ジェノサイド 下 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041011270

感想・レビュー・書評

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  • 上巻に引き続きスピード感がある展開でドキドキしながら読み進めた。
    アフリカでは人間の残虐さが恐ろしく描かれていて、恐らくこの描写の数々は現実に起こっていることなんだと怖気が走った。
    一方日本では警察から隠れて、タイムリミットが近付いて焦る中での新薬開発。
    人助けの為に一生懸命な二人を応援しまくった。
    アメリカでは権力者に隠れて真相を探るべく動いている人がいる。
    段々と明かされる協力者の正体や、過激になっていく戦争に、下巻もあっという間に読み終わった。

    人間性について、とても率直に描かれている作品だった。
    そしてすごい知識量!
    新薬開発に関する専門用語は半ば読み流していたけど、格好いいなと思った。
    病気の子を持つ親が薬に希望を持つところは涙が出た。

    残酷な描写も多かったけれど、とてもおもろしかった。

  • 上巻を読んでから早く続きが読みたくて。映画のようなスケールで緊張感も半端ない。研人の父からの最後の手紙には感動。非常に面白かった。

  • 「蒙を啓く」

    やはり面白かったし、考えさせられる物語だった。

    高野先生の思想的な偏向を指弾する向きもあったが、それほど気にならなかったのは、自分がやや左寄りだからなのかも知れない。

    人は距離が離れると人を殺す心理的な負担が減る。密林でイエーガーらが殺す少年兵は名をオネカといった。そして彼が兵士となるむごたらしい経緯が描かれている。こうすることでオネカの死が読者にとってより残酷なものとなる。
    対して仲間のミックはどうか。時折歪んだ倫理観を見せるミックが射殺された際、どこか溜飲の下がる思いが少しでもなかったろうか。ミックの素性が詳しく描かれなかったのは、意図的ではなかったかと個人的には思うのだ。

    この作品が優れているのはそうした問題意識を読者に抱かせる点だと思う。

    最後には肺胞上皮細胞硬化症の薬が完成し、ジャスティンと小林舞花は救われた。しかし大団円とはいかない不穏さも感じた。人類の滅亡が少し先延ばしになっただけなのかも知れないと。
    エマもアキリも子供らしいあどけなさはあるが、同時に残忍さも併せ持っている。イエーガーがネメシス作戦に加わるように候補者を次々と消したのも彼らだった。

    わずかな希望があるとすれば、研人や正勲のような、他人のために、見返りもないのに危険な橋を渡った人たちの存在だろう。
    ハイズマンはそういう人々を「進化した人類」と表現した。

    人類の善行を引き出すのは、パーンズが感じたような「視線」なのかも知れない。
    それは高度な知性を持つ新人類や、子供、ご先祖、あるいは神の視線だ。
    おそらくバーンズと我々は地続きで存在している。我々の行いが「進化」に資するか否か、その視線は厳しく問うているのだろう。

    少し前に「サピエンス全史」が話題になった時、NHKで特集が組まれたのを少しだけ観た記憶がある。それによると、ホモサピエンスの中に、ネアンデルタール人の遺伝子も含まれているらしい。
    それを観て、種の違いを越えたロマンスみたいなものを想像したものだ。
    願わくば、人類の進化がゆるやかに溶け合うようなものであると良いなと思った。

  • 【感想】
    感染症のはずが、新人類の出現により、いきなりSFチックになったところは「あれ?」と思ったが、
    ばらまかれた伏線は見事に回収されていったな、と感じた。
    普通は決して交わることのない、日本の普通の大学生と軍人というマッチングも、何とか無事着地していた。笑

    今の人類とチンパンジーの差が、今の人類と新人類なのかと思うとと些か怖い気もしたが・・・
    また、普通の薬学部の学生が人類を救う新薬を創り出す!という設定には無理を感じつつ、
    物語が綺麗に収束していったのは何か安心しました。

    何はともあれ、面白い作品だったと思う。


    【あらすじ】
    研人に託された研究には、想像を絶する遠大な狙いが秘められていた。
    一方、戦地からの脱出に転じたイエーガーを待ち受けていたのは、人間という生き物が作り出した、この世の地獄だった。
    人類の命運を賭けた二人の戦いは、度重なる絶対絶命の危機を乗り越えて、いよいよクライマックスへ―
    日本推理作家協会賞、山田風太郎賞、そして各種ランキングの首位に輝いた、現代エンタテインメント小説の最高峰。

  • フィクションではあるけれどこの先起こる可能性は0ではないと思った。
    人間の社会の仕組みってこれでいいのか?と考えさせられた。

    ■権力者
    権力者が横暴で利己的になるのは、もともとそのような資質の人間がなるからなのか、善良な一市民でも権力を持つと変わってしまうのか。
    国民や人類のことを本気で考えてくれる人が上に立つことはあり得ないのか。
    今の日本の政治家を見ると全く明るい未来を感じられない。
    アキリが見たらどうするんだろう?

    バーンズも副大統領のように自分も殺されるのではと不安になったり、社会のインフラを乗っ取られて多くの国民が人質に取られていてもアキリを殺すことをやめなかったり…
    ルーベンスが思ったように、アキリが人類を滅ぼすように願う気持ちも少しわかる

    ■兵器
    副大統領がミサイルをくらったように、兵器を作る・使うからには自分に降りかかっても自業自得だ
    安全な場所で見たくないものは見ずに戦争を起こす権力者は絶対に許されない

    科学者や研究者も大きな力を生み出すときにはそれによって何が起こるのか考える必要と責任がある
    興味や探求心だけではいけない

    ■創薬
    世の中には色々な形で人の命を救っている人達がいる。
    治療法の無い病気に挑み、新たな治療薬を生み出すことは研究者にとっては一番のやりがいだと思う。
    そういった人達の日々の努力が医療を進歩させていると思うと本当に頭の下がる思いになる。
    大きく見ればウイルスとの生存競争に知恵で勝ったということ。
    人間同士で殺し合うなんて、そんな人達に対する侮辱でしかないよなぁ


    スケールの大きな話で圧倒させられた。
    自分が生きている内に起こるのか分からないが、フィクションだと言いきれないところが怖くも感じた。

  • 下巻も上巻の興奮をそのままに一気読み。
    とても面白かったです。

    誰が敵で誰が味方なのか最後までよく分からない設定な上に、
    下巻で明らかにされる新たな事実に驚きの連続。。
    新しい生命体や架空の病気などのSF的な話と現実を
    著者が最適なバランスでミックスして料理してくれています。
    ですので、全然、SF的な臭いがしません。

    もちろん、突っ込みどころが全くない訳ではありません。
    けれど、その突っ込みを跳ねのけるほどの面白さと壮大なスケール、
    見事なミステリーの結末…。
    今からでも読み直したいくらいです。

    著者はこの本を通じて何が伝えたかったんでしょうか。
    ・コンゴでのジェノサイド(大量殺人)
    ・アメリカの一方的な正義の押し付け
    ・通信の傍受
    ・希少疾患への製薬会社の対処法
    感じることは人それぞれでしょうが、
    こんなに面白い話を通じて、世界のリアルを認識させてくれるなんて。。

    最後の解説を読んで、著者がこの本を書くために
    200冊くらいの本を参考にしたと書かれていて、
    まさに自分の好きなタイプの小説だ…と妙に納得してしまいました。
    さらに、この本の着想を得たのが立花隆さんの本(文明の逆説)だとは…。
    立花隆さんの本も読んでみたくなりました。。

  • ついに読み終わってしまった…。
    衝撃の大作でした。
    殿堂入りです!

    【あらすじ】
    アフリカのコンゴで進化した超人種が誕生し、人類滅亡を恐れたことから、アメリカ主導での超人種抹殺計画(ネメシス計画)が企てられる。しかしネメシス計画の表向きは、人類滅亡の可能性を秘めたウイルスとその感染者、見たこともない生物の抹殺であった。その実行部隊の隊長が主人公のジョナサンイエーガー。しかしジョナサンは超人種と対峙した後に、本来の計画を知らされ困惑する。さらに息子のジョナサンが不治の病を患っていたのだが、その特効薬を日本人の古賀健人が作製させており、超人種は自分をネメシス計画から救出すれば息子は助かると仄めかし、イエーガーは超人種をアメリカの魔の手から救出するため超人種側に寝返る。一方、日本人の薬学部大学院生の古賀健人は父が残した研究室とその運営を極秘で引き継ぎ、難病の薬を製作することに。健人もまたCIA、FBI、警視庁に追われる身となり、逃げながら難病の薬を作ることになる。
    イエーガーと健人、超人種を介して交わることのない二人の運命が徐々に近づいていくうちに伏線が次々と回収されていくサスペンスミステリー。

    【感想】
    健人は薬学の研究生であることから、様々な実験器具や専門用語が使われていた。自分も理系の研究室に所属していたので、懐かしい響きの理系のワードでワクワクした。徐々に難病の薬の完成に近づいていく様が読んでいて、心躍るものがあった。
    イエーガー側はスピーディーな戦闘シーンにドキドキしながらも、途中コンゴの武装組織の大虐殺の話は酷すぎて浮き沈みの激しい内容だった。
    そして何よりも超人種対アメリカの緊張感も凄まじく、スケールがデカ過ぎる話に、「これ本当に日本人が書いた作品なの?」と疑問に思ってしまった笑
    よく感想でハリウッド映画みたい!ってあったけど、本当にそうでした。これだけ楽しませてもらった高野和明さんの文才に敬意と感謝です!

  • 海外ドラマのような壮大な舞台で展開される物語、ミステリー要素もあるがエンターテイメント作品。

    まったく関係のなさそうな主人公二人が、徐々に関連性がみえてくるところがワクワクしてくる。最後の怒涛の展開、ついにゴールするかっという達成感が素晴らしく、読後感は最高でした。

    ラストの主人公の一人のセリフが大好き。

  • 「そうきたか!」というのか読み終わった(正確には読みながら)感想。
    非常に緻密な取材を重ねて練り上げた作品であることを実感。ブクログを通じて素晴らしい一作に出会えたことを感謝します。

  • 再読!

    大好きなお話です。
    他の方の感想にあるように映画観てるみたいな気になります。
    ハラハラドキドキ...

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著者プロフィール

1964年生まれ。2001年に『13階段』で第47回江戸川乱歩賞を受賞し作家デビュー。著書に『幽霊人命救助隊』、『夢のカルテ』(阪上仁志との共著)など。2011年、『ジェノサイド』で第2回山田風太郎賞を受賞。自著のドラマ化『6時間後に君は死ぬ』では脚本・監督も務めた。

「2012年 『グレイヴディッガー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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