう。
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前作は、任務の失敗があったりスパイの死があったりと、スパイという仕事の非情な部分がクローズアップされたが、今回は頭を使って考えに考える、本来のスパイものに戻った。
ただし、前作に任務の失敗という話を入れたおかげで、今作はどっちに転ぶかわからないという、落としどころの幅が広がった。
のっけから主人公が記憶喪失で、読者は「多分この人D機関の人のはずだけど…」と思いながら、話がどう流れていくのかが読めない「誤算」も面白かったが、結城中佐の正体に迫る「追跡」が面白かったなあ。
絶対にそんな単純な結末じゃないと思いながら読んでいたのに、そんな予想を軽く超える結城中佐の仕掛け。
結城中佐の辞書に「誤算」という言葉はないのかね。
結城中佐の正体の不明さはかくも盤石なのである。
そして、この世に絶対ということはないとD機関の人間はみな肝に銘じているけれど、結城中佐の存在感は絶対なのね。
さて、D機関のDの意味は?
「魔王」と言われる所以は?
次作で明かされるのでしょうか? -
大日本帝国陸軍内に創設されたスパイ養成組織“D機関”の暗躍を描く「ジョーカー・ゲーム」シリーズ第3弾。異能の精鋭スパイたちと、彼らを統べる元締めである結城中佐を主人公としたクールなスパイ物の、今作は短編集となっております。全5篇は、結城中佐の生い立ちに迫ろうとする英国タイムズ紙極東特派員の物語や、ハワイ沖の豪華客船を舞台にした中編など。相変わらず超人的な駆け引きや頭脳戦が繰り広げられていてハラハラスイスイ楽しめるものの、そろそろ一本調子に飽きてきた感じが…。
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D機関安定のかっこよさ。そんな人間いないだろと思いつつ3作目までくるとこいつらそうだよ、すげーんだよ、となぜか誇らしげになる。最後の話は意外とほっこり。今までの中では異質な感じがした。
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人並み外れた恐るべき深謀遠慮。あらゆるケースを想定した二段構え、三段構え。最悪を想定した非情な決断。緻密な計算に基づく陥穽を張り巡らし、常に合理に従い冷静沈着に行動する。徹頭徹尾クールな理想の仕事師ぶりにはいつもながら魅せられる。何度も舌を巻かせられた。そんな彼らだが血も情も熱い。人間的一面が、ちょっとした場面でほんの一刹那垣間見える。今回も幾度となくじんと胸を震わせられた。デーモンでもデンジャラスでもダークでもなくデューク。ついにキター。ん?であったが、いずれの短編も鮮度は高く、相変わらず面白い。今後もまだまだ続きそうだ。であればこの程度の嬲りは許すといった感じか。
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「ジョーカー・ゲーム」の続々編。
そう言えば去年の今頃は急病で入院してて、前作は病室のベッドの上で読んだよなって思い出した。このシリーズ、なかなか切れ味鋭く面白いよねぇ。
本作も、“D機関”の彼らのような能力の持ち主がそんなにいると思えないのが何なのだけど、作中の相手を惑わせつつ、読んでいるこちらも眩ませる、短いお話の中で二転三転のストーリー展開。よく考えているよな~って、グイグイ惹き込まれた。
最後に置かれたシリーズ初の中篇は、ペーソス溢れたラストで、いつものテイストとはまた違った余韻あり。